Drop+Sennheiser HD8XX

こんにちは。今回は「Drop+Sennheiser HD 8XX」ネタです(^^;)。今年も年明けからかなり色々なモノを購入しておりますが、決して「ハズレ」ではなかったものの今年最大の「やらかし」な買い物だった「HD8XX」を今年のうちにネタとして昇華しておこう、そんな内容になっております。なお、内容については、ひとことで言うと、まあタイトルのとおりです(笑)。

■「Drop+Sennheiser HD8XX」の購入から到着までの振り返り

というわけで、改めて「Drop+Sennheiser HD8XX」について。米国の共同購入サイト「Drop(旧名称は「Massdrop」)のコラボ製品のシリーズですが、特にヘッドホンのシリーズはゼンハイザーの「HD6XX」(HD650ベース)、AKGの「K7XX」(K701&K712 Proベース)、HiFiMANの「HE-4XX」「HE-5XX」など主要ブランドのコラボ製品が相次いで登場しており、その都度話題になったりもしました。そして、今年2月にとうとうゼンハイザーのフラグシップ機である「HD800S」のコラボモデルが出る、ということで、マニア界隈は瞬間的に騒然となりました。

Drop: DROP + SENNHEISER HD 8XX HEADPHONES



ただゼンハイザーについては各国の現地法人が販売エリアを区切っていることもあり、日本国内で流通している製品との混乱を避ける意味もあって、Dropのコラボ製品はこれまでも「おま国仕様」(日本への配送NG指定)になっていました。今回の「Drop+Sennheiser HD8XX」も同様の措置により最初から「おま国」だったため、話題は一気に収束してしまいます。

Drop+Sennheiser HD8XXDrop+Sennheiser HD8XX

そんななか、(よせばいいのに)米国内の住所へいったん送り、そこから日本に転送する「転送サービス」を別途使用してこの「HD8XX」をオーダーした「もの好き」がいました。いうまでもなく、ワタシです。はい(汗
というわけで、ご丁寧に転送サービスの説明を含めてオーダー時に記事にしております。

→過去記事: 【雑記】 「Drop+Sennheiser HD8XX」をオーダーしました。(「日本への発送不可」商品の海外転送サービスの利用ほか)



2021年2月の募集開始時の価格は1,100ドルでプレセールス特典に200ドル相当のポイントが付与される特典が付いていました。つまりDropで200ドル分の買い物をすれば実質900ドルで買える換算ですね。とはいえ発送開始予定は11月とも言われており、10万円払って半年以上も「待ち」となる案件でした。それでも2月時点で日本からは私も含め数名の方が「HD8XX」を転送サービスを使用する前提で購入したようですね。
そして実際に「HD8XX」が発送されたのは9月22日頃。米国内の転送サービスの倉庫には10月5日に到着、東京へは1週間後の10月12日に届きました。関税は無税ですが実質価格の900ドルで申請していたため受取り時に消費税が5千円ほどかかりました。転送手数料とあわせて1万円ほどの追加出費ですね。


■ 「HD8XX」開封の儀、から、何故か「HD800」を格安で譲り受けるまで(笑)

Drop+Sennheiser HD8XX」は重厚なケースに入って届きますのでパッケージも相応に大きいです。ポータブルオーディオをメインに嗜んでいるとなかなかお目にかかれないサイズ感ですね(^^;)。
Drop+Sennheiser HD8XXDrop+Sennheiser HD8XX

HD8XX」の外観上の違いは「HD800S」から背面部分がダークブルーのDropカラーになっている点で、あとは付属品でバランスケーブルが付かないところ。「おま国」仕様ですが説明書は日本語の表記があります。
Drop+Sennheiser HD8XXDrop+Sennheiser HD8XX

製品内容的にはDropサイトの写真と同じで非常に格好良いです。シリアルナンバーは500番台後半でした。そして実際に聴いてみると(私は据置きアンプの「Sabaj D5」を使用。アプリケーションは「Auridvana」です)、思ったより低域が強い印象。確かに「HD8XX」は「HD800S」より低域を強化し高域を僅かに抑えたチューニングになっているとの記載でしたが、サイト記載のf値のグラフより、わりとわかりやすいチューニングを施されているような。。。
というわけでネットの評判などをみてみると、海外で「HD8XX」で受け取った主要レビュアーから阿鼻叫喚の感想が(滝汗)。いや、そこまでひどくはないよ。これも「リスニングヘッドホンとしては非常に良いバランス」だし。ん?、リスニングヘッドホン?? あれ、元の「HD800」や「HD800S」ってこういう音だっけ?
とりあえず「HD800」と「HD800S」の違いは何度か試聴してだいたいイメージできますし、個人的にはオリジナルの「HD800」のほうが好印象だったこともあり手頃な中古を物色して聴き比べてみることにしました。そこへヤンネさん(@headphone_metal)から「HD800は2台持ってるからサブ機で良ければ貸し出しますよ~」という言葉をいただき、有り難くお借りすることにしました。結局ヤンネさんのサブ機はさらなるご厚意でそのまま格安で買い取らせていただくことになりまして・・・(^^;)。そんなわけで、無事「HD8XX」との比較環境が手に入りました。(ヤンネさん、ありがとうございます^^)


■ HD800Sをイマドキのサウンド向けにチューニングしたバージョン?

