南米親父の熱狂的なサッカー観戦動画から外国語を訳す難しさを考える

サッカー好きの外国語学習

DAZN

外国語には日本語で存在しない言葉がたくさんある

外国語が話せれば、誰でも通訳や翻訳ができると考えている人は少なくない。

けれど、実際のところ、通訳や翻訳はとても難しく、奥深い行為であることを以前記事で書いた。

通訳や翻訳は誰でにでもできる行為ではない。

特にサッカー通訳は、語学やサッカー以外の多くの知識や、文化の違い、受け取る人の心を想像する能力を考慮に入れ、適切な表現を瞬時ラッパーのように頭の回転の速く作り出す必要がある。

サッカー通訳の人たちは、日々、高度な業務を行っていると考えると、尊敬の念に尽きない。

Jリーグにスペイン人監督や選手が増えた昨今はスペイン語通訳、そして昔から多くの選手や監督を輩出しているブラジル出身者が使用するポルトガル語の通訳が、サッカーの現場で活躍している。

そんなスペイン語、ポルトガル語の通訳さんたちにとって難しい点だろうな、と個人的に想像するポイントのひとつが、スペイン語やポルトガル語には、日本人が普段の日常会話で使用しない単語や表現が多い(外国語には日本語には存在しない表現が多い)という点だ。

それら日本語に存在しないスペイン語やポルトガル語の表現に対し、直訳もしくは相手に伝わりやすいであろう表現にアレンジした意訳を日本語で当てることはできる。

けれど、日本語での意訳を持ってしても、そのスペイン語やポルトガル語の表現が内包するニュアンスや言葉の裏側に込められた思いまでを、適切かつ簡潔に日本語で表現しきることは非常に難しい。

南米の親父がテレビでサッカー観戦をする動画(息子隠し撮り)

古い話で恐縮だが、2011年、アルゼンチン及び南米の一部で一本の動画が大きな話題となった。

それはアルゼンチン人のとある父親が、テレビでサッカー観戦をする様子を収めた動画だ。

2011年アルゼンチンの名門リーベル・プレートは1部リーグ残留をかけ、1部2部の入れ替え戦を戦うことになった。

ホームアンドアウェイ形式で行われる入れ替え戦の初戦は、父親が応援するリーベルにとってアウェイの地コルドバで開催された。

その試合をテレビ観戦する父親。

普段は温厚な父親が、2部降格の危機に瀕した愛するリーベルプレートの試合をテレビ観戦する際、どんなリアクションを取るか。

その様子を父親の息子が隠し撮りをし、その後YouTubeにアップをした。

すると、その動画がアルゼンチンでめちゃくちゃバズった。
(そのニュースが南米の他の国にも波及)

その動画に日本語字幕をつけたものをこの下に貼り付ける。

普段サッカーに熱くなっている人には騙されたと思って、一度是非見て頂きたい(自分はここまで熱くなっているだろうかなど色々な想いが湧き上がる動画だ)。

(日本語字幕付き親父のリアクション動画:

追記:上品と言えないスペイン語表現が多いからか以下では直接再生されず、YouTubeでのみ視聴可能になってしまいました。
画面内のYouTubeで見るをクリック頂くと、別途開くYouTubeのアプリ、Webブラウザから動画は見れます)

この動画のなかで、この父親は以下のような表現を連発している。

Boludo
La puXX que te parió
Hijo de puXX
La concha de su madre
Pelotudo
などなど

これらは全て汚い表現で、一部は売春婦の息子的な強い侮辱表現となっている。

しかしたとえば、売春婦の息子という表現に対し、スペイン語圏の人たちが、誰かに対して、本当に売春婦の息子という意味を込めて発言をしているわけでは必ずしもない。

その時の状況、相手との関係性などでその意味合いは大きく変化する。
(Hijo de puXX = 売春婦の息子という言葉が使用されても、実際には話者が「何をしてるんだ、このバカやろう。気合を入れろ」的なニュアンスを強く伝えたいなどのことはよくある)

更に、これら表現は親しい人同士の日常会話でけっこう使用される(特に男性が多用する)。

たとえば、スペインやアルゼンチンのサッカーの試合を見ていて、監督や選手の声をマイクが拾うとき、これらの表現が使用されていることは少なくない。
(紳士的に見える外見の監督たちでさえも、こういう表現を連発して選手たちにハッパをかけている)

スペイン語圏やポルトガル語圏の国に行くと、現地の友人たちとのふざけた会話の中で「Hijo de puXX(売春婦)って日本語でなんて言うの?」と聞かれることは結構ある。

けれど、日本語では相手を罵倒するときの語彙としては「このバカ野郎」とか「お前はアホか」などの表現しか存在せず、スペイン語やポルトガル語が多く保有する汚くも実は状況によって多くの意味に変化する深淵な汚い表現は日本語には存在しないため、答えに困る。

上記の動画の日本語字幕は2011年から2012年当時、自分が親しい日本人の友人向けに、自分で簡単に字幕を当てて作成した動画だ。
(当時の動画を修正せずにそのまま紹介する)

簡単に作った日本語訳なゆえに、今見返すと日本語訳が荒い部分があると気づく。

しかしだからと言って、当時から10年ほどたった現在、より多くの時間をかけ、丁寧にこの動画に対する日本語訳を考えたとしても、この父親の心の叫びに相当するに適切な日本語訳を(この父親のパッションとスピード感を忠実に維持しながら)当てられる自信が今の自分にもない。

汚い言葉以外にも「日本語には存在しない」外国語表現は多い

上記は汚い言葉での事例となるが、汚い言葉以外にも、外国語には、日本語には存在しない表現が少なくない(その逆で、日本語には外国語にはない表現も存在する)。

この「日本語には存在しない外国語表現 (外国語には存在しない日本語表現)」と見えないところで向き合いながら、通訳の人たちは日々頭をフル回転させていると考えると、本当に、尊敬しかない。

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