私が、ドル高円安が進むと考える理由 

 私は、(雇用統計の後ですので、勇気がいりますが)年末に向けてドル高円安が進むと思っていますので、その理由を御説明します。 一方で、公平を期して(?)、円は、既に「歴史的な割安水準まで落ち込んでしまっている」という佐々木融さんの御見解もご紹介させて頂きます。皆様のご参考となれば幸いです。

  【私が、年末に向けてドル高円安が進むと考える理由】 1. 米国と欧州の金利が上がるが、日本の金利は上がらない 1) 米国と欧州は、コロナにより景気が悪化したので、 →政府が株を買ったり金利を下げたりして、市場に沢山お金を供給する →人々が沢山お金を使う →物が売れる →景気を回復させる という金融緩和政策を実施してきました。しかし、この政策をいつまでも続けるのは良くないので、コロナが収束し、物価が上がり、雇用が回復した後に、 →株を買い続けるものの、買う量を減らす(テーパリング。金融緩和縮小) →金利を上げる という政策を実施すると思われています。 2) ポイントとなる、①物価(消費者物価)と②雇用(失業率)の推移を米欧日で比べると、以下のとおりです。(日経ヴェリタスの数値を使いました) ① 消費者物価指数(前年比、%) ・米国:1.4(1/15)→1.7(3/14) →4.2(5/16) →5.4 (7/18) →5.4 (9/4) ・欧州:-0.3(1/15)→0.9(3/14) →1.6(5/16) →1.9 (7/18) →3.0 (9/4) ・日本:-0.9(1/15)→-0.6(3/14) →-0.1(5/16) →0.1 (7/18) →-0.2 (9/4) ② 失業率(%) ・ 米国:6.7(1/15)→6.2(3/14) →6.1(5/16) →5.9 (7/18) →5.2 (9/4) ・ 欧州:8.3(1/15)→8.1(3/14) →8.1(5/16) →7.9 (7/18) →7.6 (9/4) ・日本:2.9(1/15)→2.9(3/14) →2.6(5/16) →3.0 (7/18) →2.8 (9/4) 3) これを見ると、米国が最も順調に回復しており、次に欧州も回復していますので、米国が最初にテーパリングを行い、次に欧州が実施する、と考えるのが自然です。テーパリングの次は、金利上昇でしょう。 4) 問題は日本です。日本は、消費者物価指数が上昇していません。コロナ前から物価は下がり続けていたので、コロナから回復しても、簡単には物価が上がらないでしょう。そうすると、アメリカと欧州は、いずれ数か月以内にテーパリングを開始するものの、日本はテーパリングの目途が立たず、金利差が拡大することになります。 5)米国と欧州の金利が上がり、日本は低いまま、ということは、ドルとユーロが買われ、円が売られる要因となります。 2. 貿易収支が大きな黒字になるとは想定し難い かつては、日本は貿易収支が大幅に黒字でしたので、トヨタやソニーがアメリカで製品を販売し、ドルを貰い、そのドルを円に換える(ドル売り、円買い)取引が沢山あることが円高要因でした。しかしながら、今や貿易収支の黒字は大幅に縮小し、貿易赤字になる年もあります。 3. ユーロが堅調 何か問題が起きてドルが売られる際に、ドルとユーロの両方が売られると円が買われて円高が進むパターンがあります。しかしながら、上記のとおり、当面は、何らかの理由でドル売りがあるとしても、円よりもユーロが買われると思います。 4. 日本の政局は大きな円買い要因とならない どなたが自民党の総裁になられるとしても、物価が下がり続けている日本の状況を考えると、金融緩和を続けるしかなく、金融政策に大きな変更はないと思います。 【佐々木さんの御見解】 1. 佐々木融さんは、「弱い日本の強い円」という本の著者でいらっしゃいます。この本で、為替レートが決まる要因について、御自身の御経験も踏まえて分かりやすく解説されています。 2.佐々木さんは、物価が下がり続けるということは、その分通貨の価値が上がるはずなので、これだけ物価が下がり続けている(デフレが続いている)日本の通貨である円は、本来、価値が上がり、円高になるはずであることを御指摘されています。https://jp.reuters.com/article/column-toru-sasaki-idJPKBN2EW02C 3.10年前に100円で買えたものが、今は80円で買えるとすれば、物の値段が8割安くなったとも言えるし、円の価値が1.25倍に高くなった、とも言える、ということですね。 何にせよ、大変興味深い局面ですね。皆様のご意見も伺えれば幸いです。

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