健康な犬で首を傾けるしぐさはかわいく見えますが、
病気でも首を傾ける症状を見ることがあります。


病気では耳に疾患がある場合や神経に障害がある場合が多いですが、
老犬でしばしばみられる病気に前庭疾患があります。
前庭疾患はあらゆる年齢で発症しますが、
特に高齢になると発症が多くなってきます。

前庭は内耳の一部の平衡感覚を司る器官であり、
異常を起こすとめまいや歩行困難などを生じます。


主な症状として、
頭の位置の傾斜(斜頸)、一方向への旋回運動、
ふらつき、横臥、歩行困難、開脚姿勢、嘔吐、
眼球の小刻みな動き(眼振)などがあります。
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(画像の犬は支えがないと立っていることができませんでした。)

前庭疾患の原因は様々で、
耳の疾患、鼓膜の損傷、外傷、薬物の影響などがありますが、
老犬に見られる前庭疾患の大部分は、
特発性前庭疾患とも呼ばれます。
特発性が示すように、そのほとんどは明確な原因が分からません。

老犬の特発性前庭疾患は兆候なく突然発症し、
数日以内に症状の改善がみられます。
症状が軽ければ、特に治療を必要としませんが、
症状の程度により治療や入院が必要になりますし、
嘔吐や水分摂取ができなければ、点滴などが必要になります。
症状の改善がない場合は、他の疾患を疑う必要があります。
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初期の段階では
頭部の傾斜や眼振、運動失調などで、身体を保持することができない、
転倒する、動き回るなど、症状の程度に応じて
床敷きや周囲の保護材の使用をしたり、
飼育環境の考慮や体位の変換など看護が必要になります。