インテルに凋落の兆し (個別銘柄:米国株)

  

1.半導体産業の王座転落

 インテルは半導体産業の盟主です。半導体シェアの推移は、1982年8位、1993年1位、 1999年1位、そして2021年1位とそうそうたる実績です。それにも関わらずインテルは斜陽と言われて久しいのです。それは、スマホ台頭における市場シェア獲得の失敗、GPU市場におけるエヌピディアなどの台頭。データセンターに代表される大手IT企業のCPU内製化の動きなど成長分野で強みを発揮できていないことが理由として挙げられます。さらに、追い打ちをかけるように半導体産業は設計と製造の分離が進んでおり、総合半導体メーカーであるインテルは設計及び製造技術において専門メーカーの後塵を拝しています。市場は、そんなインテルを冷ややかな目でみているようです。

 

製造における技術低下

 インテルの決算を見るとサムスンと絶望的ともいえる開きが生じており、令和4年の第2四半期の決算報告を例にとるとサムスンの増収の幅がインテルと比べ圧倒的に大きいだけでなく、インテルは大幅な減益でサムスンは大幅な増益です。両社の発表は、インテルは需要が一巡したための低迷、サムスンはハイテク大手のクラウド需要が好調と真逆となっています。これは、インテルの製品が市場から受け入れられていないことを示唆し半導体製品という点では、インテルはサムソンとTSMCに追い付くことが出来ない程の技術的な差が生じてしまった事を表しています。それだけではありません。後ろには中国企業が猛追しています。インテル、かつての米国の主役産業であった鉄鋼や自動車と同じ轍を踏んでいるかのようです。

3.政府の後押しも期待薄

米国政府は、戦略的産業である半導体を底上げするために、インテルなどを念頭に半導体の生産や研究開発に527億ドルの補助金を打ち出しました。しかし、こういった補助金が今のインテルに有効に働くとは思えません。私は、インテルの低迷がたんなる資金面の事情ではなく組織によるものと確信しています。

つまり、組織は隆盛を極めて、大きな組織になればなるほど官僚化し内向きの社内政治が闊歩し、最後には市場から見放され過去の栄光から凋落していく。そして、一旦凋落したら二度とかつての栄光の戻れなくなる。そうやって企業は栄枯盛衰及び新陳代謝を繰り返してきた。 

4.米国政府の次なる手

とはいっても、半導体産業は米国政府の戦略的産業です。米国政府がそんな停滞を許容するはずがありません。国家の威信をかけて、そして周辺のライバル企業を押しつぶしてでも、国内の半導体産業を保護していくでしょう。

 しかし、一度腐った組織は、そう簡単には元には戻りません。インテルがかつての栄光を取り戻すには荒治療が必要になります。それが、設計と製造の分離です。これは近い将来間違いなくインテルに降りかかる再建策となります。そして、その両方に米国政府が介入し、製造については勢いのある企業と連携させ、同時に優秀な経営者を送り込むことが想定されます。それでも、サムスンやTSMCはトヨタのように半導体分での勝利の方程式を掴んでしまっています。インテルが盛り返しを図るのは容易ではないと言っても過言ではありません。

 こういった状況は米国政府も承知です。米国政府は、TSMCに米国で使用する最先端技の術品を米国内の工場で製造させるようにすることで準国産品まで引き上げ、国防的なセキュリティを図ろうとしている。

5.投資対象としてのインテル

 インテルの株価は、当面停滞することが予想されます。それが長く続けば続くほど、しびれを切らした株主はインテルに2分割または3分割を要求します。分割したインテルが特定の分野で優位性を発揮し息を吹き返して、新たな上昇波動を築くことはなくもないのですが、ここまで来ると何ステップかを経由するので雲をつかむような予測になります。

投資家としては、インテルが相当な不振になって、株価がとんでもない低迷をした時に購入することです。その目安は、株価が20ドルを切った周りでしょう。その辺になったら、周りの不評を振り切って購入することも一つの手です。30ドルから40ドルへの自律的なリバウンドが期待できます。さらに、その後のスピンオフなどで思わぬ恩恵に出くわすかもしれません。

一般的には、株価が低迷すれば自然と高配当になりますが、インテルに高配当を期待してはいけません。半導体の産業構造上、多額の研究開発費を必要とするので安易な高配当は会社にとって逆に危険な兆候になります。


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