「かつては韓半島平和プロセスを主導した韓国が日本と立場を変え傍観者になっている」という話

朝鮮半島平和プロセスにおいて、今度は韓国が「傍観者」になっている、という記事がありましたので紹介します。
6年前は「仲介者」だったのに、その場を日本に譲り今は観察者だ、という内容です。
すごく長いのですが、ざっくり言うと...

  • 岸田首相は就任直後から北朝鮮と前提条件無しに会おうとメッセージを送り続けていた。北朝鮮もまんざらでは無さそうだ。
  • 北は年始の能登半島地震の際には岸田首相を「閣下」と呼び、慰労の電文をを送った。日本もそれに即座に謝意を示した。
  • ネックは拉致問題だが、拉致被害者家族も首脳会談の重要性を理解し、岸田首相支持に回った。
  • 米国も日本の対応を支持している。

というような内容で、最後に「このままじゃ東北アジアの平和プロセスが日本と北朝鮮に進んじゃう。韓国は蚊帳の外になってしまう。それはマズイ。準備せよ」みたいな感じです。

 

 



プレシアンの記事からです。原文では日本・北朝鮮を「北日(북일)」としていますが訳では「日朝」とします。

韓半島を主導した「仲裁者」の韓国、6年ぶりに日本と立場を変え「観察者」に


今、北東アジアで2018年に始まり2019年に中断されていた平和プロセスが再現されている。ただ、韓国と日本が席を変えたという点が大きな違いだ。

(中略)

2018年の新年の辞から6年が経ち2024年1月5日に金正恩委員長が発表した一枚の電文が北東アジアに雪解けの機運を起こしている。新年早々に発生した日本の能登半島地震金正恩委員長は岸田日本首相宛てに「閣下」の呼称を使いながら慰労の電文を送った。

これに対して日本政府は直ちに反応した。1月6日、林官房長官が記者会見を通じて「感謝の意を伝えたい」と述べたのだ。北韓が「閣下」の呼称を使ったことも、日本が直ちに感謝の意を表したことも非常に異例なことだった。

金正恩委員長の慰労の全文は、もちろん対話メッセージだった。これに対し岸田首相が1月30日の施政方針演説で「首脳会談の意志」を直接明らかにし「首相直轄の高位級協議」でこれを推進していくという考えを表明したのだ。

(中略)

日本メディアではすでに昨年3月と5月に日朝間に接触があったという報道が出ていた。岸田首相が5月19日に広島G7会議を終え、5月27日に拉致問題の解決を要求する国民大集会で「首相直轄の高位級協議」を初めて言及して出た報道だ。

この時に出た対北韓メッセージの水準はこれまでの文言と違って具体的であり、高い水準で協議が行われていることを感知することができた。

(中略)

このような岸田首相の動きに北韓側は1月29日、パク・サンギル外務次官が談話を発表し「朝日(北日)両国が互いに会えないわけがない」と答えた。北韓が公式に日朝対話に言及したのは2016年以来初めてだった。

6月8日、岸田首相は再び参院財政金融委員会で「あらゆる機会を逃さず」首相直轄の高官級協議のための努力を続ける考えだと強調した。その一方で、日本は拉致日本人問題の解決を求めていた。これに対し北韓は6月28日に再び談話を発表し、拉致問題解決要求を「虚しい妄想」と一蹴し、この問題は「すでに取り返しがつかず最終的に完全無欠に解決された」と強調した。

(中略)

振り返ってみると、岸田首相は2021年10月の就任直後に「条件なしに金正恩国務委員長と直接向き合う覚悟ができている」と明らかにして以来、持続的にこうした意向を表明してきた。2022年9月の国連総会でもユン・ソンニョル大統領が南北関係について一言言及しなかったのとは対照的に、岸田首相は前提条件なしに北韓に会う準備ができているという考えを表明した。そして2023年9月の国連総会基調演説でも同じ立場を表明した。

