どんこのアル中 日記

名古屋在住の【年金生活者】。方丈記&徒然草。

【好きな10回以上見た舶来映画10選】

はてなブログ10周年特別お題「好きな外国映画10選」


はっ、はっ、 舶来ですか。


Ⅰ マイケル・チミノディア・ハンター

ベトナム戦争映画だが、ベトナム戦争のシーンは、上映時間180分のうち約30分程度。映画の前半、ダラダラと続く、結婚式のパーティシーン。初めて見た時は、「長いなぁ~、いい加減終わらんかしらん」と思っていたら、突然、ベトナム戦争のシーンに変わる。カットアウト!カットイン!ロバート・デ・ニーロがいきなり火炎放射器をぶっ放している。マイケル・チミノ演出のその鮮やかさ。前半のダラダラとした日常は、突然、過酷な戦争シーンになる。これが現実だ。映画館の椅子の上で、俺は震えた。
結婚式のシークエンスは40分以上続く。撮影監督ヴィルモス・ジグモンドによると、脚本ではパーティシーンは5ページ程度。それゆえ、完成した映画を見て、パーティの場面が延々と続くことに驚いたと語っている。
それに対して、戦争シーンは、30分ほど。しかも、他のベトナム戦争映画と違い、戦闘シーンはほとんどない。劇中の【ロシアン・ルーレット】が強烈な印象で、戦争の悲惨さを語る。まさしく、拳銃に込められた、【弾丸】である。この弾丸が見ている者の心を打ちぬく。バーン!
ラストシーン!あの暖かさ、あの静謐、あの余韻。なんとも切ない。なんとも見事な幕切れ。何回見ても、胸が絞めつけられる。前述の撮影監督のジグモンドは脚本を読んだ段階では、ラストが感傷的過ぎると感じていた。が、撮影を終えると、それが過ちであったことに気づく。カメラが止まったあと、その場面に登場する俳優たちが、あまりの悲しさ、切なさから泣き出した。スタンリー・マイヤーズ作曲の「カヴァティーナ」が静かに流れる。

蛇足。ロシアンルーレットの脚本は当初からあり、それだけではインパクトに欠けるとして、ベトナム戦争というテーマが「後付け」されたという逸話。しかも当時のハリウッドは、ベトナム戦争をテーマに映画をつくることに積極的ではなく、イギリスの会社から資金を得るために「後付け」した。




Ⅱ ロバート・デメキス【バック・トゥ・ザ・フューチャー


「はぁ~」。1985年に初めて見た。見終わった瞬間、思わずため息が出た。「Where we're going, we don't need roads."(道など不要)」と叫び。デロリアンが画面いっぱいに迫って、エンド。「はぁ~」、これは、なんの、ため息か。SF映画史上最高傑作を目のあたりした時の正直な気持ちであろう。「こりゃ、えらいもん見てしまった」という感じか。「未来へ戻る」なんとも斬新なコンセプトとタイトル。「伏線と回収」が緻密に計算された、細部にこだわり抜いた脚本。冒頭の7分間に25個の「伏線」が仕込まれている、らしい。俺が調べたわけではない。「note」のブログで見た。何気ないシーンにもすべて意味がある。そりゃ、面白いはずだ。映画の中で、茶化されたレーガン大統領もお気に入りで、一般教書演説で映画のセリフを引用した。それが「Where we're going, we don't need roads."(我々がこれから行く場所に、道など必要ないのです)」映画のセリフを引用する大統領もイケてるが、大統領に引用させる映画もスゴイ。ハリウッドが、一番ハリウッドらしい時期に制作された、正真正銘【ハリウッド映画】である。動画配信サービス会社に映画制作会社が買収される今日この頃、しみじみ思う。
昨年、2020年。映画公開35周年を記念して、4kニューマスター版がロードショーされた。(ロードショーというのも懐かしい)。【BTTF】と言うらしい。【バック・トゥ・ザ・フューチャー】の頭文字をとった略称である。なんでも略しやがって・・・。しかし、この現象もスゴイ。映画を飛び越えて、人格を持ち始めている。こんな映画、今までにあっただろうか。
1985年は、いい時代だった。翌年に結婚する俺にとっては、幸せな時だった。1985年に戻りたいか?戻って、1985年から2021年までの今までの生活を再び送るなら、勘弁してもらいたいが、もし、この映画のように、人生のどこか少しを変えて、まったく違う人生になるなら、それはそれで、ありかもしれない。



