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絵本『ぐりとぐら』大人気シリーズの原点!食の幸福を描く不朽の名作

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日本の絵本界屈指の名作、『ぐりとぐら』。

世界を代表するねずみはミッキーマウスかもしれませんが、日本を代表するねずみはぐりとぐらでしょう~。

みんなの人気者、ぐりとぐらが、初めて登場した絵本で1番最初に作ったのが、ふんわりふわふわ魅惑のかすてらです。

美味しいかすてらを作って皆で分けて食べるのは、なんて楽しい……!

食をテーマにした『ぐりとぐら』、実は優れた食育絵本なんですよね。

更には、発想力やコミュニケーション力の大切さまで学べるんです。

こんなに可愛くて美味しそうなお話で、学びまで見出せるなんて、さすがは人気トップクラスの絵本。

さ、一緒にぐりとぐらのかすてらをご馳走になってはみませんか?

 

 

 

簡単なあらすじ

仲良し野ねずみ、ぐりとぐら。

お料理すること、食べることが大好きな2匹が、森でどんぐりや栗を拾っていたら、大きな大きなたまごを発見!

大喜びでたまごを料理しようとしますが、あまりにも大き過ぎて運べません。

2匹は互いに知恵を絞り、その場でかすてらを焼こうと思いつきます。

さあ、ぐりとぐらの楽しいクッキングの時間のはじまりはじまり~!

 

絵本の紹介

最初の4ページでつかみは上々!

最初の4ページを使った導入部、これが絵本の世界へ読者を引き込むうまい作りになっていて、私がこの絵本で特に好きな部分です。

まずは初めに2ページ使って、ぐりとぐらの紹介。

文章で説明するのではなく、2匹が自作の歌を歌うんですね。

 

ぼくらの なまえは ぐりと ぐら

このよで いちばん すきなのは

おりょうりすること たべること

ぐり ぐら ぐり ぐら

(引用元:福音館書店 中川李枝子(文)・大村百合子(絵)『ぐりとぐら』1963年出版)

 

この歌は、ただの登場人物紹介の役割だけでなく、食を巡る絵本だよというメッセージ。

更には、2匹がこんな可愛らしい歌を声を揃えて歌うくらい仲が良くて、朗らかな性格という人物像を示す役割も兼ねています。

歌というエンターテイメント性の高い要素を最初に持ってくる事で、注意力散漫になりがちな子供の興味を絵本へ一気に引き付ける効果もありますね。

 

そして、次の2ページを使ったどんぐり拾いの場面で、2匹が語るセリフがこれ。

 

「どんぐりを かご いっぱい ひろったら、おさとうを たっぷり いれて、にようね」

「くりを かご いっぱい ひろったら、やわらかく ゆでて、くりーむに しようね」

(引用元:福音館書店 中川李枝子(文)・大村百合子(絵)『ぐりとぐら』1963年出版)

 

甘く煮たどんぐり、栗のクリーム……なにそれ、絶対美味しそう!

いや、栗のクリーム=マロンクリームですから、今は結構ポピュラーかもしれませんが、出版当時は珍しい存在。

今だって小さな子供にとっては、なかなか口にできない品ですよ。

この例えようもなく美味しそうで、簡単には手の届かないセレクトが絶妙~。

 

2匹が本当に料理が好きな事が伝わる上に、これから何か美味しいものが出てくるのかも……という予感をひしひし感じさせるセリフではないですか?

思いっきり大人の主婦目線で恐縮ですが、料理が好きでなければ、わざわざ栗を拾って茹ででマロンクリームにしようなんて、思いませんしね~~。

私は子供の頃、この栗のクリームも、甘く煮たどんぐりも、一体どんな味なのか、もう食べてみたくて仕方なくて……。

子供が皆、かつての私のような食いしん坊ばかりではないでしょうが、食べる事が好きな子供は、このセリフで更に絵本へ興味を惹きつけられるでしょう。

 

もし、この絵本をコース料理に例えるならば、かすてらがメイン料理、こちらのセリフは食欲増進の役割を果たすオードブル。

序盤の4ページで、まず絵本の世界観を子供へ明確に差し示し、次には何か美味しいものが出てくるかも、とかすてらへの期待が否が応でも高めていく……。

かすてら作りへと入る前段階としては、実にイイ仕事ぶりをしている導入の仕方ですね。

 

ぐりとぐらのコミュニケーション力と発想力

大きなたまごを見つけた2匹、早速何を作るか、ぐりとぐらはアイデアを出しあって話し合うんですよね。

目玉焼きにしようかな、卵焼きにしようかな……話し合いの末、かすてらに決定!

大きなたまごの運び方、たまごの割り方についても、やっぱり2匹は話し合って決めていきます。

 

この2匹のやり取りから見て取れるのが、高いコミュニケーション力と発想力。

まず、常に欠かさないコミュニケーション。

話し合いは大事ですよねー。

お互いに忌憚ない意見を交換する事で、よりよいアイデアが出てくるコミュニケーションの重要性をぐりとぐらは体現してくれます。

 

更に、面白いのは、たまごを料理できる場所へ運ぶのではなく、たまごのある場所に料理道具を運んでくる、という逆転の発想。

これ、コロンブスの卵的な発想で、なかなか思いつかないですよ!

