税金のはなしやお仕事のはなしなど

フェラーリやモーターボートは経費として認められるのか?

WRITER
 
スポンサードリンク

 

はじめに

スポンサードリンク

 

はじめに

この記事を書いている人 - WRITER -

今回はスポーツカーやモーターボートが経費になるかどうかが争われた裁決(平成7年10月12日裁決)のご紹介となります。

もちろんこの事例をもって、経費になる、ならない、と一律に判断できるわけではありません。

一方で、その判断の理由を知ることで実務にも活かせる部分があるのではないかと感じます。

 

調査官でなくともスポーツカーやモーターボートと聞くだけで、趣味のようなイメージを連想してしまいがちですが・・・。

 

どんな内容だったのか

この裁決ではいくつか論点がありましたが、以下に絞ってみていきたいと思います。

  • 福利厚生費や接待目的で購入したモーターボートが経費になるか
  • 通勤や移動目的で購入したフェラーリが経費になるか

 

どのように判断されたのか

結論としては、フェラーリは経費になると認められ、モーターボートは経費にならないと判断されたわけですが、どのような形で結論が導かれたのか見ていきたいと思います。

 

モーターボート

国税不服審判所の判断は以下のとおりです。

 請求人は、本件船舶は、請求人の取引金融機関上層部の接待や従業員の福利厚生の一環として利用するなど、請求人の事業の用に供している資産である旨主張するので以下検討する。
請求人は、接待用や福利厚生目的での利用と主張したわけですが、
 以上の事実に基づいて判断すると、次のとおりである。
 本件船舶は、上記(イ)のCのとおり燃料を給油した事実は認められるが、上記(ロ)のA及びBのとおり船員法上航海日誌の記録の義務はなく、請求人も本件船舶を運航した実績を記録していないことが認められ、当審判所の調査に当たっても、いつ、だれを、どのような目的で乗船させ運航したかの説明はないので、本件船舶を請求人の事業の用に供したかどうかを確認することはできない。
 そして、請求人は、従業員の福利厚生の一環としても本件船舶を使用した旨主張するが、上記(ロ)のCのとおり本件船舶を福利厚生の一環として使用した実績を記録しておらず、また、従業員の福利厚生のための資産としての本件船舶の利用規定等の定めもないことが認められる。
このようなことからみると、本件船舶が従業員の福利厚生のための資産として、全従業員が公平に使用できる状況にあるとは認められず、また、従業員の福利厚生の一環として使用された事実も確認することはできないので、本件船舶が福利厚生の一環として使用されたとは認められない。
 なお、上記(イ)のDのとおり、本件船舶を請求人の事業の用以外の用に供した場合の使用料を請求人の収益に計上している事実も認められない。
 以上のとおり、請求人は、本件船舶を取引金融機関上層部の接待や従業員の福利厚生の一環として使用したとする主張を認めるに足りる証拠を提出せず、また、当審判所の調査その他当審判所に提出された証拠資料等をもってしてもこれを認めることはできないから、本件船舶が請求人の事業の用に供されたものと認めることはできない。

実際には接待や福利厚生目的で使ったと認められるような証拠がなく、事業で使っていると認めてもらえなかったということですね。

当然、モーターボートの減価償却費は経費に計上できませんし、そもそものモーターボートの取得価額は役員賞与として判断されてしまいました。

 

フェラーリ

次は、フェラーリの方を見ていきましょう。

 請求人は、本件車両は、■■■■の通勤及び出張する際の交通手段として使用するなど、請求人の事業の用に供している資産である旨主張するので検討したところ、次のとおりである。

請求人は、通勤や出張などの交通手段で使っていると主張したわけですが、

 以上の事実に基づいて判断すると、次のとおりである。
 請求人は、本件車両を■■■■の通勤及び支店を巡回指導する際の交通手段として使用するなど請求人の事業の用に供している旨主張する。上記(イ)のD及びEのとおり、本件車両の車検記録を調査したところ、本件車両を取得してから3年間に7,598キロメートル走行していることが認められ、また、■■■■に対する旅費及び通勤手当の支給状況をみると交通費及び通勤手当は支給されておらず、本件車両を請求人の事業の用に使用したものと推認することができる。
 原処分庁は、本件車両は事業の用に供された実績が明らかでなく、イタリア製の高級スポーツカーで一般社会常識から見ても個人的趣味の範囲内のものであり、同族会社ゆえにできる行為であると主張する。しかしながら、上記(イ)のA及び(ロ)のBのとおり本件車両が、主として使用する■■■■の個人的趣味によって選定された外国製のスポーツカータイプの乗用車であるとしても、前記のとおり現実に請求人の事業の用に使用されていることが推認できる以上は、原処分庁の主張を採用することはできない。
 以上のとおり、本件車両は、請求人の事業の用に供されたことが推認できること、また、■■■が請求人とは別に外国製の車両3台を個人的に所有しており、請求人の減価償却資産とはしていないことを併せ考えると、請求人が本件車両を請求人の資産として計上していることを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件車両を■■■個人の資産として本件車両に係る減価償却費及び本件車両の取得に係る消費税額に相当する租税公課を、請求人の所得の金額の計算上損金の額から減算した原処分並びに本件車両の取得費及び本件車両の取得に係る消費税に相当する金員を、■■■に対する賞与と認定した原処分はいずれも取り消すのが相当である。

審判所もフェラーリは個人的趣味ですよねと言及しているものの、それでも、実際に事業で使っていると推認される以上は、これを賞与としたのは取り消すのが相当としています。

なお、個人で外車を3台所有しているという部分も判断の一つだったのでしょうね。

 



まとめ

法令解釈が争われたのではなく、事業で使われていたかどうかの事実認定の問題だったということ。

このため、前提が異なるどのような方の事例でも当てはまるというわけでもありませんので、その辺りは注意の必要があります。

一方で、実際に事業で使っているということを客観的に示す根拠を残すということの重要性を再認識させられる事例でもありますね。

もちろん、事業で使っているという大前提があってのことですが・・・。

 

今回の記事のあとがき

請求人の主張でも個人的趣味があったとしており、さらには、審判所側も個人的趣味だよねというような部分がでてきてましたが、それでも、事業で使っているんだから・・・という流れはとても印象に残りました。

 

この記事を書いている人 - WRITER -
スポンサードリンク

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© ひよこの税雑談 , 2024 All Rights Reserved.