今、いる場所が
心が折れるぐらい苦しければ
置かれた場所で咲かなくてもいいから
逃げてもいいということ。
「自分を大事にすること」は「自分を守ること」です。
心や体を壊すくらいなら、そんな会社や学校には行かず、全力で逃げてください。
家族が苦しさの原因になっているなら、縁を切るか、距離をおいてほしいのです。
自分に合わない場所で我慢せず、1人で孤立せず、
人との繋がりを持ちつつも
自分が楽にいられる場所を探してみてください。
世の中には生きる場所が無数にあります。
(「逃げろ 逃げろ 生きのびろ!」 たかのてるこ・文と写真 テルブックス,2019年より引用)
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世界を旅するエッセイスト、たかのてるこさんの本の一言です。
日本って、なぜか「逃げる」ことに対して否定的な見方が多いように私は感じますが、この本は真っ向から「逃げろ!」と言っているわけでして…。
実は私も、人生の中で何度か、苦痛の多い場所から逃げたことがありますので、タイトルにぐいぐい引っ張られて手に取り、一気に読んでしまいました。
私が「逃げた」体験。
ひとつめは、高校生の時、学校が嫌でたまらなくて退学した時。
ふたつめは、社会人になって初めて就職した職場で上司からの酷いパワハラ的な言動に遭って退職した時です。(個人の感じ方ですから、「パワハラ」ではなく「パワハラ的な」と書きましたが、自分にとってはかなり過酷な状況でした)
その時は、「人生、これからどうなっちゃうんだろう?」とものすごく不安に思ったし、「自分は弱い人間なんじゃないか?」と何度も自問自答しました。
だけど。
結果論かもしれないけど、私の場合は、なんとかこうして生きています。
人生は終わることなく相変わらず続いているし、私という人間が弱いかのかどうかはわからないけれど、大検(現「高認」)を経て大学に入学し、大学院で心理学を学び、臨床心理士を取得してからはカウンセリングの仕事をしたり、大学で講義をしたり、自分の生業を生きています。
学校を退学して、悩みまくって、カウンセリングを受けたことが、自分自身が大学に進学して心理学を学び、カウンセラーになろうと思うきっかけになりました。
上司のパワハラ的な言動に遭った職場では、陰ながら守り支えてくれた同僚がいました。
何人ものスタッフが、毎回、同じような目に遭って退職していく姿を、悔しい思いをしながら見送ってきたというその方は、「世の中、こんな“後ろから弾が飛んでくる”ような職場なんて、そうそうないから。君がおかしいんじゃないよ」と、最後の勤務を終えた後、焼き鳥屋で慰労会を開いてくれました。
辛い立場にいる時、心に寄り添い、味方でいてくれる人の存在が、どれだけありがたいものであるのかを知る経験になりました。
たかのてるこさんの本の言葉にあるように、置かれた場所に咲くことはなかったし、そこから逃げたけれど、その後、世の中には生きる場所は無数にあって、自分に合った場所をたどりながら、どうにか生きてくることはできたなぁ、と、今は思っています。
これはあくまでも、私の狭い狭い範囲での、個人的な経験でしかありません。
その人、その人によって、置かれた状況や感じ方は異なりますから、「これが正しい」などと言うつもりもありません。
ただ、「逃げる」ということを選択した、一人の人間の足跡として読んでいただければと思い、小さな私の「逃げる」体験を書いてみました。
たかのてるこさんの本。
とても心に沁みました。