皮膚科の豆知識ブログ

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ステロイドと保湿剤を混合したらどうなる(抗炎症効果)

ステロイド外用薬と保湿剤を併用することで、症状をより改善することができる可能性があります。

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そこでステロイド外用薬と保湿剤を混合することがあります。

 

しかし混合して薄まった場合も効果は維持されるのでしょうか。

今回は抗炎症効果について考えてみます。

論文を見てみましょう。

臨床医薬. 6(8): 1671, 1990 (NAID: 80005425992)

 

アンテベート軟膏をワセリンで2~128倍に希釈して、抗炎症効果の指標である血管収縮能の試験が行われました。

具体的には健常人20人の背部にそれぞれの希釈の外用薬を塗布し、血管収縮反応(血管収縮で皮膚が蒼白になる現象)の陽性率が調べられています。

 

以下のように16倍希釈までは大きな変化はありませんが、32倍以上で陽性率が低下してくるようです。

【血管収縮反応陽性率】

・希釈なし:95%
・2倍希釈:90%
・4倍希釈:90%
・8倍希釈:95%
・16倍希釈:85%
・32倍希釈:30%
・64倍希釈:0%
・128倍希釈:0%

 

つまりステロイドを混合して2倍に希釈しても臨床効果は低下しないと考えられます。

 

この理由は外用薬中のステロイドは「飽和状態」で、ほとんどが結晶化していることにあります。

飽和水溶液に水を加えても濃度が変わらない(溶け残っている結晶が溶解する)のと同じ理屈で、ステロイド外用薬を希釈してもステロイドの濃度は変わりません。

 

逆に言えばステロイドを希釈しても副作用は減りません。

「副作用がないように薄めたステロイド」という言葉を聞くことがありますが、希釈にそのような効果はないことに注意が必要です。

 

それではステロイドと保湿剤を混合した場合、保湿効果についてはどうなのでしょうか。次の記事で解説します。

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