持たないようにしようと思いながら、やっぱり心から消えてくれないのが人の欲です。
「大金持ちになってやる」とか「人を蹴落としてでものし上がってやるぜ」というような強烈な欲望は持っていないにしても、やはり、欲はつきまといます。
お腹が空けば、ご飯は食べたくなる。
暑い日はむしょうに「ガリガリくん」(それも、期間限定のちょっぴりリッチな)を食べたくなる。
ブログを書けば、少しでも多くの人に読んでもらいたくもなる。
「こうありたいなあ」「こうなりたいなあ」と何かを求めている時、自分の思うようにいかないことがあると、「今ここにはない足りないこと」にばかり目がいってしまって、心はどんどん不幸に近づいていってしまいます。
「ああ、そっか。今あることだけでも充分だったんだぁ」
そんな気持ちに立ち返らせてくれる江戸時代の僧 良寛さんの言葉です。
『 焚くほどは 風が持てくる 落ち葉かな
落ち葉を求めて「風よ、吹け!」と期待する人生は、風に恵まれなければ焦燥となる。
焦燥に心をこがせば嫉妬となり、不平不満が口をついて出る。
期待するのではなく、「風が勝手に吹き、その結果として落ち葉が溜まったならば、その分だけをありがたく焚けばいい」と言い聞かせ、突き放して考えようという良寛のメッセージを、私はこんなふうに感じるのである。
欲を断とうとするのではなく、言い聞かせるというところがポイントで、世俗に生きる私達にとって、無欲とは、欲そのものが消滅できずとも、無欲でありたいと真摯に願う、まさにその人生観を言うのではないだろうか。 』
(「良寛 清貧に生きる言葉」 向谷匡史 著 青志社,2009年 30-31ページより引用)