君は雨に降られながら行くのだろう

 

[994]

久方ひさかたの 雨零あめのふらくに 足引あしひきの 宇山坂うやまのさかを 公将往きみはゆくらむ

 

雨よ、降らないでくれ

 

 

それでも降るならば…

 

[995]

為公きみがため 雨勿零あめはなふりそ 久方ひさかたの 雨零尓あめのふらくに 足引あしひきの 宇山乎通うやまをかよふ 為公きみがため 甚勿零いたくなふりそ 離野はなりのの 屋戸匿有やどにこもれる 為吾わがために 雨勿零あめはなふりそ 殊零者ことふらば 公之布礼者きみにしふれば 吾与布礼われさへにふれ

※ふれば:降れば、触れば

 

雨は忘れさせてくれない

 

君のことを…

 

[996]

勿忘跡なわすれと 雨将零あめはふるらむ 隠居こもりゐる 此朝夕このあさよひに 継将零つぎてふるらむ