問題発生に対して、元々の考えへ固執せず、臨機応変に対応を変えていく思考の柔軟性、それに伴う発想力。

ぐりとぐらは自然と身につけているんです。

 

密なコミュニケーションでアイデアを次々と出しあい、発想力を高めていく2匹の姿に、読んでいる子供も学べるものがあるかもしれませんね。

ラストのページ、たまごの殻から作った車が登場しますが、これを作るのにも、ぐりとぐらがお互いにアイデアを出して話し合って作ったのだろうと思うと、ユニークなアイデアに思わずクスリとします。

 

 

かすてらについて語ろう!

ぐりとぐらが焼く、黄色くて大きくてふわふわのかすてらは、子供の永遠の憧れ!

スイーツが出てくる絵本は数多くありますが、ぐりとぐらのかすてらは、その中でもトップクラスに人気のある品ではないでしょうか。

鍋の蓋を開けた時、鮮やかな黄色のかすてらがこんもり盛り上がった場面は、大人でも思わず心の中で「わあっ!」と歓喜の声を上げたくなります。

ほかほかの湯気、甘く美味しそうな香りまでもが、ページから立ち昇ってきそう〜。

卵をたっぷり使ったかすてら作りの過程も見ていてワクワクしますが、蓋をして焼いて待つ時間でお預けを喰らった分、森のみんなも絵本を読んでいる子供達も、出来上がった瞬間の喜びはひとしおです。

 

 

 

 

この絵本を読むと、中川李枝子さんのかすてらという選択はベストだなあ、と感心しますよ。

流行りものでもなく、食器や調味料などのオプションを必要とせず、季節限定でもないお菓子……それがかすてら。

なにしろ、かすてらは300年以上の歴史がある上に、日本人で知らない者はほとんどいないであろうメジャーなお菓子。

手で持ってそのまま食べられるし、森の皆と一緒にその場でちぎって分け合えます。

春夏秋冬問わず、大人からも子供からも愛されているおやつ。

更に、ぐりとぐらが森で作れるくらい、材料自体はシンプルな定番お菓子ではあるけれども、ちょっと高級感があるのもミソですね。

今でもかすてらは進物として利用される事も多く、普段のおやつと高級なお菓子の間にある立ち位置。

絵本を読む小さな子供にとって、ちょっぴり憧れのお菓子としては、丁度良いでしょう?

 

付け加えるならば、『ぐりとぐら』の最初の発表当時である1963年は、現在ほど洋菓子が一般的に普及していません。

もちろん、当時もケーキ屋は存在していましたが、今ほどパティスリーが百花繚乱な状態ではなく、気軽に日常のおやつに食べるようなものではない、という時代の違いがある訳です。

その時代の子供にとって、ケーキにも似たふわふわのかすてらは、今の子供達が感じる以上にハイクラスなお菓子だったでしょうね。

その、ちょっと特別なお菓子、目を奪うほど鮮やかな黄色のかすてらをぐりとぐらが森の中で作る……これほど、ワクワクして、美味しそうな話はありませんよ!

 

もし、ぐりとぐらが作るお菓子がかすてらでなかったら、この絵本はここまで人気のあるロングセラーになり得たでしょうかねえ?

絵の中で、子供の好きな3原色(赤・青・黄色)をぐら=赤、ぐり=青、かすてら=黄色で押えてあるんですよ……もし、かすてら以外だったら、色のバランスも変わっていたかもしれない、と思うと、本当に存在が大きい!

かすてら以上に、これらの条件を満たしたお菓子って、何かあるでしょうか??

 

かすてらは、この絵本の人気を支える重要なピース。

まあ、これらは私の想像でしかありませんから、中川李枝子さんがどこまで考えていらしたかはわかりませんが、今も昔も子供達を惹きつけるかすてらを選んで大正解、だったのは間違いないと思ってます。

 

 

 

 

食べる事は生きる事

『ぐりとぐら』は食育の絵本です。

この絵本の対象年齢は3歳からですが、3歳前後の子供は、何の材料から何の料理ができていくのか、把握ができていないお年頃。

自分達が口にしているものが何からできているか、そもそもそれを誰がどうやって作っているのか……。

まだまだ理解はあやふやで、実際質問してみると、頓珍漢な答えが返ってくるのも珍しくありません。

そんな食に対する理解も未だ浅い子供達へ、理屈で説明するのではなく、絵本の物語を通して、「食」の大切さを楽しみながら感じ取ってもらえるのが『ぐりとぐら』なんですよ。

 

どんな料理も、誰かが道具と材料を揃えて、手間をかけて、一生懸命作っている事。

自分で料理を作る楽しさ。

誰かに喜んで食べてもらえる喜び。

美味しい料理を皆で囲み、共に分けあって仲良く食べる感謝と幸福。

この絵本では、たったひとつのかすてらに、これらが全て詰まっています。

 

