行動経済学を知って、お金を節約しよう

行動経済学という言葉を聞いたことがあるでしょうか?バナナマンが出演している三井住友生命のCMで名前を知ったという人もいるかもしれません。

行動経済学とは、人間は完全に損得の勘定で行動するとは限らないことを前提としています。そして、人間の脳が感情や印象などによる直観を優先して判断する現象に着目し、その原因を解明しようとする学問です。

直感的な判断は、時として経済的には合理的ではない判断を招くこともあります。お金に関わる場面で直観的に判断した結果、期待に反してお金の無駄使いをしてしまうことになりかねません。

行動経済学を知る、つまり、人間の直観的な行動が合理的な行動からどのようにズレているかを知ることで、お金の無駄を避けて家計を節約するヒントが得られるでしょう。

人間の脳の直観的な判断

人は日常的に様々な判断を瞬間的に行なっているようですが、全てを熟考して念入りに損得勘定しているわけではなく、多くの判断は直観的に行われることが多いようです。

というのも、人間は大昔から、危険や猛獣から身を守るために、入ってくる情報から危険を察知して直観的に判断する能力を養っており、猛獣に出会う危険が少なくなった現代でも、直観を常時働かせているのだそうです。

直観が役立つ時として、十分にトレーニングされた専門家(チェスの名人など)が、経験に裏付けられて次の一手を閃くこともあるでしょう。しかしながら、株式銘柄の売買ににおいて、株価の割安や割高を考慮する代わりに、その会社の好き嫌いの判断に置き換えて売買の判断を行うこともあるでしょう。株価の購入においては、直観が損得勘定を優先した結果、かえって損してしまうことになりかねません。

人間の生存のために、直観は常時働いており、止めることはできません。我々にできることは、直観が損得勘定を邪魔しそうなパターンに気付き、直観の判断を一旦脇に追いやるくらいのことです。

以下では、直観が働いた結果として損得勘定的には望ましくない場面や、その理由について整理し、直観に対抗するアイデアを紹介したいと思います。

価値判断の行動経済学

投資や支払いなど、お金の出入りに関わる場面にて、直観が優先することによって、あまり効果的ではない選択肢の方を好んで選択してしまうことがあるようです。

現在バイアスで、将来を軽視しがち

以下の2つの質問に答えてみてください。

質問1「①今10,000円もらえるのと、②明日10,100円もらえるのは、どちらがいいか?」

質問2「①1年後に10,000円もらえるのと、②1年1日後に10,100円もらえるのは、どちらがいいか?」

質問1には①10,000円と答え、質問2には②10,100円と答えましたか?このような選択をする人は、今に価値を高く感じるという、現在バイアスの影響を強く受けているようです。

質問1も、質問2も、1日で1%の上昇なので、得られる利益は同じです。1日で1%の上昇はお得ですので、どちらの質問も②10,100円を選ぶのが合理的といえます。

質問1で①10,000円を選ぶ人は、将来のお金の価値を現在のお金の価値に対して随分低く感じる傾向があるようです。例えば、今の食欲を優先して将来の肥満を軽視するなど、心当たりがあるでしょうか?あるいは、今の消費を優先して老後の貯蓄を軽視することも思い当たるでしょうか?

現在バイアスは、昔の人類は基本的には飢餓状態であり、食糧があるときにあるだけ食べておくのが生存に有利だった時代が長かったことにより、刷り込まれた行動によるものという仮説もあるようです。

現在バイアスに対抗するためには、直観的な判断は将来の役に立たないことを意識して、行動の選択をいちど見直してみることをお勧めします。

保有効果により、大事なものに思えてくる

ひとたび自分の所有物になったものは、価格以上の価値を感じてしまうことがあります。例えば、フリマアプリなどで品物を出品する際、持ち主の自分としては、価値を感じて高めの値付けで出品するけれども、いざ自分が同じものを購入する立場になると、相場はもっと低いだろうと感じることがあるかもしれません。

商品を購入する場合に、手に取ったり試用したりすると、多少高くても納得してしてしまうことがあったりすることがあるでしょう。

高値を掴まないためには、いちど所有していたことを忘れて、クールダウンした上で、改めて価値を考えるのが良いでしょう。

アンカリング効果で、割高な価格に納得しがち

スーパーマーケットの値札を見ると、値引き前の価格と値引き後の価格が併記されていることがあります。

このとき、値引き前の価格がアンカー(船を繋ぎ止める係留)となり、その価格を基準に値引き後の価格を判定してしまうようになる傾向があります。

私も先日、ドラム式洗濯機の値引き後の価格で19万円というのを見て高いなと思いましたが、その後に定価が35万円である事実を知り、やっぱり安いかもと思ったことがあります。

