東京2020後記
岸田新総裁誕生に、新たな人事、衆院選。
そんな話題に盛り上がる、この頃。
(岸田さんが、高市さんとの距離を縮めていったのが、見ていて面白かった。
過半数を取れなければ決選投票という方法も、なるほど、こういう動きを生むのかと。
言ってみれば自然だし、分かりやすかった。)
東京2020はすでに、過去のトピックになってしまったのだろうか。
もう一回『折たく柴の記』に触れたいが、東京2020が記憶の箱に収納されてしまう前に、書き留めておきたい。
(スムーズに入力できない古文に嫌気がさしてきた、というのではなくて。
少し面倒と思ってしまうけれど、嫌気なんてまさか、そんなことはなくて。
ごにょごにょ。)
1)感染対策の成功
オリンピックが開催されるとともに、感染者は激増して、第5波を呼び寄せた。
でもそれは開催前から、分かっていたこと。
(「バブル方式」や「安全・安心」の標語が掲げられていたけれど、それを素直に信じて安心して過ごしていた日本人が、何人いたことか。)
緊急事態宣言下の感染者増も、開催した以上は当然の結果であって、むしろ最悪の事態は回避できたと思っている。
私はもっと恐ろしい事態を想像していた。
(自分でもどうかと思うけれど、悪い想像が、無意味に得意。)
新しい変異株の発現や、選手の発症。
もし、選手が感染してしまったら。
もし、最悪、その選手が死亡してしまったら。
もし、それがスター中のスター(羽生結弦さんや浅田真央さんみたいな)、国宝級の愛され選手だったら。
もし、その選手が、日本とは外交上ナイーブな国の選手だったら。
(妄想の暴走。)
ウイルスは、忖度なんてしてくれないよ。
怖すぎるよ。
そう思っていた。
全て杞憂におわった。
これはひとえに、現場の努力の賜物だと思う。
パンデミック下の開催としては、全ての選手をウイルスから守り抜き、素晴らしい結果を勝ちとったと思う。
(政府や東京都の、開催判断が良かったわけではなくて。
第5波形成をはじめ、国民に負わせたリスク、労力は、大きすぎた。)
2)金銭の流れ
JOC経理部長が、大会目前に自死されたのには、言葉を失った。
https://www.asahi.com/articles/ASP676QZ1P67UTIL032.html
ここまでショッキングなことがあれば、お祭り騒ぎのあと、財務の検証があるかと期待していたが、このまま蓋を開けずに終わりそうだ。
新しい価値を創出せず、労力を払わず、市場の競争をうけずに、利益を得る行為。
それを「成功経験」として覚えさせてしまうと、競争力を磨こうとしなくなる。
利権にぶら下がるスキル磨きに精を出し、それを「賢い」と思ってしまう。
結果、国力そのものが、落ちてゆく。
亡くなられた方には御冥福を祈るしかなく、こんな言い方をして申し訳ないが、この国が襟を正して成長する、良い機会だったのに。
どこか水面下で骨太な人が、真っ当な検証のために動いていてくれれば、と願う。
3)障がい者へ距離
私個人の、問題。
四肢の欠損や、独特な表情などを見ると、反射的に「大変そう」と思ってしまう。
屈折した偽善っぽいが、一瞥して障がい者に同情するのは、無神経なことだと思う。
その人の努力や能力、精神的タフさを見ようとする前に、「大変だ」と大雑把にくくってしまうことだから。
きちんと理解した上での共感とは、違う。
根拠なきマウンティングだ。
そもそもパラリンピックは、ハレの舞台。
憐憫より称賛が、断然ふさわしい。
(勝負に向かう強い眼差しなんかは、私などよりよほど生きる力に満ちていて、逞しいと思う。)
なのに自分と違うところばかりに注視して同情し、健常者の競技のように鑑賞できない。
競技そのものより、足で器用に帽子をグッとかぶりなおす仕草などを目で追ってしまう。
私にとっては、障がい者がひどく遠いのを、自覚させられた。
実家の近くには療育施設があったし、今の職場でも、障がいを持った方が一緒に働いている。
でも障害のありようはあまりに多様で、初めてみる姿には、つい目を見張る。
結局、いらぬ同情から卒業できないまま、パラリンピックは終了した。
東京2020、私にはスポーツ鑑賞にチャレンジという貴重な機会だった。
新総裁について、岸田さんは「勝ち取った」感が多少あるところに、私は期待している。
(過去、神妙不可思議な(派閥?)力のみによって就任し、
「いやあ、僕なんかでいいのかな。みなさん、すみませんね。えへへ。(内心の小躍りが隠しきれない)」
みたいな下品な就任姿を拝見して、肌がそそけ立ったことがある。
それが誰かというのは、ある意味どうでもよくて。
それまでに見たあらゆる映画、芝居に登場した人物造形をこえて、圧倒的に下品な人が、そこにいた。
「おお、役者たちよ、この人を見よ。」と思った。)
パンデミック下、選挙間近か。
いずれ波乱が避けられない時期なのだから、岸田さんには右顧左眄することなく、自分の考えを貫いてほしい。
というか、それが見たい。
その評価は、待つことなく、すぐに得られる。