食べる事は生きる事。

人間にとって、食事はただ生きる為だけの「作業」ではありません。

食事を共にするというのは、人間同士の非常に重要なコミュニケーション。

食を楽しむというのは人生を楽しむも同義、幸福な食事は幸福な生そのものです。

子供にはまだ抽象的な話は理解できないでしょうが、ぐりとぐらのかすてら作りからメッセージを受け取り続ければ、きっといつかは気づく時がくるかもしれません。

森の仲間達が共にかすてらを囲む情景からは、食を通した幸福を感じ取る事ができるはず。

ね、これもまた、素晴らしい食育だとは思いませんか?

 

 

 

 

余談ですが、同作者の童話「いやいやえん」に出てくるオオカミやこぐまのこぐが、チラリとカメオ出演するのもお楽しみです。

すぐ上の画像にて、かすてらを一緒に楽しむ森の仲間達……さあ、どこにオオカミとこぐまのこぐがいるか、探してみて下さいねー。

 

 

我が家の読み聞かせ

我が家の息子達も、ぐりとぐらが大好き!

どっちがぐりで、どっちがぐらなのか、最初は論争していましたが、表紙タイトルの文字を見て、決着がつきました。

はい、青い方がぐり、赤い方がぐらですよー!

 

冒頭のぐりとぐらの歌は、いつも私は適当なメロディーをつけて歌っています。

7歳長男は最近ちょっと恥ずかしがるようになってしまいましたが、5歳次男は時々一緒に合唱。

この歌を歌うと、これから『ぐりとぐら』が始まるんだ、と気分が盛り上がりますね。

アニメのオープニングソングみたいなものかも。

 

読み始めれば、ぐりとぐらがひろった卵の正体を推理ごっこ。

卵の正体には一切触れられていませんから(そもそも問答無用で調理)、本当は何の卵なのか、どうしてあの場所に転がっていたのか……謎のままですものね。

ダチョウの卵かな、いや恐竜の卵かな、と子供と一緒に想像するのも楽しいです。

 

かすてらを一緒にもぐもぐ食べるフリをするのもお約束、最後に卵の殻を車にして走る場面では運転手になる真似をするのも、これまたやっぱりお約束。

気付けば、『ぐりとぐら』は子供がついつい真似したくなる要素が沢山ありますね。

息子達2人とも、ぐりとぐらみたいに、料理と食べる事の両方を好きな大人になってくれたら、母としてはとっても嬉しいんですけど、さてどうなるでしょうか?

 

ちなみに、7歳&5歳の彼らにとって、料理の手伝いは「自分でやってみたいお手伝いNo.1」ですから、ぐりとぐらが手際よく料理をしていく姿を見るのが、とっても楽しいみたい。

この絵本の読み聞かせでは、「卵のわり方、ぐりとぐらを読んでマスターしたから、今度やってみる!」と大興奮ですよ。

いや、普通の卵に石をぶつけて割るのは勘弁してもらっていいですか……??

一応普通の卵の割り方は別の機会に教えまして、ぐりとぐら風の割り方は巨大卵を見つけた時にぜひお願いするね、と話して納得してもらいました。

ぐりとぐらのように、息子達が自らかすてらを焼くまでの道はまだまだ遠く険しい道のりのようです。

 

 

まとめ

『ぐりとぐら』は50年以上愛されるロングセラー絵本。

これって、実にすごい事なんですよね。

絵本が長く子供達に愛されるには、いつ読んでも内容が古びない、というのが大切。

時代の経過と共に、様々な流行の変化があっても、子供はいつの時代も子供、求めるものの基本は変わりません。

 

その意味で、『ぐりとぐら』の世界には、この50年以上にわたる時代の変化の影響がなく、いつの時代の子供が読んでも隅から隅まで楽しめる普遍性があります。

絵のタッチや色使い、食というメッセージ性、出てくる動物達の装い、そしてカステラに至るまで……どこをとっても時代の影が薄く、それ故にいつ読んでも全く色褪せない、ぐりとぐらの絵本の世界。

子供の頃は当たり前のように読んでいましたが、大人になってから息子達へ読み聞かせている内に、改めてこの絵本の凄さ、高い完成度に感嘆します。

 

これから更に50年経っても、ぐりとぐらのかすてらは、きっと変わらず子供達の憧れなんじゃないかなー。

こんなに素敵な絵本ですから、大事に読み継いでいきたいですね。

 

 

作品情報

  • 題 名  ぐりとぐら
  • 作 者  中川李枝子(文)・大村百合子(絵)
  • 出版社  福音館書店
  • 出版年  1967年
  • 税込価格 990円
  • ページ数 28ページ
  • 対象年齢 3歳から
  • 我が家で主に読んでいた年齢 2~4歳(長男3歳過ぎてカステラデビューした後は特に大ヒット)