Ⅲ フランシス・コッポラ【ゴットファザー パートⅡ】

前作【ゴットファザー】の前後談。制作当時のハリウッド映画では、「パート2」を作る慣習はなかったらしい。この映画から始まった、らしい。詳しくは、わからない。が、この【ゴットファザー パートⅡ】は前作より面白く、興業的にも成功した。この成功がなければ、今日の「パート2」「パート3」「パート4」等々の制作はなかったであろう。その意味で、コッポラの功績は大きい。しかし、今日の「パート」の氾濫を見ると、いいことだったのか少し疑問は残るが・・・。
前後談だから、物語の時系列はやや複雑。マイケル・コルレオーネのその後を語ると同時に、その前のヴィトー・コルレオーネが力を手にしていく過程を描く。大抵は、失敗しそうな感じだが、コッポラは、前作以上の作品を作り上げた。その成功の糧を分析すると、完全なる【二番煎じ】に徹した点である。例えば映像面を例に取ると、撮影監督ゴードン・ウィリスによる、光量をギリギリまで絞ったなライティングやセピアの色調など、前作のままである。ロバート・デ・ニーロマーロン・ブランドを意識して、しゃがれ声なのは、少し笑えるが。(笑い)
ゴッドファーザー』と『ゴッドファーザーPARTII』に未公開シーンを加え、時系列順に再編集したテレビ放送バージョンを見たが、なんの違和感もなかった。これはこれでスゴイ。
【パートⅢ】が制作されたが、これは全くの蛇足。【パートⅡ】が偉大であったせいか。残念。



Ⅳ スタンリー・キューブリックフルメタルジャケット

言葉の暴力。
言葉は人を変える。キューブリック曰く「言葉によって人間は改造できる」。海兵隊の教官の罵詈雑言で、新兵は殺戮の天使に変身する。
言葉は人を殺す。その罵詈雑言に耐えられない者は、自らの命を絶つ。
映像に凝るキューブリックは、この作品では、言葉にも凝る。日本語訳(字幕)にも口を出す。最初の翻訳者の戸田奈津子は穏当に意訳したため、再英訳を読んだキューブリックは「汚さが出てない」として戸田を更迭。急遽、原田眞人を起用。キューブリックが原文の直訳を要求した結果、「まるでそびえたつクソだ!」などのセリフが有名になる。
では、罵詈雑言の一部を

「俺はキビしいが公平だ。人種差別は許さん。黒豚、ユダ豚、イタ豚をおれは、俺は見下さん。すべて平等に価値がない!」

「口でクソたれる前と後に“サー”と言え!分かったかウジ虫!」

「パパの精液がシーツのシミになり、ママの割れ目に残ったカスがおまえだ! どこの穴で育った?」

「カマを掘るだけ掘って、相手のマスかき手伝う外交儀礼もないやつ」

なんともはやである。戸田奈津子の普通の意訳では、人格は変えられない。戸田は、直訳では観客に伝わらないと言っていたが、彼女は、この映画の本質を理解していない。この映画は、単なる【ベトナム戦争映画】ではない。ベトナム戦争というシチュエーションで、「人間とは、なにか」と問うた作品である。
エンディングで映像がフェイドアウト、暗転。ローリング・ストーンズ【Paint it black(黒く塗れ)】が突然、流れる。なんて、かっちょいいんだ、キューブリック。色を重ね続ければ、最後は【黒】



