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ベストバイな廃番万年筆!1980年代製 セーラー 世界の銘木シリーズ 鉄刀木(タガヤサン

2022年11月9日

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万年筆において「過去の名品」と呼ばれているものは数ありますが、自分の掌に合う万年筆というのはそうそう見つからないものだと感じています。
 
今回はそんな数少ない「自分の掌に合う名品」に出逢ったというレポート。
 

少し前にセーラー万年筆の「世界の銘木シリーズ 鉄刀木」をレビューしました。
世界の銘木シリーズは、木軸の経年変化を感じながら セーラーの柔らかなペン先で書く文字は勉強や書くという作業を愉しくさせてくれる万年筆。
 

その記事を書いた後もしばらく銘木シリーズについて色々調べていたのですが、結果として、もしかしたら旧型の銘木シリーズがデザイン・性能共に最強なのではないか…、という考えを持つようになります。
 

同じ鉄刀木でも旧型は前回レビューしたモデルと違い、木肌の表面をラッカーでコーティングしてあるというもの。
コーティングということで経年変化の楽しみは無いものの、喫煙パイプのように艶やかで渋い表面加工も見てみたい…!
 

となったら時間を見つけて某オークションを徘徊する毎日。
 

旧モデルも鉄刀木意外に黒檀などの樹種がありますが、やはりここは杢目が面白い鉄刀木で。
また、どうやらトリムもゴールドとシルバーがあるようで、新モデルの逆を求めてシルバートリムを探します。
 

そして状態はあまり良くないものの、表面は磨けば何とかなると信じて落札。
 

ついに手元に届いた旧型の鉄刀木を手に取ってみて、新旧の違いに驚きました。
 

 
艶やかにコーティングされた杢目は、1980年代の船舶の舵やクラシックカーの内装のようなアンティークな雰囲気が漂います。(落札時から かなり頑張って磨きました)
シルバートリムの渋い輝きとの相性も良く、落ち着いた印象の万年筆。
 

言うなれば、大まかなシルエット以外は全てフルモデルチェンジされており、もう前モデルとは別物の筆記具といっていいでしょう。
 

世界の銘木シリーズは、現代の優秀なニブを実装するにあたりデザインが変わっていったものと思われますが、旧型の鉄刀木、これはこれで素晴らしい質感、操作感、書き味となっているのです。
 

それでは、旧型の「セーラー世界の銘木シリーズ 鉄刀木」を見ていきましょう。
 

 
まずは、早速、表面のディティール比較から。
手前が旧型、奥が後継モデル。
 

杢目模様がハッキリと出る鉄刀木は 筆記具の素材としても優秀ですが、表面の加工が違うだけで印象も大きく変わる面白い樹種。
 

私は非喫煙者ですが、ダンディーなご年配が使っているパイプ(喫煙具)のような磨きが入った表面は透明感があり、木軸の魅力をまた違った形で表現してくれているようです。
うーむ…、渋い!
 

 
キャップの全景比較です。
後継モデルは焦げ茶の滑らかな木肌とゴールドトリムが非常によくマッチしています。
 

旧モデルは対象的にソリッドなシルバートリムと艶やかな木肌がまた美しい。
天冠には木のボタンが埋め込まれており、外観的にも大きなデザインの違いとなっています。
 

キャップが嵌合式で大型であることと、胴軸の流線型シルエット以外はほぼ一新されているデザイン。
旧型はクリップの模様もアクセント。
 

 
何より、旧型鉄刀木を手に取ってみて私が一番驚いた点はそのサイズの違い。
後継モデルの銘木シリーズはプロフィットスタンダードより小さなサイズですが、旧モデルはプロフィット21クラスの中型サイズ。
 

重量も30g(コンバーター装着時)と重みがあり、所有満足感はプラチナの「プラチナ・プラチナ」やパイロットの「シルバーン」に匹敵します。
 

 
天冠の杢目ボタン。
コーティングが少し劣化していますが、これはこれで母校の体育館みたいな感じがして良いですね。
 

 
私が密かに「豪邸の門」と呼んでいる旧型銘木シリーズのクリップ柄。
なかなかクリップに柄が入ったモデルというのも珍しいのですが、古き良き日本の万年筆という出で立ちでエレガントです。
 

 
クリップを横から見たところ。
厚めの鋼をぐにゃりと曲げたような面白い形状のクリップです。
 

このような形もあってか挟み心地は硬く、クリップにおいてはあまり使い勝手が良いとは言えません。
まあ、そんなこともこの杢目を見れば忘れてしまうわけですが…笑
 

 
キャップリングには旧タイプの「Sailor」刻印。
このレトロなロゴがまた格好良いんです。
 

キャップリングのエッジは滑らかに磨かれていて、見るからに厚めのクロームプレートは車のパーツのような剛性感を醸し出しています。
 

 
キャップを外すと首軸の樹脂部分にナンバーが。
手元の個体は「104」ですが、どういった意味があるのかは不明です。
ううむ、製造年月でしょうか…?
 