このとき、値引き前の価格をアンカーとして意識することにより、値引き後の価格差が大きいほど安くなったと感じてしまいます。

アンカーに囚われて高値掴みしてしまわないようにするためには、値引き後の価格だけで価値判断することで、値引き前の価格や値引きを意識せずに正しく判断することがお勧めです。

価格については、それだけのお金を払う価値があるかどうかで判断できると良いですね。

プロスペクト理論により、損失リスクを過大評価しすぎ

リスクを伴う選択や判断の行動理論として、ダニエル・カーネマンらのプロスペクト理論が提唱されています。ちなみに、プロスペクトは、見込みや期待という意味を持つ言葉です。

次の質問に答えてください。

質問3「①35%の確率で10,000円もらえるが65%の確率で何ももらえないのと、②確実に3,000円もらえるのとでは、どちらが良い?」

質問4「①35%の確率で10,000円失うが65%の確率で何も失わないのと、②確実に3,000円失うのとでは、どちらが良い?」

質問3に②確実に3,000円もらうと答え、質問4には②35%の確率で10,000円失ってもよいと答えたでしょうか?このような人は、もらう方には確実性を求めるが、いざ失うことにおいてはギャンブルを求めてしまうことを示しています。

人間の直観は損失をできるだけ回避したい性質があり、少しでもリスクを回避するための行動として、上記の行動に現れてきます。

この損失回避の直観により、質問3では①65%の確率で何ももらえない事よりも②確実に3,000円をもらえる方を好み、質問4では②確実に3,000失うよりも①65%の確率で失わなくて済む方を好むようです。

期待値を計算すると、質問3の場合は②の3,000円よりも①の期待値は3,500円を選んだ方が貰える額が多く、質問4の場合は①の期待値3,500円の損失よりも②の3,000円の損失を選んだ方が損失が少ないです。

このように、直感に頼るよりも、少し計算すれば有利な方が分かります。そして、このような選択は形を変えて人生で何度もありますので、いつも同じように損得勘定を働かせて選択すれば、何度かはギャンブルに失敗したと思えることがあっても、全体的には得するようになっていくものと考えれば良いでしょう。

安っぽいおまけにより、全体の価値が下がってに見える

心理学実験でこんなものがありました。綺麗な食器セットの値段を推定させた時の平均価格と、同じ食器セットに欠けた食器を追加したセットの価格を推定させた時の平均価格では、前者の方が後者の方が高かったとのことです。

人間の直観は、平均を見積もるのがは得意な一方で、合計を見積もるのは苦手なんだそうです。そのため、欠けた食器が追加されると、合計としては価値が増えているにも関わらず、平均的な価値は下がってしまうため、価格が低いと直観的に判断してしまうことが理由なのだとか。

メルカリなどのフリマアプリなどで、抱き合わせ販売としておまけを増やした場合を考えてみましょう。全体的な価値は上がっているにもかかわらず、安っぽいおまけが追加されることにより、買い手が直観的に感じる価値は増えるどころか、かえって価値が低く感じられてしまうことがあります。

このような現象を避けるためには、安易に抱き合わせ販売せず、個別に販売するか、おまけは処分するくらいの対応をしても良いかもしれません。

行動経済学を学べる本

私の場合はAudibleで聴く読書により内容を学びましたが、紙書籍の販売サイトを紹介します。

ファスト&スロー

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン思考著書です。人間の直観力であるファストな判断と、熟考して最終判断を下すスローな思考を対比して、人間の判断の仕組みを解き明かしていきます。

行動経済学の逆襲

こちらもノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー氏の著書です。人間の直観力による選択と判断の不利益を解消するための仕掛け(ナッジ…肘でコツンと小突くこと)を見出して、政府系の公共政策機関で実践した事例などを紹介しています。

行動経済学の使い方

NHKのでピースの又吉とオイコノミアという経済番組に出演されていた大竹文雄氏の著書です。上記の2件の著書のダイジェストを紹介しながら、行動経済学による直観力による不都合な誘導を避けるためのナッジの使い方を紹介してくれます。

 

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