司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。元会社員。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

ご冗談でしょう、ランニングマンさん【追記】

※この記事は前回の記事の追記です。

走りたくなった?(^ω^)

ならないよ

なんで?なんでなんでなんで?

えー
筋トレしてるからいいじゃん

有酸素運動してよ…

えー
チャリ通してるからいいじゃん

地に足をつけてよ…

なんで?なんでなんでなんで?

 

 前回に引き続き、実際に友人と交わした会話の再現です。

 なんとなく走りたくならないという気持ちもわかります。年代によるのかもしれませんが、私の場合、小学校のクラブ活動でも、中高の部活動でも、「走らされる」というのは懲罰でした。私も高校時代、部活動の顧問の先生から、縄跳びで「50回連続の二重跳び」に失敗した懲罰として10km走らされたのがトラウマです。

 前回の記事を読んでも走りたくならなかった方のために、走りたくなるような本をまだまだ紹介します。

 

目次

 

どれくらい走ればいいのか?

 その前に、前回の記事の末尾に書いた「どれくらい走ればいいのか?」という問いに答えます。

 前回紹介した3冊は、すべて医学博士の書いた本でした。私は、科学とは「批判可能性を持つもの」だと捉えています。科学であるためには、厳密に前提条件やら再現可能性やらを詳しく書く必要があるため、科学「的」な本のようにズバリと結論を書いてはくれません。

 というわけで、メンタリストDaiGo氏に登場してもらいましょう(すみません)。彼は『超効率勉強法』(学研プラス)のなかで、ズバリこう書いてくれています。

 過去14件の研究をまとめた質が高いデータによれば、海馬を増やすための運動ガイドラインはこのようになります。

1. 軽い運動の場合:1回40分のウォーキングを週に3回、最大心拍数の50〜60%ぐらいで6〜12か月続ける

2. 負荷が高い運動の場合:1回30分〜60分のジョギングまたはサイクリングを週3回、最大心拍数の80%ぐらいで3〜6か月続ける

 ただ、先日、メンタリストDaiGo氏が信者向けのビジネスを しれっと再開したことに対して、「彼の言うことはもう信じられない」と思ってしまった方も多いと思います。

 そんな方のために、ピンポイントでの引用となってしまいますが、『脳を最適化するブレインフィットネス完全ガイド』(CCCメディアハウス)という本にも同様の記載があるので、こちらも紹介しておきます。

Chapter3 健全な脳は、健全な身体に宿る

どんな種類のエクササイズを、どの程度やるか?

(略)量や頻度で言えば、30〜60分のエクササイズを最低週3回行うと良いだろう。

 この本は、見た目のうさんくささとは裏腹に、運動・食事・睡眠・瞑想といった観点から「脳を鍛える(=ブレインフィットネス)」方法を真面目に紹介している本です。今回は深掘りしませんが、またいつか詳しく紹介できればいいな〜とは思っています。

どれくらい走らなければいけないのか?

 ここまでの記載内容によって、「そんなに週に何回も運動したくないよ〜」ってことで、走る意欲を削いでしまったかもしれません。安心してください。前回の記事で紹介した本のなかには、「少しでも走れば効果がある」という例も紹介されています。

 まず、『脳を鍛えるには運動しかない』では、最大心拍数60〜70%でランニングマシーンを使った場合に認識の柔軟性が高まる、という事例を紹介しています。認識の柔軟性とは、連想力や発想力のようなものです。

 次に、『一流の頭脳』では、9歳児が20分間の運動をした場合に読解力が向上する、という事例を紹介しています。この事例が紹介されているチャプターの見出しは「たった一度の運度でいい」です。やさしいですね。

 たった一度でいいんです。どうでしょう、そろそろ走りたくなってきましたか?

f:id:article23:20211015212611j:plain

(Pixabayからのイメージ画像)

なぜ走らなければならないのか?

 そもそも、私たちはなぜ走らなければならないのか? 次はそんな視点から、走りたくなるような本を紹介して行きます。

 前回紹介した『脳を鍛えるには運動しかない』の著者であるジョン・J・レイティ博士は、共著で『Go Wild』(NHK出版)という本も出しています。

 前回の記事で私は、進化論的な視点から「なぜ走ることで記憶力が高まるのか?」という説明をしてみました。この本では、それをさらに突き詰めて、食事や睡眠や瞑想といった観点も含めて、私たちが最も高いパフォーマンスを発揮できる方法を多角的に解説しています。

 あまりにテーマが広範なのでまとめにくいですが、その方法をあえて一言でまとめるのであれば、「Go Wild」すなわち「野生的なライフスタイルを取り戻すこと」です。そうだとすると、走るとしても「野生的に走ること」が望ましいと考えられます。というわけで、この本では大自然の中を走る「トレイルラン」を推奨しています。

 この進化論的な考察をさらに突き詰めるどうなるか? 実際に「Go Wild」な生活をしている人々を取材した本が、『Go Wild』のなかでも紹介されている『Born to Run 走るために生まれてきた』(NHK出版)です。

 この本は先の2冊とは著者も違いますし、内容も全然違います。それにしても『脳を鍛えるには運動しかない!』→『野生の体を取り戻せ!』→『走るために生まれてきた!』と、どんどん主張が先鋭的になってきました。

