国際的地位が低下しても西欧諸国は世界経済を牛耳る胴元  (世界の潮流)


初版 2022.09.24

1.国別GDPランキングの長期推移

最近は、数百年前までの世界経済力ランキングも発表されるようになった。どこまでの精度かは不明であるが、これらの資料は、超長期的な視点での経済ランキングを予想するうえで重要な示唆を与えてくれる。世界国別の経済力の変遷を辿ってみると、以下の通りとなる。
 1800年頃: 1位 中国 2位 ヨーロッパ 3位 インド 
 1870年頃: 1位 ヨーロッパ 2位 中国 3位 インド 4位 アメリカ
これをみる限り、世界経済はヨーロッパ諸国とインドと中国で占められ、国別の経済力ランキングは古今東西において大きな変化はないということがわかる。この延長上で考えれば、この先の100年でインドの地位が中国同様にリバウンドするのは必然的な流れだ。最近は、少子高齢化や人口ランキング動向で先進国の衰退を指摘するレポートが散見されるが、トルコやインドネシア、そしてアフリカ諸国が、今後50年間に西欧諸国を追い抜くというシナリオは上記水位の延長上でみると想定しにくい。

2.為替レートを牛耳る西欧諸国

そもそも為替レートはなんなのかということだ。一般的に為替レートは総合的な国力を意味する。しかしながら、為替レートの価値基準は欧米的価値基準に沿って成り立ってと言えなくもない。西欧諸国の通貨を基軸として周辺の国々通貨価値が決まっていく。そのため、胴元である西欧諸国の為替が相対的に高くなるのは当然の成り行きである。さらに、為替レートは面であり、地続きであるということ。例として、デンマークの為替はデンマーク単独の評価ではなく、西欧諸国の一員というプレミアが為替レートに付加されている。 
こういった視点で見ると、スペインやノルウエ―、アイスランド、スウエーデンなどは大した産業もないのになぜか通貨や所得水準が高いのも合点がいく。スペインなどは東南アジアのタイと同じようにシエスタなどでのんびりした国でも、れっきとした先進国である。このように、西欧諸国以外の国は、胴元とそれ以外という点で後れを取らざるを得ない。つまり、西欧諸国の国民と同程度の為替レート(国富)で同水準のライフスタイルと生活水準を謳歌するには、欧米諸国の数倍働かなければ追い付けないという厳しい現実がそこにある。

3.文化と価値観を牛耳る西欧諸国

 西欧諸国の為替レートの優位性は、歴史的な視点では植民地政策の延長と見て取れる。これは、植民地の安い労働力で低コストの商品を作って自国に納入し、付加価値をつけて高価格なブランド品として世界中に売りまくる。それは今もって変わらない。アイフォン、ナイキなどの名だたるブランド品はアジアなどで安く製造し、それに西欧メーカーのブランドを付けて高値で販売する。世界中においてブランドと言う価値観を欧米諸国が握っているからだ。また、化粧品やシャネルなどのファッションも西欧諸国の独壇場である。どんなに技術的に勝っていても、日本、中国、韓国メーカーがアイフォンのようなビジネスモデルを構築することはできないし、シャネルのようなブランドも作れない。ここに西欧諸国以外の悲哀がある。一見、落ちぶれているように見えても、西欧諸国と肩を並べることはそう簡単に出来ない構図が出来上がっている。
 さらに、西欧諸国は他諸国が猛追してくれば、その分野の評価基準を変えて巻き返しを図る。その代表例が、日本企業のガラパゴス化であり、最近では、自動車におけるハイブリット技術の否定、水素技術推進の妨げ。これら技術は米国をはじめとした西欧諸国がその価値を認めない限り、世界での表舞台に出られない。

4.欧米との為替政策の違い

 日本がバブルを謳歌していたころ、西欧諸国のほとんどは10%近い失業率に苦しんでいた。それが廻り回って日本の円高へのしわ寄せというに傾いた。日本はそれを悪ととらえ、ひたすら円安政策を堅持してきた。その反面、西欧諸国は自国の製造業がボロボロになってさえも為替安に誘導しすぎることはなかった。ここに日本と西欧の為替政策の大きな違いがある。西欧諸国はこういった外部の環境の変化に対し、ユーロという世界第二位の基軸通貨を作り上げ、一方で分厚い社会福祉で経済の整合性を図っている。逆に、日本はアベノミクスによる通貨安政策で、結果的には日本国力を低下させ、周辺のアジア諸国に追いつかれてしまった。対外的な強さを堅持する西欧諸国と国力を下げてでも内政の安定化に固着する日本との真逆に対応がそこにある。


5.西欧支配に変化の兆し

一見すると西欧諸国の支配が未来永劫に渡って堅牢であるかのように思われる。しかし、ここに大きな落とし穴がある。今の西欧文明を支えているのは米国の経済力である。その米国に見過ごしてはいけない変化がある。それは、米国は移民国家であり、その指導層に少しずつだが有色人種が現れ始めている。その延長で、米国大統領や主要な閣僚に有色人種の比率が高まった時、米国は有色人種の母国を尊重する政策を取り始める。そうなると、これまでのような西欧スタンダードが成り立たなくなる。その時初めて、世界は西欧文明と言う胴元の呪縛から解放されることになる。
しかし、オバマ大統領やハリス副大統領などやっと出始めてきたが、有色人種が3割~4割まで到達するには、最低でも数十年の月日は必要だ。まだまだ西欧諸国(胴元)の構図は崩れそうもない。

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