とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

甲状腺機能異常

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必要な検査

下記のフローチャートに従って検査をオーダーする。

✅FT4、FT3、TSH(FT3とFT4は同時算定できないため注意)

✅ACTH、コルチゾール、AST、ALT、LDH、ALP、TG、T-Chol、LDL-C、HDL-C。

バセドウ病が疑われる場合:TSH受容体抗体(TRAb)、甲状腺刺激抗体(TSAb)、甲状腺エコー(血流測定も含む)、甲状腺シンチ(テクネシウム)

甲状腺機能低下症、橋本病が疑われる場合:抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAg)、甲状腺エコー、阻害型TSH受容体抗体(TSBAb)、必要に応じて穿刺吸引細胞診

甲状腺癌が疑われる場合:抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAg)、甲状腺エコー、穿刺吸引細胞診

✅TSH不適切分泌症候群(SITSH)を疑う場合:totalT4、totalT3、下垂体MRI

服薬歴の聴取(薬剤性の鑑別)

Non thyroidal illness(NTI)の可能性は?

 

FT4正常~高値のフローチャート

FT4高値

①TSH産生腫瘍

②TRH産生腫瘍、SITSH

③測定法への干渉

甲状腺ホルモン不応症(TRβ遺伝子検査)

⑤5'脱ヨード酵素欠損症

⑥無痛性甲状腺炎(TSHの低下が遅れている)、亜急性甲状腺炎の可能性も(TgAg、TPOAgの抗体価は低く、経過で大部分は陰転化する)

⑦T4製剤の過剰、亜急性甲状腺炎(TSHの低下が遅れている)、SITSHの可能性

バセドウ病

※FT3/FT4≧2.5では無痛性甲状腺炎は否定的

⑨無痛性甲状腺炎、橋本病の急性増悪、初期の亜急性甲状腺炎(TgAg、TPOAgの抗体価は低く、経過で大部分は陰転化する)、T4過剰投与

⑩非自己免疫性甲状腺機能亢進症

⑪プランマー病、機能性多結節性甲状腺

⑫亜急性甲状腺炎、無痛性リンパ球性甲状腺炎(産後甲状腺炎)、T4過剰投与

⑬T4toxicosis(8~12の疾患もしくはT4過剰投与)

 

FT4正常

①潜在性甲状腺機能低下症(橋本病)、バセドウ病治療中(治療後)、RI後

甲状腺ホルモン合成障害性甲状腺

③潜在性甲状腺機能低下症、T3が低下している場合は LowT3症候群

④無痛性甲状腺炎(TSHの低下が遅れている)、亜急性甲状腺炎の可能性も(TgAg、TPOAgの抗体価は低く、経過で大部分は陰転化する)

⑤T3製剤の投与、T3 toxicosis(未治療状態のplummer病で見られることが多い)、SITSHの可能性

⑥正常

⑦Non thyroidal illness(LowT3症候群)

⑧T3優位型バセドウ病

⑨T3 toxicosis(未治療状態のplummer病で見られることが多い)、T3製剤の投与

⑩潜在性甲状腺機能亢進症

⑪軽症例のNon thyroidal illness(LowT3症候群)。

 

甲状腺クリーゼの診断基準

日本内分泌学会による診断基準

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(引用:日本甲状腺学会,  日本内分泌学会による甲状腺クリーゼの診断基準

 

Burchらの診断基準

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引用:Burch HB, Wartofsky L. Life-threatening thyrotoxicosis.Thyroid storm. Endocrinol Metab Clin North Am. 1993;22:263-77.

 

甲状腺クリーゼの初期治療

早急に内分泌内科にコンサルト

✅抗甲状腺薬+無機ヨード+βブロッカー+ステロイドによる治療を行う。

心不全の評価

✅循環動態が落ち着かなければ血漿交換も検討される。

 

甲状腺

下記のいずれか

  • メルカゾール30㎎/日静注または60㎎/日 分2内服
  • チウラジール500-1000mg/日 内服

ステロイド

下記のいずれか

  • プレドニン30㎎/日分2 内服
  • ヒドロコルチゾン300mg/日 静注
  • デキサメサゾン8mg/日 静注

βブロッカー

頻脈時は下記内服

  • インデラル30㎎/日分3

無機ヨード

発熱への対症療法

 

FT4低値のフローチャート

①橋本病(慢性甲状腺炎

甲状腺ホルモン合成障害性甲状腺

③橋本病疑い、破壊性甲状腺炎の機能低下症期、薬剤性甲状腺機能低下症、アミロイドーシス、Non thyroidal illness (LowT3症候群)の回復期(回復期はTSHが一過性に上昇する)、萎縮性甲状腺炎:TSBAb(甲状腺刺激阻害抗体)やTRAbなどの自己抗体陽性となることもある、医原性(バセドウ病術後、RI後)、ヨード過剰・欠乏、先天性の甲状腺機能低下症

④重症のLow T3症候群

⑤3次性甲状腺機能低下症(視床下部性)、TRH単独欠損など

⑥2次性甲状腺機能低下症(下垂体性)、TSH単独欠損症など

 

甲状腺機能低下症の原疾患

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潜在性甲状腺機能低下症の診断と治療フローチャート

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(引用:日本内科学会雑誌第99巻第4号

 

薬剤性の甲状腺機能低下

(引用:Med Clin North Am.2012 Mar;96(2):203-21)

 

Non thyroidal illness(LowT3症候群)

✅全身疾患にともなう甲状腺機能低下。

甲状腺ホルモンの補充は基本的には必要ない(症状がある場合のみ補充)

原発甲状腺機能低下症と区別は困難なことが多い。

⇒ 原疾患が落ち着いてから再検査する。

✅FT3の低下、9割はTSHは正常範囲となるが重症例ではTSHが低下することも。

✅(FT3値/FT3基準下限値)<(FT4値/FT4基準下限値)の場合は、LowT3症候群の可能性が高いと判断する。(私見

✅TSH>20mU/Lの場合は原発甲状腺機能低下症の可能性が高い。

 

原発甲状腺機能低下症の治療

ヨウ素の摂取を控える

レボチロキシン25~50μg/日 分1 朝食後内服で補充を開始する。虚血性心疾患の既往がある患者や高齢者の場合には12.5μg/日で加療を開始する。

✅2~4週毎に25~50μg/日ずつ増量する。虚血性心疾患の既往がある患者や高齢者の場合には12.5μg/日ずつ増量する。

※増量してから2~4週しないと検査値は改善してこないことが多い。
※FT4はTSHに遅れて正常化してくる。

✅TSHは基準範囲内になるように薬剤を調節する。高齢者の場合はTSH 5μIU/ml程度を目標とする。

甲状腺機能低下症は機能が回復するケースもある。その場合はレボチロキシンを50μg/日まで減量した後にTSHを確認し、TSH<5μU/mlであればレボチロキシンは中止しても良い。

 

 

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