2021/06/17

「アリューシャンでの戦い」を書くに当たって

目次(クリックしてください)

1. はじめに
2. 戦争前の状況
3. アリューシャン作戦(AL作戦)
4. 西部アリューシャンの防衛
5. アリューシャン列島の冬
6. アッツ島沖海戦とその後
7. 連合国軍のアッツ島上陸
8. キスカ島撤収-「ケ」号作戦
9. 連合国軍によるキスカ島上陸
10. 日本軍にとっての総決算
11. いくつかの考察
12. 戦争全体の総括とおわりに
参照文献

世の中には多くの戦記がある。そこには物語があり、それによってわくわくしたり、驚いたり、感動したり、周囲の状況に憤慨したりなどを通して楽しみながら読めるものも多い。しかしながら「戦史」は必ずしもそうではない。そこに書かれているのは冷厳な事実であり、それは必ずしも感動や楽しみをもたらしてくれるものとは限らない。そこには現実の状況とそれに対する選択と決断、およびその結果が書かれているだけである。

人生とは自ら行動するようになって以降は、一瞬一瞬が自らの選択と決断の連続である。その一つ一つによって、自分の人生は大きく変わる。ましてや戦史には自らの命を賭した戦争における人間が考え抜いた上での選択と決断が書かれている。そこには人間個人として、組織として、あるいは民族としての地域や時代に依らない普遍的な原理や性向が含まれているかもしれない。しかし、そこからそれをどう読み取るかは人による。

アリューシャンでの戦いは、日本にとって派手な勝ち戦はなく、喝采してすっきりする部分はほとんどない。多くは寒くて陰鬱で霧でぼんやりした環境での重苦しいエピソードの連続である。しかし、私は目を背けずに直視することが必要な歴史の一つだと思っている。

この著述は「ブログ」というシステム上で発表しているが、日々の出来事の報告や主義・主張の表明などを意図してはいない。これは関連する戦史に対するレビュー(事実の整理と客観的な解説)を目指している。そのため、客観的な記録に基づいている部分には必ず参照元を付している。そして読んでいただければわかるように、大半は客観的な記録に基づいたエピソードの厳密な再構成となっている。なお、ここで使っている参照文献の一つ、U.S. Navyの"The Aleutians Campaign June 1942–August 1943"は、当初は軍内部の機密文書だったものが1993年に軍の機密解除となって印刷されたものである。その冊子としての発行は限定的だったと思われるが、2018年にインターネット上にpdfとして公開されたため、アメリカ海軍の資料の一つとして用いている。

キスカ島近くのセグラ島上空を飛ぶPBYカタリナ飛行艇
https://ww2db.com/image.php?image_id=17307

世の中には様々な著述物があるが、著述物の役割の一つは、事実に関するオリジナルの記録や見方を残すとともに、そこから生み出される新たな見方を記録として残すことも含まれると思っている。この著述がその大きな過程やサイクルの一部となれば幸いと考えている。なお、そのためにアフィリエイト(広告)などもここでは遮断している。

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