TKZK Wave

こんにちは。今回は「TKZK Wave」です。中国のイヤホンブランドとしてマニアの間で割と硬派なイメージのある「TINHIFI」ですが、そのサブブランドとしてよりコンシューマー向けというか、「ちょっと緩め」な感じで作られたのが「TKZK」なのかもしれません。今回の「TKZK Wave」はこれまでTINHIFIでは使用してこなかった3Dプリンティングによるレジンシェルを採用し、1BA+1DD構成のシンプルなハイブリッド構成で30ドル台の低価格を実現しています。ローコスト構成ながらサウンドチューニングはしっかりTINHIFIらしさも感じる、ちょっと毛色の違う低価格イヤホンですね。
最近ではマニアの間で高音質なイヤホンブランドとして定着した「TINHIFI」ですが、そのブランド名称にもあるように金属製のシェルを採用し、製品デザイン、そして音作りにも「硬派」なイメージがありますね。実際同社のミニマルなデザインや平面駆動ドライバーを搭載したフラグシップのPシリーズのように派手さは無いけどこだわりの詰まった製品作りというのは、まさに同ブランドのキャラクターといえるでしょう。
TKZK WaveTKZK Wave
しかし、同時にもともと「TINHIFI」は数々のブランドの委託を受けるOEM/ODMファクトリーで、現在もその側面は健在だろうと思います。そうなると「TINHIFI」とは別のキャラクターの製品、特に低価格帯のものを販売して「本業」の裾野を広げることも考えるかもしれません。「TKZK」はあるいはそんなサブブランドなのかなぁ、とちょっと想像したりもします。
TKZK WaveTKZK Wave
「TKZK」ブランドの最初の製品である「TKZK Wave」はシンプルな1BA+1DD構成のハイブリッド構成。ダイナミックドライバーは複合振動板の二重磁気ドライバーで、まあイマドキなら10ドルイヤホンでも普通に採用している内容。バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーもカスタムされた中華ドライバーということで、従来の「TINHIFI」製品のように「ドライバーのここが凄い!!」みたいな要素は皆無です。
ただシェルには従来の「TINHIFI」では採用してこなかった3Dプリンティングによるレジンシェルを使用しており、キャラクター的な差別化を感じます(今後のODMクライアントにうちはレジンシェルも作れるよ、とアピールしてるのかも)。
TKZK WaveTKZK Wave

TKZK Wave」の購入は「HiFiGo」のオンラインショップまたはAmazonにて。
価格はHiFiGoが30ドル、Amazonが4,054円です。
※HiFiGoでは100ドル以上の購入で送料が無料になりエクスプレス便で発送します。通常はAmazonでの購入がおすすめです。
HifiGo: TKZK Wave Hybrid In Ear Monitor
Amazon.co.jp(HiFiGo): TKZK Wave


■ 3Dプリンティングによる無個性だが質の良いシェルデザイン

TKZK Wave」のパッケージは低コスト版ということもあり、パッケージもあまり凝ってないというか「ちょっと前の安い中華イヤホン」みたいな趣がありますね(^^;)。パッケージサイズとかはいちおう「TINHIFI T1 PLUS」あたりに準じているかもしれません。
TKZK WaveTKZK Wave

パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、布製ポーチ、説明書および保証書など。
TKZK WaveTKZK Wave

本体はレジン充填タイプの3Dプリントシェルです。筒状のステムノズルなども含めてちょっとだけ「AUDIOSENSE DT200」あたりをちょっと彷彿とさせますね。ダイナミックドライバーの空気抜け(ベント)は本体側面にあります。コネクタはqdcと互換性のあるタイプで付属ケーブルも含め、やはり「T1 PLUS」と共通化しているぽいですね。ただ「T1 PLUS」はプラスチック製でしたので、「TKZK Wave」のほうがイヤホン本体はかなりコストかかってる感があります。

TKZK WaveTKZK Wave

本体はKZやTFZあたりと比べるとやや小さめですが、TINHIFIのイヤホンとしては従来より大きめですね。「T5」に近いサイズ感です。ステムノズルが太いですが耳にフィットするデザインで多くの方は装着性に問題はないでしょう。
TKZK WaveTKZK Wave

付属ケーブルはTRN製イヤホンに付属する銀メッキ線のような細い線材。「T1 PLUS」のケーブルと似ていますがこちらのほうが僅かに細く、またプラグ部分も樹脂製でアルミカバーで覆っている「T1 PLUS」より安価な印象。音質面はもちろん、見た目的にもリケーブルを検討しても良いかもしれませんね。コネクタはqdc互換(CIEM極性)という、要するにKZタイプCの0.78mm版です。最近だとNF AUDIO、SIMGOTなど多くのメーカーが採用しているタイプですね。ですので、リケーブルもqdcタイプが使用できます。
イヤーピースは付属品のほか、定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustune「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light Short」などの耳にフィットするタイプのイヤーピースに交換するのもお勧めです。


