合唱曲「空駆ける天馬」の歌詞の意味を深く考察!〜方角の謎と、天馬の疾走感〜
この記事は移転しました。約2秒後に新記事へ移動します。移動しない場合はココをクリックしてください。
こんにちは!
合唱コンクールや卒業式で「空駆ける天馬」を歌うことになった生徒さんや、それを指導する先生方。
そんな風に感じていませんか?
私は中学校の国語科教員として、合唱コンクールでその年に歌う曲の歌詞について、授業の中で生徒と一緒に考えてきました。
なんとなくのイメージで歌うのと、歌や作詞者の背景を知ったり、一つ一つの言葉の深い意味を検討したりした後に歌うのとでは、気持ちの込め方も全く違うものになります。
ぜひ、「空駆ける天馬」の歌詞に込められた深い意味を知って、想いのこもった歌声を響かせましょう!
基本情報と歌詞のポイント
合唱曲「空駆ける天馬」は中学校の合唱コンクールで歌われることが多い人気の曲です。空駆ける天馬 - Wikipediaによると1978年に館蓬莱さん作詞・黒澤吉徳さん作曲で作られた、混声3部の合唱曲です。
秋の星座であるペガスス座の天馬(ペガサス)をモチーフにした、疾走感のある曲調が人気となっています。
今回は、
■アンドロメダを西南に スワンの星座を東南の の謎
■どのように気持ちを込めて歌えば良いのか?
について、それぞれ見ていきましょう。
目次
それぞれの歌詞の意味をチェック
銀の翼を 光らせて
秋の夜空を 駆けてゆく天馬
雲の峰突き抜けて 真北に向かう
ごらん 駿馬の 駆けてゆく
白銀の道を
風さえのけぞる 静まりかえる
銀の翼を 光らせて
秋の夜空を 駆けてゆく天馬
地の声を 携えて
天の声を 訪ねに
アンドロメダを西南に
スワンの星座を東南の
遥か彼方をあとにして
銀のたてがみ 光らせて
秋の夜空を 駆けてゆく天馬
まずは、少し難しい言葉などの意味を確認しておきましょう。
「雲の峰」→雲が山の峰のようにそそり経っている様子。(実は夏の季語)
「真北に向かう」→ペガスス座の星座絵を見ると、頭は南に向かっているのですが、これについては後述します。
「駿馬」→とても速い馬のこと。ここでは天馬のこと。
「白銀の道」→星空の道、恐らく天の川のことだと考えられます。
「風さえのけぞる」→風さえも驚いて避けるほど、速い天馬の様子。
「静まりかえる」→天馬が速すぎて、通った後には静寂だけが残るイメージ。
「携えて」→「携帯する」の「携」で、身につける。「地」からの手紙を持って、 「天」に届けるという伝令の役割を果たしていると言えます。
「遥か彼方をあとにして」→「あとにする」とは「家をあとにする」や「故郷をあとにする」のように「出発」という意味で使います。その出発点が「遥か彼方」と表現されることで、天馬のスピード感が表れています。
全体的に秋の星空を天馬がとても速く駆け抜けていく様子が表現されており、そういう意味では極めてわかりやすい歌詞です。
謎が残るサビ「アンドロメダを西南に スワンの星座を東南の」
全体像としては分かりやすい、この歌ですが、サビである「アンドロメダを西南に スワンの星座を東南の」の解釈に謎が残ります。
「ペガスス座」「アンドロメダ座」「白鳥座(スワン)」はそれぞれ秋の星座であり、とても近くに位置しています。
ですが、ペガスス座からみるとアンドロメダ座は西南ではなく、真逆の北東、白鳥座も東南ではなく、真逆の北西にあります。これはどういうことでしょう?
歌詞をそのまま捉えるなら、天馬がアンドロメダ座を西南、白鳥座を東南に見ながら駆け抜けていく表現としか考えられませんが、この方角の不一致はなぜなのでしょう?
恐らく、作詞者である館蓬莱さんのイメージにあったのは、全天図のような正確な方位関係では無かったのだと考えられます。地上から出発した天馬が「真北に向かう」と天を目指しているところからも、地上から見た「上(空)」を「北」と捉えていたのではないでしょうか。それは、ペガスス座の頭の向きが、実際は南を向いているところからも言えると思います。
そうであれば、どちらも上空(北)へと駆ける天馬が下(南)へと「アンドロメダ」と「スワン」を置き去りにしていくと見えますし、東と西の位置関係も、向いている空の方角によってはそう見えるでしょう。
他にもいくつか解釈の可能性を考えてみましたが、恐らくはこれが一番自然かと思います。
天馬とアンドロメダの意外な関係
それぞれの星座のもとになったペガサスとアンドロメダには、ギリシャ神話上で意外なつながりがあります。
そもそも「アンドロメダ」とはギリシア神話に出てくる「アンドロメダ姫」のことです。ギリシャ神話にアンドロメダが出てくるのは、
これに怒った海の神ポセイドンはお化けクジラにエチオピアを襲わせ、クジラを鎮めるためにはアンドロメダ姫を生け贄として差し出さすように告げます。泣く泣くカシオペアは娘を生け贄として海岸に縛りつけます。
お化けクジラがアンドロメダに襲いかかろうとしたその瞬間、天馬に乗った英雄ペルセウスがメデューサの首を使い、お化けクジラを石に変えて、アンドロメダを助け出します・・・
というお話です。ここで、天馬とアンドロメダがお話の中でもつながるのが面白いと思います。
ちなみにスワンの星座(白鳥座)は、無理やりつなげるとすれば、この英雄ペルセウスの父であるゼウスが、別の女性に近づくために変身した姿が元だといわれています。
まあ、この歌詞の中では単純に位置関係から歌われているだけと考えられますが、そんなストーリーも知っておくと、想像が豊かになると思います。
どんな風に歌う?
この歌詞はシンプルで、すべては天馬の速さを表現するために費やされていると言ってよいと思います。
大地の神からのメッセージを預かったペガサスが、ものすごい速さで地上から天へと駆けあがっていく情景を思い浮かべながら、そのスピード感を表現できると良いですね。
授業での主な発問
①天馬の速さが分かる表現はいくつありますか?
ここまでに書いてきたように、「駿馬」「風さえのけぞる」「遥か彼方をあとにして」などに注目させる発問です。
②天馬はなんのために駆けているのですか?
「地」の声を届ける伝令役だということに気づかせる発問です。
③どんな情景が思い浮かびますか?(絵に描いてみましょう)
この歌詞はストーリー性などよりも情景が大事になってきます。絵に表す時間があれば、そのような活動も入れてみたいですね。
最後に
■音楽の授業は時数が少ないので、歌詞の意味までじっくりと扱うのは難しいと思いますが、先生が捉えた情景だけでも伝えてあげると歌声も変わると思います。※このページをそのままコピーして配布していただいても構いません。
「国語」の授業でも扱ってみると、「実際に歌う」という明確な目標がある分、教科書の学習以上に盛り上がりますよ。
■私は文学の研究はしていますが、音楽に関しては素人です。これからも様々な合唱曲の歌詞について考察していきたいと思っていますので、
・音楽上の解釈でも論の補強になる
・次はこの曲を扱って欲しい
などありましたら、コメントいただければ幸いです。
Twitterもやっています Follow @TOMO27370
他の合唱曲の歌詞分析はこちら ↓
※音楽や国語の授業、または合唱部や合唱コンクールでメンバーに投げかける場合の基本的な流れなどもこちらに書いていますので、ご覧いただければ幸いです。