 
世界の銘木シリーズは嵌合式キャップの万年筆ですが、パチンと音を立てて正確に嵌合する安心感がたまりません。
その秘密が嵌合部に対して太めの首軸と、このロックピンにあります。
 

厚みのあるキャップの内壁が太めの首軸をゆっくりと滑り、ピンによってカチリと嵌合する様は内部の密閉を約束してくれているよう。
 

インクを入れた状態での放置テストでは、後継モデルの鉄刀木よりもドライアップに強いという結果でした。
 

 
インク供給はカートリッジ/コンバーター両用式。
古いモデルですが現行のコンバーターも使え、豊富な色彩雫のカラーインクも楽しむことができます。
 

 
経年利用によりロジウムコーティングが半分剥がれてしまっているニブ。
 

セーラー銘木シリーズには、21金、23金、18金のペン先バリエーションがあり、23金を持ったこの個体は中期型モデルということになります。
 

かまぼこ形のハート穴、そして後継モデルとはまるで異なるフーデッドニブ。
首軸の象嵌も美しく 情報量の多いペン先です。
 

ペン先の刻印は「23K SAILOR」「4(=中字)」「JISマーク」
※JISマークは1998年に文房具への表示は廃止されています。
 

フード(首軸)をバラせば他にも刻印が出てきそうですが、分解が目的ではないのでこのままで。
 

 
左が旧型、右が後継モデル。
同じ世界の銘木シリーズでも方向性が180°変わってしまい、ニブの性能は上がったもののどこか面白みは無くなってしまったように感じる近年のペン先。
 

後述しますが、書き味は決して23金だからといって柔らかいということはなく、むしろ14金の近代ニブの方がしなりがあり柔らかな書き心地。
 

 
ペン先を横から見た比較。
 

造りもそうですが、ペン芯から出たニブの長さの違いに注目します。
これが書き味の違いに大きく関わっていると考えていて、ペン芯からはみ出たニブの長さが長いほど“しなり”が得られると思うのです。
 

 
しかし、この世界の銘木シリーズについては首軸太めのフーデッドニブというのが個人的にとても書きやすく、見た目の面白みもあって稼働率は俄然高くなります。
 

1980年代の流行ということもあるでしょうが、プラチナ・プラチナやパイロットのシルバーンやカスタム系万年筆など、自然と手元に集まってきてしまうのです。
 

 
新旧含む世界の銘木シリーズの造りが良い点は、キャップを尻軸にポストしたときにも感じることができます。
ネジやストッパー無しでもグラつくことなく尻軸に固定されるキャップ。
 
こうすることで重心はリアヘビーとなりますが、見た目が相当に格好良いです。
(強く嵌め込みすぎるとキャップ痕が付くので注意)
 

 
キャップをポストした場合の後継モデル全長比較。
プロフィット21のサイズがモデルとなっている旧型の方が全長は長くなります。
 

全体的にコンパクトにまとまっている後継モデルとどっしりと太軸な旧型。
首軸の太さも見比べて頂きたい。
 

 

ということで、旧型のセーラー世界の銘木シリーズ「鉄刀木」を詳しく見てきました。
 

続いては、ここまで使ってきた国産万年筆メーカーのお勧めモデルを、比較を交えながら見ていきたいと思います。
 

 
▲左から、プラチナ「セルロイド ミッドナイトオーシャン」、セーラー「世界の銘木シリーズ 鉄刀木(旧)」、プラチナ「プラチナ・プラチナ」、パイロット「カスタム グランディー 22KAGM」
 

これらの万年筆がたまらなく使いやすいのですよ。
 

使いやすいというのは、サイズが大きくも小さくもなく適度であること、質感・触り心地が良いこと、そしてもちろん、書きやすいこと。
 

写真の4本はこの要因が揃った万年筆と言えます。
 

他にも良い国産万年筆はありますが、一番気軽に使えて上記の条件のバランスが良いことから、自然と持ち出す機会が増えている万年筆です。
 

 
▲プラチナ セルロイドだけインク洗浄後のため文字が薄いです…
 
普段書いている字が普段通りに書ける万年筆というのが、自分に合った万年筆ということになるのでしょう。
日本語を書くために生まれてきた国産の万年筆は、文字通り日本語が書きやすくてナンボです。
 

メーカーやモデル毎にそれぞれの特徴があって本当に書いていて飽きません。
 

 
フーデッドニブの2本+貼り付けニブ1本を横から比較。
 

なんでしょう、最近こういった形のニブの万年筆を買うことが本当に多いです。
3本に共通していることが、薄いペン芯にお辞儀気味のペン先ということでしょうか。
 

ニブはしなりがありすぎるより、硬めの方が私の好みに合っているのかもしれません。
(好みというより、普段使いしやすいという点で掌に合うのかも)
 

鉄刀木(旧型)の書き味としては、タッチは柔らかいですが、厚めの23金プレートを使ってあるのか、はたまた、このニブ形状&フーデッドニブであるからか、しなりは最小でガチニブの部類に入ると思います。
 

ガチニブと行ってもスチールペン先のような硬さではなく、しっかりと筆圧を金が受け止めるソフトな紙当たりでありつつ、あくまで“しならない”ということ。
 
現在、一般的に楽しめるセーラーの書き味とはまた違った“張りのある”書き味と言えます。
同じメーカーかつ同じ名を冠するモデルの中でも、製造年代によって書き味がこれほど変化するというのも万年筆の面白いところです。
 

 
総合的に見て、大きなサイズで存在感があり、コーティングされた美しい木軸は所有満足感も満たしてくれる。正確で安心感のあるキャップ嵌合、そして、筆圧に応えるフーデッドニブの書きやすさ。
 

現行のセーラーはコシがありつつ柔らかな書き味に定評がありますが、この1980年代のセーラー銘木は張りがある書き心地といいますか、とにかく筆記・デザインともに満足感の高い万年筆です。
 

私がお勧めした4本の国産万年筆の中にお気に入りの1本があったとすれば、この世界の銘木シリーズ(旧型)もきっと手に馴染むことでしょう。
 

それでは今回はこの辺で。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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