■ TINHIFIらしい「低域軽め、フラット寄り弱ドンシャリ」の使いやすいイマドキのサウンド。

TKZK WaveTKZK Wave」の音質傾向はフラット方向の弱ドンシャリ。リスニング的なポイントを押さえつつ癖の無いニュートラルなサウンドに仕上げられています。いかにも「TINHIFI」な音作りという印象ですが、「TINHIFI」ブランドの現在のエントリーモデル「T1 PLUS」がベリリウムコート振動版を使ったドライバーに全振りでシェルなどはかなりチープな製品なのに対し、「TKZK Wave」は多少コストのかかる3Dプリントシェルを採用する代わりにドライバー部分のコストを下げてハイブリッド構成で補うという、同じ低価格イヤホンでも全く逆のアプローチを取っている点が興味深いですね。
ちなみに「T1 PLUS」のほうは発売前のレビュアーテスト版では今回の「TKZK Wave」に近いチューニングのバージョンもあったのですが、最終的な製品版では(おそらく海外レビュアーの意向に寄せた)中低域寄りのバランスに変更した「TINHIFIとしてはちょっと珍しいサウンド」に仕上がっています。
そのため、TINHIFI的こだわりのエントリーモデルより、別のアプローチで製品化したサブブランドの低価格イヤホンのほうが音質傾向はTINHIFIぽい、という逆転現象も起こっており、これもまた非常に興味深い状態になっています。個人的には見た目もそこそこ良くて音もいい感じ、ということであれば普通に「TKZK Wave」のほうが好印象ではあります。

TKZK WaveTKZK Wave」の高域は明瞭感のある寒色系の音を鳴らします。ハイハットの音色などもわりと綺麗です。使用しているBAユニットが中華製ということもあり透明感や伸びの良さなどを過度に期待するのは無理がありますが、中華ハイブリッド的なギラつきは抑えられており、「良い意味で中庸」な過不足の無い印象です。
中音域は癖の無いニュートラルな音で綺麗に鳴ります。KZなどのようにパキッととした輪郭ではなく自然な印象ではあるものの、思ったより粒立ちが良く個々の音像をしっかり表現してくれるのは好印象。見通しが良く音場も広めで、ボーカル帯域もやや前向きでしっかり楽しめる印象。女性ボーカルは少し線が細いものの曇ること無く伸びます。この辺の中高域の印象は「T1 PLUS」「T2 PLUS」より個人的には好感します。
低域はよく言えば過度に膨らむこと無く中高域を下支えする印象。直線的なミッドベースは量的には不足感は無く、全体としてはバランス良く鳴ります。ただ低域により中高域をマスクしないようにチューニングしているためやや淡泊に感じる印象は先日レビューした「T2 EVO」などにも見られる傾向で、低域、特に重低音の質感を気にする方には物足りなさを感じるかもしません。当たり障りの無い印象で「いかにも中庸」ではあるのですが、同社の上位モデルの実力を考えるとチューニングアプローチについてはもう少し対応出来る余地があるのかも、という気がします。

ロック、ポップス、アニソンなど一般的なボーカル曲、特にストリーミングでの気軽なリスニングに最適で、特に最近の海外でのやたら低音の響きを強めたり歪ませたりするアプローチで耳が痛くなりがちな方には結構ちょうど良い聴きやすさだと思います。イマドキのサウンドには非常に相性が良いです。
というわけで、ちょっといい感じの外観と質感で、使いやすいお手頃イヤホンを探している方には最適です。最近の「BLON」あたりイヤホンのように「激しくキャラ立ちしてる」イヤホンも楽しいですが、「使いやすさ」のなかには、上質ぽいけど目立たない、という事も含まれるかもしれません。そのような場合は「TKZK Wave」は最適なイヤホンでしょう。
逆に、個性的な低価格中華イヤホンを探している方、ここにしか無い音が欲しいと思っている方には「TKZK Wave」にはそういう要素は皆無ですので他をあたるべきでしょう。むしろ最近のKZのESTらしきドライバーを積んだイヤホンのほうが変態度やレア度は高いと思います。
TKZK Waveもともと「TINHIFI」のイヤホンはロゴを主張しないというか、どこのブランドかよーわかん金属削り出しの無個性感がデザイン的なポイントでした。「TKZK Wave」はこの無個性感を見た目でもサウンドでも実現したアイテムだと思います。3Dプリントのシェルは決してチープではありませんが全くの無個性で、サウンドもハズレ要素は無いけども特筆すべきポイントはありません。しかしプラッキーな低価格イヤホンとは違うアイテムを手頃な価格で使いたい、とか、それなりに心地よいサウンドを楽しみたいがブランドを主張したくない、というニーズには最適でしょう。個人的にはいかにも安価な付属ケーブルのかわりに「KZ AS09」や「KZ AS09 Pro」といったTWSアダプタを使用して、ちょっと人とは違うワイヤレスイヤホンを演出してみる使い方がおすすめ。コネクタも合いますし音質的にも結構いい感じで使えますよ(^^)。