義父から荷物が届いた。

中身は知人から貰ったらしい『鴨の舌』で、自分は要らないから私たちに送ったと言った。

私たちも「欲しい」とは言っていない。

中国人は鴨をよく食べる。

肉だけじゃなく、頭から首、腸、水掻きのところまでスーパーに並ぶ。

夫も鴨を食べることには抵抗がないし、頭だってアイスクリームみたいにしゃぶることが出来るが、何故か分からないけど鴨の舌だけはゲテモノ扱いである。

「形がグロテスク」と言うが、頭をしゃぶる人がそれを言うのは違うと思う。

私が初めて鴨の舌を見たのは、中国に移住して来て最初に迎えた春節だったと思う。

親戚宅でご馳走になった時、食卓に出されたY字の謎食材…それが鴨の舌だった。

私は中国で食わず嫌いしている物も多いけど、鴨の舌は3秒の躊躇だけでいけた。

牛タンも豚タンも好物だから。

味は若干の臭みがあり、脂がすごくて、少しだけジャーキーっぽいように感じた。

何かの味に似ているというより、ああこれが鴨の舌の味か…という独特な風味である。

食べられる部分は少なく、殆ど軟骨で、不味いとは思わなかった。

義父から貰った鴨の舌は洗って、電子レンジで温めてお昼ご飯に食卓に並べた。

夫はその温める匂いだけでオエェと悶絶。

私が食べる様子を見ながら信じられないと言い、私が一口どう？と聞いたら「食べたら吐く」と言い切った。

私が食べれて夫が食べられない中華食材なんてとても珍しい。

義父と夫からパスされてきたこの珍味が、冷蔵庫にまだ500g（大量）近く残っている。

どうしよう。