米国株投資銘柄の選定基準 (投資手法の研究)


1.米国株投資の考え方

ここ40年間、ダウは右肩上がりの上昇を続けている。米国株に投資をすれば無条件に儲かりそうなイメージがあるが、実際はそうなっていない。米国株は日本以上に企業業績と連動しており、米国市場が上昇相場であっても、企業の経営状態の思わしくなければ、非情なまでにその銘柄の株価を突き落としてしまう。米国株投資は、個別銘柄の業績動向をなくして成り立たない。 

2.米国株投資におけるファンダメンタルの考え方

株価が上昇しやすい銘柄は未来に輝くような期待値のある企業であり、投資家は現在および将来の企業業績を無意識に逆算しながら投資をしている。こういった期待値は、①企業が販売する商品の将来性 ②増収増益の連続性等で投資家の期待に応えることで、投資家から多くの資金を呼び込んでいる。たとえ、決算が一時的に振るわなくても将来期待が高い銘柄の株価は下がらない。一方、現状の業績が良くても未来の業績が尻すぼみになると判断される場合には、その企業の株価は好業績にすら反応しなくなり、低PERで放置される。このように個別銘柄の株価は投資家の期待値という非定量的な可視化できない信用具合の評価基準で上下に変動し、そのブレ幅は、PERは10倍以下から30倍後半まで約4倍近くにまで拡がる。これだけの開きがあれば収益や財務分析などのファンダメンタル分析で株価を予想しても期待通りの株価にならない。

3.米国株の投資戦略

GAFAMは、2010年中頃からIT分野で独占的なシェアを獲得するようになったことで、製造業が到底太刀打ちできない高収益率ビジネスを展開するようになった。さらに、コカ・コーラやマクドナルドなどもフランチャイズのような形式を取り入れて、低収益の事業分野を最大限に切り離して利益率の底上げを図っている。これら企業の株価は、莫大な収益力を背景に想像を絶する上値と時価総額を描くようになる。株式市場の資金はますます一部の銘柄に遍在し、その他大多数銘柄の投資リターンに歪を与えてしまった。ただし、これら成長銘柄の多くは無配当でインカムゲインを期待できないことから、ほどほどの上昇リターンと配当金を狙うとしたら、優良長期増配銘柄がターゲットになる。これをより安全に運用していこうと考えたら、ダウ指数又はS&Pインデックス投資がターゲットになる。

    


2.銘柄選択

2.1 優良成長株

 株式の醍醐味は成長優良銘柄に投資をすることである。なぜなら、これら銘柄にうまく投資できれば、株価が10倍どころか100倍まで膨れ上がることが期待できるからだ。

株価は常に現況におけるすべての材料を織り込んでいる。次なる上昇を望むには、企業側が別の好材料か更なる成長期待を市場に提供しなくてはならない。さしたる材料や決算報告がなければ、株価は一進一退の動きを繰り返すだけとなる。一方、優良成長株は常に未来への成長性を投資家にアピールし、その実現を繰り返して株価の上昇基調を長きにわたって保ち続けている。

その代表例が、マイクロソフトのビルゲイツがWINDOWS で一般人にパソコンを普及させ、アップルのスティーブ・ジョブスはスマホでインターネットと日常生活の融和を図り、さらにテスラのイーロンマスクは電気自動車の普及を加速化させ、アマゾンのジョフ・ベゾスは電子取引を一般化させた。こういった企業は、ずば抜けたマーケティング力を備え、結果としてこれら銘柄は天空を這うような株価上昇と時価総額となった。

未来に輝く成長株で見つけたいなら、その企業の経営陣にカリスマ性があるかどうか、そして、黎明期といえども適正な利益を確保できる事業構造になっているかを見定めなくてはいけない。

                       

(成長性の鈍化を見据える)

しかしこれら銘柄も成長性が鈍化し、成熟企業に変化したと判断されれば、株価は下降線か横ばいを描くことになる。その代表的な例がマイクロソフトであり、2000年前半にWindowsの成長性が鈍化しすることで株価は長期低迷に移行する。その後は、ゲームやクラウドなどの多角化に成功し第二成長期を迎えることになるが、同時期のライバル企業であるオラクルやシスコシステムズは次なる成長軸を見出すことができず、成熟株と同じような動きに収まっている。


株主が求める企業の理想像は、市場の成熟化のスピードが非常に速いことを考慮し、「企業のビジネスモデル秀逸性の確立 → 安定的な高収益の確保 → 市場飽和の打破&更なる成長事業への参入 & 低利益・不採算事業の撤退・売却  ⇒企業のビジネスモデル秀逸性の確立→ 安定的な高収益の確保」の常に成長性のある産業分野にシフトできるサイクルを提供できる企業が該当する。

2.2 期連続増配銘柄

長期連続増配銘柄は、成熟産業のガリバーで、かつ超優良企業ではあるが、売上や利益の成長性は大きく望めない。このため、好業績を長年続けているが売上や利益の成長幅は乏しく、株価の上昇、増配率が緩やかになり、低PERで放置されることも多い。

又、エリート企業であるがゆえ、社内組織は官僚的になり、その結果世の中の時流への対応が遅れ、硬直的なコスト構造などが深刻な業績低迷を導いてしまう。最近では、GE、IBM、3Mなどがこの状態に陥った。さらに、巨大で複合化した組織であるがゆえに、様々な構造改革(会社の分割、リストラなど)に10年近くの長い年月を費やさざる得なくなる。その間はダウ指数と反比例するよう株価は低迷し、時には数分の1までに下落することもある。

とはいえ、特定の分野での圧倒的な優位性を保持する米国の代表選手である。一般的に、これら企業の独占したビジネス領域を他企業が奪い取る事はほぼ不可能に近い。下剋上を起こすとしたら技術革新などでその商品が不必要になった時くらいである。

投資家は、このような経営上のミスで株価が大きく下がった頃を見計らって、逆張りをすると妙味が出る。なぜなら「腐っても鯛」だからだ。株価は数年間程度辛抱強く待てばそれなりのリバウンドが期待できる。さらに、構造改革中でも連続増配は死守する傾向が高いので、5年、10年もすれば購入価格ベースでの配当利回りが10~20%になることが期待できる。

3.次なる成長波動

株価の値上がりを求めるなら優良IT企業をターゲットになるが、GAFAMが巨大化しすぎてしまった。2022年以降の時間軸で見た場合、これら銘柄に更なる上昇を期待するにはAIやロボットなどの新しい生活様式を導き出すような革命的な製品の出現が必要になる。しかし、これら製品をGAFAMが独占するとなると更なる肥大化を招くことになり、株式市場だけでなく、世界の経済運営を硬直にさせてしまう危険性がある。とはいえ、GAFAMが今の状況のままなら、新しいスターが出現してもGAFAMに飲み込まれるか潰されてしまうのが明白だ。

今後、ダウを6万~7万に上昇させるようなテンバガー、ハンドレッドバガー銘柄が現れるには、米国政府はGAFAMの力をそぎ落として次なるスター企業を育てる環境を用意する必要がある。そういう点では次なる成長波動は,GAFAMの解体が現実味が起きた時と考えるのが妥当で、その間は優良連続増配株で手堅く利益を享受することも戦略の一つになりえそうだ。

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