なんかどんどん泥沼にはまっているような気もするのですが、改めて「HD800」と比較しながら「HD8XX」をじっくり聴いてみました。なお、その過程で別途購入したTRIPOWINのケーブルにリケーブルしてみたり、HCKで以前購入したエージングマシンをん百時間かけてみたりしています。「TRIPOWIN」のケーブルについては改めてレビューするつもりですので、今回は割愛します。またエージングについては、他のレビューでも書いてありましたが、少なくとも「HD8XX」についてはやってもやらなくてもほぼ変化はなしでした(^^;)。
Drop+Sennheiser HD8XXDrop+Sennheiser HD8XX

前述の通り、「HD8XX」は「HD800S」の低域強化バージョン、ということになっています。その方向性からも想像が付くかもしれませんが、実際に聴いた印象ではよりドンシャリ方向、というか、最近の流行りともいえる「W字カーブ」を描くような印象に僅かながらチューニングされていると感じます。つまり低域の厚みを増し、高域は聴きやすく、ボーカル帯域が主張するバランスです。

そのため「HD800」のフラットな音像描写と空間表現を基準に考えると、確かに「HD800」系統のクオリティは維持しつつ「全く別のヘッドホンに作り替えられたような印象」を持ってもおかしくないかもしれません。私個人としては「HD8XX」のサウンドは「これはこれとして十分アリ」と感じたものの、やはり「HD800」「HD800S」とは別物だと思いました。結局ヤンネさんからお借りした「HD800」を買い取り、両者を併用することにしたのもそれが理由ですね。かつて「HD6XX」がリーズナブルに買える「HD650」だったのに対して、残念ながらHD8XX」は「HD800S」が欲しい方にとっての代替機にはならないようです。

Drop+Sennheiser HD8XXということで、異なるチューニングの新しいリスニングヘッドホンとして「HD8XX」を改めて聴いてみます。全体的な見通しの良さ、明瞭さ、透明感、と音像の実在感は「HD800」シリーズの音型をしっかり受け継いでおり、遜色はありません。しかし、そのサウンドはよりポップスなどに合わせたイマドキのチューニングになっています。ロック、ポップス、アニソンなどのボーカル曲は非常に相性が良く、またEDMなどの打ち込み系の音も高い解像感と同時に発色の良い響きを持ちます。しかしクラシックを聴くと「HD800」にくらべて明らかに表現力が不足しており、1ランク下の音に感じてしまいます。同様にスタジオ録音のアコースティックなインストゥルメンタルでも、不要な低域の厚みと薄い中高域が気になります(もちろん「HD800」と比較して、です)。

高域については単独で聴く上では十分な伸びがあり、同時に聴きやすくまとめられている印象です。そのため上記のような「HD8XX」が向いているジャンルの曲を楽しむ上では不満を感じることはないでしょう。ただこちらも比較すると、元々の「HD800」のほうが「HD800S」より優れているといわれる高域について、「HD8XX」ではさらに後退したという評価になっても仕方はないかもしれません。「聴きやすい」という表現を私も最近のレビューで結構多用しますが、ある側面ではその通りの意味ではあるものの、別の側面では「別に聴きやすいのが良いとは言ってない」というニュアンスもあったりします。
いっぽうで音場の広さについては「HD8XX」は「HD800」並で「HD800S」より優れている、というレビューもあるようです。確かにこのヘッドホンを使う上での「らしさ」を最も感じる部分であり、「HD8XX」の広大で立体的な音場についても特に不満はありません。ただその音場を十分に活かせるような音源では僅かにチープな響きに感じてしまうため、得意なジャンルの曲を聴いている上ではその恩恵は限定的になるのかもしれませんね。

Drop+Sennheiser HD8XXもともと「おま国指定」で日本からは購入が基本NGで買うとしても転送サービス等の利用が必要な「HD8XX」ですが、それでも買う価値はあるか、と訊かれると、やはりかなり難しいですね。出荷から2ヶ月が経って逆に好評のレビューを挙げている海外レビュアーもいらっしゃいますが、この価格で「合う人もいる」レベルではさすがにちょっと手を出しにくいでしょう。
そして、最近ではゼンハイザージャパンが限定で「HD800S」の特価キャンペーンを打ったり、「HD8XX」自体もセール価格を打たれたりと、購入者に追い打ちをかけるネタも豊富にあったりして、ますます「買う意味全くないよねー」という雰囲気になっちゃいましたね(涙)。
というわけで、個人的には「HD8XX」は普段使いのアイテムのひとつになると思います。普段使いとは、YouTubeやNetflixの動画を見たり、Apple MusicやSpotifyで最新のヒットチャートをザッピングしたりする使い方です。本格的なリスニングでは、その半額以下で譲って頂いた中古の「HD800」が活躍することになるでしょう。半年以上待った上ではちょっと残念なオチでした(とほほ)。