ネット検索をしていたら、「通告したらその通告相手に身元がバレてしまうのか?」と、心配している方が多いようなので、経験談をまとめてみました。
かなり文章が長いのと、あくまで私がいた児童相談所の場合ですので悪しからず
(過去記事にも書きましたが、私は虐待対応チームで児童福祉司をしていました。通告の電話対応、家庭訪問・安否確認、保護など、一連の仕事は経験しています。)
そもそもなぜ、通告者の個人情報が児童相談所に伝わるのか
通告は“匿名でOK”なのですが、実際に相談窓口に電話をすると、職員から氏名や住所、職業、電話番号を聞かれます。
「匿名で大丈夫っていうから電話したのに!話が違う!」と思いますよね。
職員はダメ元で聞いています。
身バレが心配、職員を信用できない等で教えたくない方は、言わなくて大丈夫です。
なぜ個人情報を伺うのか、
「通告内容の信憑性が高くなり、状況が明確になりやすい」のと、「聞きこぼしがあったときに電話で確認できる」からです。
これについては、過去記事に詳しく書いてますので省略します。
個人情報を伝えた場合、相手にバレるのか?
一番重要なところですよね。
まず前提として、児童虐待防止法(第7条)で、「通告を受けた児童相談所等は、当該通告をした者を特定させるものを漏らしてはならない」と義務付けられています。
個人情報を漏らしたら違反です。
家庭訪問の冒頭のやりとりを簡単に書き出しました。
職員「泣き声が心配という連絡がきて来ました。」
相手「連絡してきたのは誰ですか?」
職員「こちら(児相)も分かりません。匿名で連絡していいことになっているので。」
本当は知っていても、淡々と「児童相談所も知らない」で突き通します。
・経験上、一度は聞き返す方が多いです。ただ、「児相も知らない」と答えた後にすぐ本題に入り、深入りさせてない雰囲気を作ってしまいます。
・次に多いのが、通告者うんぬんより、児童相談所が来たことに驚いて全く聞いてこない(気が動転して聞き忘れる)、触れてはいけないと思って(空気を読んで)聞いてこない方です。
・稀に「本当は知ってるんでしょ?」としつこく聞いてくる方もいます。その場合も淡々と「児相も知らない」で突き通します。
ただ、児相は知らないと言っても、通告したのは隣の住人か?上の住人か?保育園か?学校か?と疑いますよね。私も通告された立場なら疑ってしまいます・・・
もし、通告者と相手が同じアパートの隣同士で、通告内容が、22時頃にお母さんの怒鳴り声と、「ママ、痛い。」と子どもの声が聞こえるだった場合、このまま相手に伝えると、通告者がバレる可能性があります。
「ママ、痛い」という具体的なセリフをそのまま相手に伝えた時点で、両部屋のどちらかな?と勘ぐってしまいます。
また、相手の右部屋の住人が通告者、左部屋の住人が、もし22時頃はほとんど夜勤でいない生活習慣の人だった場合、通告者が疑われてしまいます。
そうならないよう、通告内容を復唱するのではなく、通告元がバレないよう、聞き方を工夫して状況確認していきます。
ただ、それでも相手が通告元を疑うことは防げません。
しかし、年間数百の通告を受けて、後日通告者から、「相手にバレて人間関係に支障が出た」とか、「嫌がらせをされてる」とった苦情やクレームは一度もありませんでした。(黙ってるだけでしたらすいません。)
なので、個人的には、その点安心していいと思います。
話が逸れますが、うちの児童相談所では、アパート・マンションで、世帯を特定するためにしらみつぶしに訪問はしません。それをすると、余計な近隣トラブルを生んだり状況が悪化するからです。
児相によってするところもあるようです。何件も訪問されたら近所でギクシャクしそうですよね。
ちなみに、情報が少なくて世帯を特定できない場合は、関係機関に注意喚起したり、予防線を張ってケースを終えます。
話は戻って、もし相手にバレるとしたら職員がヘマしたときでしょうか・・・。
職員「泣き声が心配と連絡があって来ました。」
相手「連絡してきたのは誰ですか?」
職員「近所の人が・・・」
これはアウト。
うちの児童相談所ではこういうミスはありません(あったらいけない)でしたが、全国の児童相談所、数百いる職員の中には、うっかり失言をして事故を起こすかもしれません・・・
まとめ
・通告は匿名OKだけど、通告内容の信憑性と具体性、再確認のために個人情報を伺う。(返答は任意)
・児相には通告者を特定する情報を漏らしてはいけない義務があるので、最大限配慮した面接をしている。
ただ、これは私がいたチームでの話なので、各々チームによって多少変わると思います。
以前、通告の仕方について書きました。参考までどうぞ。