年明けから展開される日朝関係の新たな様相が2018年の韓半島和平プロセスを彷彿とさせるのは、当時のムン・ジェイン大統領が就任以来見せてきた一貫した対話努力と岸田首相の姿勢が重なって見えるためだ。北韓は相手の一貫した対話姿勢に応じる姿勢を見せてきた。この点で北朝鮮も一貫した姿だ。

(中略 ※キム・ヨジョン氏の好意的とも取れる談話に触れ)

金与正談話を受け、被害者家族会代表の横田拓也氏は交渉が行われているのなら歓迎するという基本立場を明らかにしながらも、拉致問題をすでに解決したと見なすという北韓の立場に対しては「全く受け入れられない」と反発した。

それでも3月4日、被害者家族会と彼らを支援する会である「救出会」は運動方針の転換を確認し、これを岸田首相に伝達した。すべての拉致被害者の即時一括帰還という目標は変わらないが、このために日本が独自に実施してきた対北韓制裁を解除できるという方針だった。すなわち「手段」という次元で日本政府の柔軟な対北韓接近を受け入れるという立場だった。

(中略)

拉致被害者を支援し、北韓に対して最も強硬な立場を示してきた「救出会」グループも首脳会談に臨む岸田首相を支持し始めた。

「救出会」代表で国家基本問題研究所企画委員でもある西岡勉は2月15日、金与正談話を日本のマスコミがまともに読み取れないと批判し、岸田首相が談話を積極的に受け入れ首脳会談を通じた拉致問題解決という方向に出ることを要求した。これまで拉致問題の解決なしに首脳会談反対という立場から旋回したのだ。

特に西岡が注目したのは、金与正談話で「満」という調査が持つ意味だった。すなわち、金与正談話の核心は、拉致問題を前提条件にしなければ首脳会談が可能だということであり、いわゆる「ツートラック解決策」を提示したものと見て、この機会を活用しなければならないと主張した。

(中略)

日朝首脳会談のために日本政府がもう一つ気を使わなければならない対象は米国だ。ところが米国の対応も肯定的だ。ウクライナとガザで戦争が長期化している中、米中間に第3の戦線が開かれることを警戒している状況で、米国としても北東アジアで現状を管理する必要がある。日本が乗り出してしてくれれば止める理由がない。

岸田首相訪韓説が流れた2月14日、日朝会談の可能性について北朝鮮人権特使のジュリー・ターナー氏が記者団に対し、「米国は前提条件なしに北朝鮮との対話に開かれているという点を明確にしてきた」と支持の立場を明らかにした。

(中略)

16日、パク米国務省北韓高官は「米国は基本的に北韓とのいかなる種類の外交と対話も支持する」とし「拉致問題解決に向けた日本政府の努力を強く支持する」と述べた。

(中略)

このように、対北韓強硬一辺倒政策と対日和解一辺倒政策の間で、韓国政府は混乱の中にいるようだ。キム・ヨンホ統一部長官は、金与正談話が出た翌日の16日、アリランテレビとのインタビューで「金与正談話は、韓国ーキューバ国交正常化の発表で守勢に追い込まれた北韓が、これへの対抗として局面転換を試みたものだという認識を示し『北韓はソウルを通さずにワシントンと東京に絶対に行くことはできない』と釘を刺した。

(中略)

しかし、25日のKBS日曜診断でキム・ヨンホ長官の発言は、10日前の態度とは180度変わっていた。彼は「韓半島の平和と北韓核問題の解決に役立つなら日本と米国など北韓が他国と対話することに反対しない」とし、日朝間の対話努力を肯定的に評価した。上で指摘したように、米国側が日朝対話を歓迎する雰囲気に適応するための努力と見られる。

(中略 ※スポーツ外交でも動きが活発になっている点に触れ)

一方、日本の目には、金正恩委員長は2023年9月13日の朝露首脳会談後、外交に自信を持ち始めたように見える。実際、平壌の外交街は再び動き始めた。中国やロシアとの関係改善や交易復活など、さまざまな理由があるだろうが北韓の経済や食糧事情も回復しているものと判断される。

