マイルスのペイパームーン(ディグ)が好きな人

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先日アップした動画「選ぶの大変!マイルス・デイヴィス・好きなアルバム」(こちら)にいただいたコメントへのアンサー動画をアップしました。

『ディグ』の《イッツ・オンリー・ア・ペイパームーン》、いいですよね~。

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コメント

TAKESI0506 さんからのコメント。

①ウォーキン
②マイルス&モダン・ジャズ・ジャイアンツ
③カインド・オブ・ブルー
④エズセティック
⑤プラグドニッケルのマイルス

私のマイルスベスト・ファイブはこのようになります。
トップの「ウォーキン」は、私がジャズを聞き始めた頃から、これほどの大名盤でありながら「バグス・グルーヴ」や「カインド・オブ・ブルー」「ラウンド・ミッドナイト」などに比べて語られる機会がとても少ないような気がして、判官びいきの意味もあって一位にしました。「エズセティック」をランクに入れるのは多分私だけでしょう😅

鍵谷さんは、75年のスイングジャーナルに「我が独断的名盤選」というのを連載していて、マイルスに関してはこのように書いてました。

『数多いマイルス・デイビスのレコードの中から、名盤、愛聴盤、愛着盤を選ぶということは、至難の一語につきる。これだけ楽歴の長い人であってみれば、その事実とレコード枚数だけで頭がピサの斜塔のように傾き、考えこみ、思いなやむ。それとこの人には駄作、凡作がないということだ。その点ではコルトレーンと並んでまったく稀有なことである。思いきっていってしまえば、この人がいるから、ぼくはジャズとつき合っている、といえそうなところが多々ある。
 人によって好き嫌い、評価の別がマイルスほどはっきりするミュージシャンも珍らしい。「ウォーキン」「リラクシン」「スティーミン」「クッキン」にすべては尽きるという人もあれば、いやギル・エバンスと組んだ「スケッチ・オブ・スペイン」だ、そうじゃない「カインド・オブ・ブルー」一作でよい……。議論は議論を呼び、とどまるところがない。
 だがこの「我が独断的名盤選」のタイトルに沿って、ギリギリの選定をするとなると超Aクラスの中からぼくは次の7作を選ぶ。つまり「イン・ア・サイレント・ウェイ」「ビッチェズ・ブリュー」「オン・ザ・コーナー」「ビッグ・ファン」「ゲット・アップ・ウィズ・イット」「アガルタ」「パンゲア」である。マイルスが電気音を導入してからの今日に至る作品であって、かつてはプレイヤーシッブとして一流の存在であった彼が、プレイヤー=ディレクター=コンダクターというミュージシャンシップを着々と獲得してきた、その旺盛な音楽消化力に多大の畏敬の念をもつからである。
 マイルスの音楽というのは、ぼくを過去にふり返えらせない、つまりいつもこれから生れてくるであろう未来の音を大量に期待させるという点で、いまやメイジャー・アーティストの風貌を備えている。だから多言をこの人に対しては要しないのだ。すばらしい音楽が、ここにある。あなたはそれを聴くことだ!』

『エズセティックス』。
以外なところから攻めてきましたね~。

普段はリー・コニッツのことが好きだと公言していながら、このアルバムの存在をほとんど忘れていた私は、アホですね。

しかし、じつにシブい。
「通!」って感じがします。

「通」といえば、私がこのアルバムを知ったのは、おそらくはこのアルバムの中身を実際に鑑賞する10年以上も前のことでした(たぶん)。

それは、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』の前半を読んでいるときのこと。
うろ覚えではあるんですが、たしかオカマかホモのジャズ喫茶のマスターが「マイルスとコニッツが共演している珍しいアルバムがあるよ」というような話をするんですよ。

当時、高校生だった私は、ジャズの知識は皆無だったものの、なんとはなしにマイルスの名前は知っていました。それこそ「クラシックで偉い人はカラヤン」ぐらいなレベルで。

そのジャズで有名なマイルスという人が、名前がなんだかカッコよさげな人(=コニッツ)と共演していて、しかも珍しいレコードだということが小説のストーリーそのものとはまったく関係ないところで頭に残りました。

それ以降は『コインロッカー・ベイビーズ』のマイルス&コニッツのことはほとんど忘れてしまい、ジャズを聴き始めてしばらく立ってから、この『エズセティックス』の存在を知りました。

『クールの誕生』でもマイルスとコニッツは共演しているのですが、CDショップ店頭で『エズセティックス』のパーソネルを見たとき、「おっ、これだ!」と『コインロッカー・ベイビーズ』のことを思い出しました。

最初に聴いたときの印象は「なんだか地味だなぁ」でした。
そう感じたのは、おそらくエリック・ドルフィーが参加したジョージ・ラッセルの『エズセティックス』を先に聴いていたからだと思います。

しかし、ビリー・バウワーのギターや、テディ・チャールズのヴィブラフォンが、このアルバムに興味を持つ橋渡し役になってくれて、このアルバムに少しずつ親近感を抱くようになりました。

それにやっぱりコニッツの音色が良いんですよ。
マイルスの音色との相性が素晴らしく良いと感じました。

とはいえ、このアルバムは、すべての曲がマイルスとコニッツは共演しているわけでもないし、たしかテディ・チャールズ名義のセッションも含まれていたはず。

がっつりと2人の共演盤というわけでもないんですね。
それでも不思議な味わいがある。

そんなことを長らく忘れかけていた記憶がTAKESI0506さんのコメントを読みながら氷解していきました。

いやぁ、そんな(私の中では)地味アルバムが「マイルス・ベスト5枚」にランクインするとは、TAKESIさんはそうとうな通ですね。

それにしても、鍵谷先生セレクトはすべてエレクトリック・マイルスとは!

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