 この本では、3つの旅の物語が複合的に進行して行きます。

 1つ目は、メキシコの山岳地帯に生活していると言われるタラウマラ族を探す旅。タラウマラ族は、2日日で700km(東京〜広島)を走破すると言われている、最強の“走る民族”です。物語はタラウマラ族の消息を知ると噂される「カバーヨ・ブランコ」なる謎の人物を探す場面から始まります。

 2つ目は、著者自身の「走ると足が痛くなる」という悩みを解決するために、様々な専門家のもとを訪れて、その謎を科学的に解明するための旅。この旅の過程で「人間は走るために生まれてきた」という著者の仮説に対する考察が深まって行きます。

 そして3つ目は、(どこまで踏み込んで言っていいのか微妙ですが…)著者がアメリカから最強のウルトラランナーを引き連れて、メキシコの秘境に乗り込んで行って………という旅。この部分がクライマックスで、最もエキサイティングです。

 なかなかにページ数が多い本なので、あまり試験直前に さくっと読める本ではありません。しかし、物語風のルポタージュなので、気分転換にはなるかもしれません。今まで紹介してきた本のなかでも、「走りたくなる度数」は最も高いと思います。今回の記事は、この本を紹介したくて書きました。

なぜ「走る」でなければならないのか?

 私たちは走るために生まれてきたーーこれだけで冒頭のシロクマの質問に対する答えとして十分な気もしますが、もう少しだけ踏み込んで話をします。

 これまで紹介した本の中では「運動」と言う言葉としか記載されていないものを、私はあえて「ランニング」や「走る」という言葉で記載してきました。私がランニングにこだわっているのには理由があります。

 その理由とは、骨です。

 まず、山中伸弥教授がMCを務めたNHKスペシャル「シリーズ人体」を覚えていますか? このシリーズでは、従来の「脳が身体を支配する」という一方向のモデルではなく、新たに「身体から脳に対してもメッセージを送っている」という双方向のモデルが提示されました。

 例えば、脂肪はただの備蓄品ではなく、「満腹だよ!」というメッセージを脳に送る機能を持っています。そのため、生まれつき脂肪がつかない病気(脂肪萎縮症)にかかってしまった子どもは、脂肪から脳に対して「満腹だよ!」というメッセージを送ることができず、親が静止しないかぎり、際限なく食べ続けてしまうことがあります。

 では、骨からはどんなメッセージが送られているのか? 本も出版されていますが、NHK健康チャンネルにもダイジェスト記事が残っていました。

www.nhk.or.jp

 メッセージ形式で書くのであれば「若さを保て!」でしょうか。骨に対して適度な衝撃を与えて、適度に骨が壊されることによって、新たな骨が作られ続けます。その際に骨から出されるメッセージ物質によって、記憶力を高めることができると考えられています。

 このような理由から、私は「筋トレ」や「自転車」よりも、記憶力向上のための運動として「走る」ことが適していると考えています。

走ると最終的にどうなるのか?

 前回の記事の冒頭で村上春樹の話から始めたので、最後も村上春樹の話で終えたいと思います。彼は『やがて哀しき外国語』(講談社)というエッセイ本のなかで、こんなことを書いています。

 長距離を走る人間には退屈で凡庸な人間が多いと言う説がある。僕自身も長距離を走るわけだが、この説にはかなり信憑性があるように思う。たとえばランニングの専門誌の投書欄なんかを読んでいると、確かにこりゃ退屈だなとつくづく感心させられることがある。世の中には数々の専門誌があるけれど、こと文章的退屈さに関してはランニング雑誌はかなりいい線をいっていると思う。歯科技工士の専門誌だって文章的にはもう少しカラフルではあるまいか。

 かなり辛辣ですよね。

 もし私の文章が退屈だと感じられている場合、私が長距離ランナーであることが原因です。反対に、私の文章が退屈だと感じられていない場合、私の走り込みが足りない証拠です。

 みなさんも長距離ランナーになって「あ〜あ、退屈で凡庸な人間になっちまったな〜」と言ってみたくありませんか?

余事記載

 さて、これでキレイに(?)終われるかと思いきや、前回の記事の末尾で、私が「どれだけ走ったのか?」を書く、と予告してしまっておりました。完全に余事記載。けどきちんと書いておきます。

 スマートウォッチなるハイテク機器のGPS機能を使わず、スマホのメモ帳に完走時間をメモしていただけなので、距離については正確ではありません。

  • 集計期間: 2019年12月2日〜2021年5月10日(525日)
  • 走った日数: 156日
  • 1回に走った距離: 約5km
  • 期間内に走った距離: 約780km

 地球1周分くらいは走ったかな〜なんて思って集計を始めましたが、実際には東京〜札幌間(約830km)にも及びませんでした。タラウマラ族2日分。恥ずかしい…

 3.37日に1回、走っていたようです。3日に1回は走ろうと決めていましたから、片頭痛で寝込んでいた日数を考慮すると、こちらはまあ予測通りでした。

 ちなみに司法試験までの期間で集計してみましたが、現在も北大構内を元気よく走っています。もし見かけたらぜひお声がけください!