金次郎、長期休暇中に新百合ヶ丘の名店リリエンベルグを訪問

先日のブログで都道府県名をドイツ語で直訳すると無駄にかっこいい話を紹介しました。和歌山はフリーデンスリートベルグ、岡山はヒューゲルベルグ、我が故郷の福岡はグリュックスヒューゲルということで、どうやら山はベルグ、岡はヒューゲルと訳されるようです。さて、2週間の長期休暇中には結局帰省もせず、家の近所でリタイア後を彷彿とさせるのんびり暮らしを楽しんだと前回のブログに少し書きました。そんな何の変哲も無い休暇中の特筆すべきイベントが、いただいたお菓子がとても美味しかったので念願だった1988年創業と歴史も古くウィーン菓子の名店の一つとして数えられるリリエンベルグ訪問でした。お?この響き?とお気づきの方もおられると思いますが、そう、ベルグは山です。そしてリリエンは百合ということでリリエンベルグを直訳すると百合山となりますが、どうもお店の意図としては最寄り駅である小田急線新百合ヶ丘駅にちなんだ名付けのようで、それならリリエンヒューゲルではないだろうかと微妙に細かいことが気になったりもしつつ、いざ現地へ。運動不足なので徒歩で行こうと新百合ヶ丘駅から歩き始めたのは良かったのですが、延々と続く坂道を20分歩いて疲労した金次郎夫妻にとってはまさにベルグ=山がふさわしいロケーションでした。ややオシャレではあるが普通の住宅地に突然可愛らしい外観のお店が現れはっとしますが、更に驚かされるのはその混雑ぶりです。平日の昼間というのにしっかり行列はできるわ、11台収容の駐車場は満車になっているわ、外観としっかり統一されたメルヘンな内装の店内は近所の方や遠来の方が入り乱れてごった返すわで、これは週末には絶対来てはいけないお店だなと再認識いたしました。お店の前に車の駐車場への誘導、順番待ち列の整理などに従事されている異常にフットワークが軽く親切で面倒見の良いおじいさんがいてアットホームなお店の雰囲気とフィットしているなと感心しつつ、全く日陰も無い環境ですので真夏は誰か変わってあげて欲しいと完全に余計なお世話の心配をいたしました。肝心のスイーツはというと、15種類ぐらいの生ケーキの中から焼チーズケーキ、モンブラン、タルトタタン、モーツァルト、ぶどうのショートケーキを購入しましたが、どれもシンプルなのにしっかり甘く、奇をてらわずオーソドックスな作りなのに印象に残るという評判通りの美味しさでした。天命を冠したリリエンベルグを要予約で買えなかったこととウィーン菓子店では外してはいけないザッハトルテを特別にディスプレイしてあったため見過ごしてしまったことが心残りでしたのでまたどこかで会社を休んで再訪しようと思います(笑)。生ケーキも素晴らしいのですが、更に実力を感じさせるのがバラエティに富んだ焼き菓子や小菓子の数々です。どれもこれも美味しいのですが、特に何とも表現できない食感と上品な甘さがたまらないポルボローネ、パリッとした後トロリと溶けて最後にココナッツの風味がしっかり残るココバトン、甘くて甘くてたまらなく癖になるのに後味爽やかなブールドネージュ、妻が最高の賛辞を送った季節のお菓子であるシュトーレンと完璧な内容でした。忘れちゃいけないクッキー詰め合わせがまだ1箱残っているので、これからゆっくりと味わいたいと思います。

さて本の話です。長い休暇だったので普段は着手できない長編に挑戦しようと思い、宮部みゆき先生の代表作の一つである「模倣犯」(小学館 )を読了いたしました。計1400ページの大作を読み終えるのに休暇をだいぶ消費してしまいましたが(苦笑)、90年代後半以降に頻発する劇場型、承認欲求充足型犯罪を先見的に描いている上に、三部構成の一部を犯人視点の物語に割くことで事件の背景にある動機の部分を明らかにしようとした意欲溢れる作品であり、費やした時間に見合う大変満足できる内容でした。家族を殺された少年と老人が現実を受け入れ、前を向いて進み始める過程を丁寧に描き犯罪被害者というものの存在を読者に改めて認識させつつ、安易な報道姿勢への警鐘を鳴らしつつ加害者家族の人権も意識させるという盛沢山な内容が過不足無く収まっていることに、当時の宮部先生の充実ぶりをひしひしと感じ圧倒されました。ミステリーというよりサスペンス的な内容ですが、この犯人がどのように追い込まれていくのかという最大の謎で最後まで読者をきちんと引っ張るストーリーの牽引力は申し分無く、どうしてこのタイトルになったのだろう?というモヤモヤがスッキリ解消される終盤も読みごたえ充分で間違いなくおすすめ作品です。最初に遺体(の一部)が発見される大川公園は架空とのことですが、どの公園がモデルになっているのか気になります。テレビ東京でドラマ化された際はうちの近所の隅田川テラスで撮影されていたようです。

「ホテル・ピーベリー」(近藤史恵著 双葉社)では、ある事件により心に深い傷を負った主人公が友人の薦めでハワイ島で日本人が経営する小さなホテルに3か月のロングステイを始めるところから物語がスタートします。いい感じに見えた経営者夫妻、普通の人そうな同宿者たちでしたが、物語が進むにつれあれあれちょっとこの人たちおかしいぞ、という雰囲気になり、遂に事件が起こります。単なるミステリーの枠に収まらないプロットで、嘘と謎がちりばめられたホテル・ピーベリーで明らかになる数多の事件や真実に翻弄されながらも少しずつ人生のグリップを取り戻していく主人公の変化が印象的な作品でした。

小説でない本も読んでおります。「サウジアラビア〈イスラーム世界の盟主〉の正体」(高尾賢一郎著 中央公論新社)は中東サウジの歴史と現在についてポイントがまとまった本でなかなか参考になりました。実質的な宗教国家でありながら、アメリカを中心とした国際社会との関わりを重視して〈中庸かつ寛容〉路線を採り、ムスリム同胞団やアルカイダなどの過激派とは一線を画してきたサウジのこれまでが分かり易く解説されています。その流れからすると、OPEC+でロシアと気脈を通じ、中間選挙対策に必死のバイデン大統領の原油増産要求をあっさり袖にし真逆の減産を決断したMBS皇太子が国際社会との連携をさほど重要視していないのだとすると、過激なワッハーブ原理主義に急に回帰することは無いにしても、今後どう国政の舵を取るつもりなのかいささか不安にさせられました。中東関連では、「私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか?」(鷹鳥屋明著 星海社)は積雪の中をアラブの民族衣装で走り回る動画がバズり中東で最も有名な日本人となった著者が、よく分からないアニオタスキルで王族や財閥のトップと親交を深めた事情が面白可笑しく語られる内容の本で面白いです。非常に興味深いと感じる一方、弊社の中東でのビジネスのアプローチは間違っているのではないかとの一抹の不安を感じさせられる中身にややビビります(苦笑)。

秋ドラマは城塚翡翠のイメージと清原果耶さんがどうにもしっくりきません。あと、肝心のドラマを観られていないのですが、うちの妻がずっと前から推していた目黒くんが「silent」でブレイクしていることに鼻高々です(笑)。

 


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投稿者: 金次郎

読書が趣味の50代会社員です。

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