Ⅴ ウォルター・ヒルストリート・オブ・ファイヤー


【ロックロールの寓話】【いつか、どこかで】
人気女性ロック歌手が、地元で凱旋コンサートする。途中で、チンピラに拉致される。昔の恋人が救い出す。でも二人は一緒なれない。それぞれの道を行く。でも、困った時は、すぐに来るぜ!というアホみたいな話だ。映画というより【ミュージックビデオ】の趣きだ。この中味のない映画が、カッチョイイ、スタイリッシュ、お洒落・・・なのだ。【ウォルター・ヒル】の上映時間94分の職人芸。
オープニングのライブシーン!主題歌【Nowhere Fast】イントロのドラムの音が、おいらの心を鷲づかみにする。で、いろいろ、いろいろあって、エンディングのライブシーンで演奏されるのが、もう一つの主題歌【今夜は青春】。なんともベタな邦題だか、この曲もイケてる。実際のライブ会場にいる様な迫力と臨場感。初めて劇場の大スクリーンで見た時は、胸が震えた。その後、テレビや動画配信サービスで何度も見たが、その時も劇場の大スクリーンで見た時の感動が蘇ってくる。本国アメリカよりも、何故か日本で熱狂的に受け入れられた不思議な映画。俺は、なんとこの映画のサントラ盤のカセットテープを買った。映画のサントラ盤を買ったのは、後にも先にも、この映画の一枚だけだ。



Ⅵ マシュー・ヴォーン【レイヤー・ケーキ

後に【キック・アス】【キングスマン】を世に出す【マシュー・ヴォーン】監督。後に007六代目ジェームズ・ボンドとして、世に出る俳優【ダニエル・クレイグ】。
この二人の組み合わせが、つまらない映画を作るわけがない。凝りに凝ったストーリーとスタイリッシュな映像。その極地。
「凝りに凝ったストリー」は、俺の筆力では無理なので、省略。スタイリッシュな映像は、表現することが難しいので、省略。ちなみに、【レイヤー・ケーキ】は、わかりにくいので、少々説明。

レイヤー・ケーキ
下っ端チンピラから上層部ボスまで、裏社会の階層(レイヤー)をケーキに例えた言葉。一番上は、おいしそうだが、この仕事、そんなに甘くない。

邦題なら、【階層社会】がいいのではないか。ドキュメンタリーつぽいか。現代、日本では格差拡大が問題視されているが、かの大英帝国では、格差は当たり前。建国以来、ずっ~~~~~~と階層社会で、格差なんぞは、日常茶飯事。いまさら騒ぐなという感じ。ロンドン留学時代に、嫌と言う程味わった。裏社会では、さらに拍車をがかかる。薬の売人【ダニエル・クレイグ】は、そんな裏社会に嫌気がさし、小金も貯まったし、堅気になろうとするが、「この仕事、そんなに甘くない」。「足を洗いたければ、手を汚せ」(宣伝コピー)ということで、凝りに凝った物語が展開する。正直、1回目を見ただけでは、この凝りに凝ったがよくわからず、2回目を見た時、よくやく理解できたことが多い。凝りに凝ったは、俺みたいなアホに辛い。しかし、そこがまた、映画ファンの琴線に触れるのだろう。
ダニエル・クレイグ】の脇を固める役者たちも必見。地味だが、いい味の出汁である。主役を美味しく活かす。アイリッシュ系の俳優が多い、ウィスキーの匂いが香り立つ。

「すべては、終わらせるために始まった」 しかし新しい人生が始まったと途端に、撃たれる。まぁ、世の中なんて、こんなもんさ。



Ⅶ トニー・スコットトゥルー・ロマンス

監督は、トップガントニー・スコット】だが、この映画は、脚本家【クエンティン・タランティーノ】の作品。間違えない!タランティーノは、翌年公開の【パルプフィクション】でカンヌをさらう。
一方トニーだが、【デニス・ポッパー】【クリストファー・ウォーケン】【ゲイリー・オールドマン】の錚々たる俳優陣を活かして切れていない。なんともはや、もったいない話だ。クライマックスのホテルでの、マフィア、警察、どこかの悪の入り乱れての銃撃戦も、なんだか消化不良。あげくに、タランティーノの脚本では、当初死ぬ予定だった主人公二人を「僕ちん、ハッピーエンドにしたい」希望で、急遽脚本を変更、生かすことにした。当然、タランティーノは、へそを曲げる。説得にいったのは、主役の【クリスチャン・スレーター】。監督なら、自分でいかんかい、トニー。だから、兄貴のリドリー・スコットに比べて数段格下なのだ。最後は人格の勝負だ。わけわからんか。
「獰猛な愛だけが生き残る」(宣伝コピー)。そう、生き残ってしまうのさ。死んだ方が良かったと思うがなと思う、今日この頃。



