A.基本的には入らないほうが良いでしょう。人事考課には影響しない会社が多いです。


従業員持株会とは、会員たちの給与から一定額のお金を天引きし、その集めたお金で自社の株を購入するための会です。


購入した株は持株会名義ですが、各会員の拠出額によって配分が記録されていますので、配当金などもその配分で受け取れます。

会社を辞める際は、配分で単元株(100株のところが多いです)以上のぶんは個人名義に書き換えて保有・市場で売却すること等が可能であり、単元株未満のぶんも現金化したうえで受け取れます。つまり中途退職しても積み立てがパーになることはありません。


この持株会、通常は福利厚生の一環として位置づけられていますので、加入は任意であるはずです。

が、会社によっては上司などから加入を勧められたり、まるで入るのが当然であるかのような空気になっている会社もあるようで、不安になってしまっている人もいらっしゃるようです。


世の中にはこの持株会についていろいろなご意見はあると思いますが、今回は基本的に持株会には入らないほうが良いという立場で記事を書かせていただきたいと思います。


従業員持株会に入るメリットは小さい


まずはメリットを整理していきます。


【従業員持株会に入るメリット(一般的に言われていること)】

  1. 給与天引きされた少額の積み立て金で少しずつ株式を買っていける
  2. 入会者に奨励金を出す会社が多い
  3. 定期預金よりも有利な利率で積み立てが可能
  4. 従業員の会社に対する帰属意識や経営参加意識が高まる


このようになっていると思います。

正直なところ、突っ込みたくなるものばかりです。


1については、持株会はいわゆるドル・コスト平均法といわれる買い方をしており、一定期間ごとに一定金額で買い付けを続けていく投資方法を取っています。これには買付単価が平均化されるメリットはありまが、当然デメリット(次項のデメリットで述べます)もあります。しかし何も考えずに持株会に入ってしまうかたはそれを理解していない人があまりにも多すぎます。


3は配当金の利率は定期預金よりもずっと良いですから事実ですと言いたいところですが、業績が良くなければ配当金が出なくなることもあります。また伸び盛りの会社は利益を配当金よりも投資に回しますので、良い会社なのに配当が悪い・無いというところはゴロゴロ存在します。


4に至っては今の若い人は「はぁ?」としか思わないのではないでしょうか?


メリットらしいメリットは2の奨励金くらいだと思います。はっきり言って弱いです。


従業員持株会に入るデメリットは大きい


一方、デメリットはかなり濃いです。まとめて書いてみます。


【従業員持株会に入るデメリット】

  1. 株価が高くても機械的に買ってしまう。
  2. 株についての知識が身に付きにくい。
  3. 好きなタイミングで売却できない。
  4. 株主優待品がもらえない
  5. そもそも自社が良い銘柄でない可能性がある。


1については、前項のメリット1がそのままデメリットになったものです。

株価が上がり切ってチャートの形状がスカイツリーのような状態になっていても、持株会は会員から集めたお金を使って素知らぬ顔で株を購入してしまいます。

今(令和3年)のように日経平均株価が歴史的高値にあるときでも毎月買って平均買付単価をせっせと上げてしまいます。これは大きなリスクです。


2については、意外と見落とせないデメリットです。

持株会に入っても毎月給与明細で天引きされているのを眺めているだけになるので、株の勉強にはなりません。よって持株会に入っている人は株の知識が浅い人が多いです。酷い人になると「株って何?」レベルです。これから入会するあなたもそうなる可能性があります。


3も大きいです。

個人で、かつ自社でない株を所有していれば、市場で自由に株を売り買いできますし、何か材料が出て噴き上がったところで機動的に売り抜けることも可能です。

しかし持株会の株はあくまで持株会名義。そのままでは売れません。申請して株を引き出して自分名義にしてから、さらに会社に申請して売却許可を貰い(証券取引法においてインサイダー取引規制があるため)、それから市場で売却となりますので、非常に時間がかかります。意図しない安値で売らざるを得ないことも当然あるでしょう。


4はたいしたことではないと思いますが、株の所有が持株会名義ですので当然優待品ももらえません。


5もかなりのリスクです。

そもそも自分のいる会社の株は投資対象として魅力的ですか? もしそうなら良いのですが、たまたま自分が入った会社が超優良銘柄という可能性がどれくらいあるのでしょうか? また、1つの銘柄に集中投資というのは初心者向きの投資方法ではありません。

もしかしたら、あなたは良くない銘柄に長い年月をかけて集中投資してしまう羽目になるのかもしれません。


なぜ会社は従業員持株会に入ることを勧めるのか?


なぜ持株会への加入を勧める会社があるのか?

それは、会社にとって持株会の存在は都合が良いからです。


持株会は基本的に売却が生じないうえに総会で決議に反対することもないため、安定株主として機能します。また、一般的には従業員持株会は会社の福利厚生の一環とされています(わたくしは正直如何なものかと思っていますが)ので、そのアピールも可能です。


つまり持株会制度は、従業員のための制度に見せかけた会社のための制度なのです。

前述のとおりデメリットがメリットを上回るため、当ブログでは誘われても断ることをお勧めします。


株を始めたいというかたは、自分で証券会社の口座を開き、自分で銘柄を選んで投資したほうが良いでしょう。


まともな会社なら持株会に入らなくても人事考課などにはほぼ影響しない


「でも、加入を断ったら評価に影響しそうではありませんか?」

わたくしは人事担当経験者であり、またいろいろな会社の人事担当者ともお話をしたこともありますので断言しますが、まともな会社であればそのようなことはまったく評価に影響しません


逆に評価に響くような会社はよろしくない会社である可能性が高いです。他の会社に行ったほうが良いのかもしれません。