日本の外交街ではこうした点が金正恩委員長の自信につながっているとみて、彼が高揚している時が日朝間で成果を出す機会だという考えが広がっている。日本側は北韓に大量に埋蔵されているとされるレアアースを念頭に置いて経済安保面でも長期的に中国依存から脱することができるという点で朝日国交正常化の利点を計算しているようだ。

さらに長期的には、米国が再び孤立主義に転じる時に備えた戦略を考えているようだ。米国が退いた北東アジアの政治的空白から日本がイニシアチブを握って韓半島事態を管理するという戦略がうかがえる。

北韓金正恩委員長がハノイでの失敗から学習したという分析もある。米朝交渉が失敗したのは韓国以外の国々から支持を得られなかったためであり、特に日本の妨害が大きな失敗要因だったと見て、まず日朝関係の停止作業に乗り出したという解釈だ。

しかもトランプ再選が見込まれる中、トランプとの米朝交渉2.0を試みる際、日本が支持すること、少なくとも妨害しないことが求められるということを分かっているだろう。むろん北韓の立場で最大の誘引は日本からの経済的支援の可能性だ。北韓が期待するのはその譲歩よりも日本の経済的支援が北韓に対する経済制裁を無意味にする恐れがあるという点だ。

今夏、北東アジア外交日朝首脳会談を中心に展開する可能性を想定し、韓国外交を構想する必要がある。もしかしたらこれは韓民族共同体の平和的生存と繁栄のための機会かもしれない。

韓国政府が変化の流れを読めず、これを逃せば北韓と日本が主導する北東アジア平和プロセスの中で、米国と中国、ロシアの首脳が平壌の春の外出を準備している時、韓国が一人で厚い冬のコートを着て独りぼっちになっているという点を見逃してはならない。



プレシアン「한반도 주도했던 '중재자' 한국, 6년 만에 일본과 자리 바꾸며 '관찰자'로(韓半島を主導した「仲裁者」の韓国、6年ぶりに日本と立場を変え「観察者」に)」より一部抜粋

引用部分からは省きましたが、記事では韓国が自称「運転手」として進めた平和プロセスは、その平和ムードから除外された日本(安倍さん)が執拗に抵抗したことになっています。
はっきり書かれているわけではありませんが「日本の妨害のせいで失敗した」と言いたいように受け取れます。(個人のコラムレベルの記事でははっきりそう書かれていることも珍しくありません)
まるで「それさえなければ全て上手く行った」と言わんばかりですが、韓国の認識ではそのようになっています。「日本」が絡むと「悪いのは全て日本。自分たちは悪くない」になるので、容易に記憶も認識も改ざんします。

当時リアルタイムで色々な報道に触れていた身としては、日本のせいではなく韓国の自業自得としか思えません。
韓国は米国にも北朝鮮にも「都合の良い」ことを言っていました。米国には「北朝鮮が核を放棄する準備がある」と話し、北朝鮮には「制裁は解除される」と話し…いざ会ってみたら「話が違う」となったのです。
トランプさんの周囲でゴタゴタが起こったりもしましたので、それもマイナス要因ではあったかもしれませんけれども、それを踏まえても「韓国の調整力不足」感は否めません。

実際、「韓半島平和プロセス」ひいては「終戦宣言」はムン・ジェインさんが大統領の「レガシー(遺産)」として目を付けていたものです(ノーベル平和賞も狙っていたかも)。実現させるために自分に「都合よく」米国も北朝鮮も動かそうと考えていたんでしょう。
「仲介者」や「調整役」って利害関係の外側に居ないとなかなか務まらないものですが、韓国は思いっきり利害関係の真っ只中、というか、自分の利害しか考えずに動いた結果がKONOZAMAだった、と。私はそのように認識しています。

北朝鮮は日本の妨害阻止というより、韓国では無く日本の仲介で米国と交渉の方がマシと判断したのかもしれませんね。韓国のご機嫌伺いを一切していませんもの。