Ⅷ ブラックレイン

優作の遺作。
ハリウッド映画の二枚看板、【マイケル・ダグラス】【アンディ・ガルシア】が出演しているが、この映画は、優作の遺作。
健さん、富三郎、ロックンロール野郎、元世界チャンピオン、ホタテマンと日本の役者陣も豪華だか、この映画は、優作の遺作。
松田優作は、この映画の撮影の時点で癌に侵されていたが、病をおして撮影に臨み、映画公開直後に逝く。せめてもの救いは、公開後であったことか。この映画の撮影中の評判で、優作の次回作に【ロバート・デ・ニーロ】出演【ショーン・コネリー】監督によるオファーが来ていたそうな。デ・ニーロと優作の絡み、ショーン・コネリーの監督???。嗚呼、見たかっだぜ!残念、無念、残念。
【ブラックレイン】という題名は、今市感が残る。「アメリカが戦後日本人にもたらした個人主義が、義理人情の価値観を喪失したアウトローを産んだと暗にアメリカ人を批判し【黒い雨】という言葉を象徴的に用いた」らしい。【黒い雨】と言ったら、日本人には、原爆じゃ。訳が分からん。
この映画を最初に見た時の衝撃、「優作、その頭、どないしたん」。トレードマークのチリチリの長髪は、職人のおっさんのような短髪であった。俺は、そこに、ハリウッド映画の凄みを見た。



Ⅸ ジョン・フランケンハイマー【フレンチコネクション2】

えっ、これで終わりなの・・・。俺の映画史上、一番印象的なエンディング。
映画は、オープンとエンディングが重要であると言われている。俺が言っているだけど。よく「終わり良ければ総て良し」って言うじゃな~い。作品賞、 監督賞、 主演男優賞、 脚色賞、編集賞の5部門を受賞した傑作【フレンチコネクション】の続編。パート2は、駄作というも見本みたいな作品。上のポスターの「前作パート1を巨大な予告編として、『ドラマ』は遂にクライマックスに突入!」は、さすがに無理があるだろう。しかし、このダサいポスターは、【フレンチコネクション2】を象徴している。ジーン・ハックマンが拳銃を撃つビジュアル。これが、俺が映画史上、一番印象的なエンディングとしたシーンなのだ。最後、悪者がマルセイユの港から、船で逃げようとする。ジーン・ハックマンが、追いに追いまくっていくが、なかなか追いつけない。前作のように、また悪者に逃げられちゃうと思った矢先に、なんとかい追いつき、船にいる悪者の名前を呼び振り返った悪者を一発で仕留める。そこで映画は終わり。「えっ、これで終わり?」と思わず、思う。普通は、この後、カメラがクレーンアップして、空撮に変わり、マルセイユの港に佇むジーン・ハックマンを遠景で撮影して終わりだろうが・・・。【ジョン・フランケンハイマー】は、ある意味で、凄い。



Ⅹ ミロス・フォアマンカッコーの巣の上で

ジャック・ニコルソン】が、【ジャック・ニコルソン】になった映画。1975年アカデミー賞主演男優賞を獲得。その後、賞まみれの俳優人生を送る羽目になる。いったい、どんだけ賞を獲得したのか、本人でもわからないだろう。
原作のタイトルの由来は、マザー・グースの詩によるもの。ちなみに、【カッコーの巣】は、精神病院の蔑称。
俺は、この映画を青春のど真ん中の19歳の時に見た。その時に、衝撃は、今でも覚えている。ジャック・ニコルソンの演技も素晴らしかったが、一番の感動はラストシーンである。ネイティブ・アメリカンのチーフが、廃人となったジャック・ニコルソンを窒息死させ、重い水飲み台を持ち上げ窓を破り、精神病院から脱出する。当時、大学受験に失敗して、鬱屈していた小生は、ひとすじの光をみた気がした。俺も、チーフのように、重い水の飲み台を持ち上げ脱出したように、頑張るぜ。で、頑張ったぜ。

ちなみに、【BTTF】クリストファー・ロイドのスクリーンデビュー作でもある。