なんとなく月1回の更新をノルマにしているこのBLOG。あれこれ雑事に追われているうちに大晦日になってしまった。数時間後には「あけ・おめ」のご挨拶。書かないまま抛っておいたネタもあったりして、小学生が徒競走をしてる、そんな感覚に追われてます。
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登戸。地名の由来はここから先、南への道が多摩丘陵への登り口にあたっていたことによるらしい。確かに隣接する向ヶ丘遊園駅の背後には急峻の丘が控え、ここを走る小田急線は生田、読売ランド前、百合ヶ丘と丘陵地帯の谷間を縫うように走っている。
その登戸の駅から近い多摩川にあるのが二ヵ領用水のふたつめの取水堰、宿河原堰。堰にためられた水が写真右に伸びる水路から取り込まれて用水路を流れてゆく。先に紹介した上河原堰から3㎞程下流にある二つ目の取水堰で、この2本の用水路は南武線久地駅近くで合流し、さらに久地円筒分水というところで、近隣の6つの村落へその面積に応じて比例分割されて流れてゆく。
この宿河原取水堰がコンクリート製の堰として最初に改築されたのは1949年だったが、1974年の台風16号によって生じた狛江側の氾濫などがあって、1999年に増水時に水位を調整できる現在のものにつくりかえられたそうである。
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ちなみに、この河原はかって映画の舞台になっている。
「無能の人」(1991年)。つげ義春の漫画を映画化したもので、竹中直人の初監督・主演作品である。河原で石を売る男の話で、主人公が粗末な掘っ立て小屋を作って川で拾った石を並べて売っていたのがちょうどこの辺り。
背景にこの堰(改築前)や小田急線が映り込むカットが数か所見て取れる。30年余の時を経て、風景はずいぶん変わった。大小の石の河原だったところが今は、子供たちが野球に興じる野球場になり、竹中直人演ずる助川助三の小屋があったあたりでは近隣の人であろうか、リモコンのヨットを浮かべてレースに興じている。
映画は1991年、つまり平成3年だが、そこここに昭和の風景がちりばめられているのは、原作のもつ時代背景を最大限再現しようと意図したためだと思われるが、昭和の空気を精一杯吸って育った私にとって、この河原に限らず主人公たちが暮らす団地(多摩川住宅)、新宿や代々木、山梨の山の中、映画の中のどの風景も懐かしさを感じさせてくれる。作品の評価がどうであったか知らぬが、滲み出る生活感に好感。風吹ジュン、山口美也子が好演。