今日の映画「マスターアンドコマンダー」「白鯨との闘い」レビュー、感想

今回は海物語です。

 

マスターアンドコマンダー

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あらすじ
イギリス海軍のフリゲート艦サプライズは、フランスの私掠船(しりゃくせん)アケロンの拿捕命令を受ける。イギリス海軍、フランス私掠船との壮絶な戦いとなった。

 

評価 B

 

ラッセル・クロウ主演の海軍映画です。海軍と言っても1800年のナポレオン戦争時です。

中世の海事情を知るには良い映画です。

当時の海事情、特に海賊黄金期などを記した名著「海賊の経済学」があります。

ちょっと高いけど、↓もおススメ。

他にもありますが、文字だけでピンとこない部分もあったりします。それを映像で補足できるので、この頃が好きな人は観ておくと良いかと。

例えば、海で手などを負傷した場合、腕ごと切り落とします。理由として、船の中で最も恐れられる事態が感染病です。その感染防止の為、腕ごと切り落とされます。っていうシーンが、映像で描かれています。

また「私掠船」というワード。

これ、海賊なんですよね。傭兵ともいえますが、海賊です。軍じゃないんです。

戦争時とか、もしくは国が戦争をしたいけど自分達の手を汚したくない時のパシリに国が強奪許可を出したのが、私掠船。

中世の海は、基本、この私掠船の動向が重要になります。

本作では1800年のナポレオン戦争時代なので、フランスの私掠船が活躍した頃です。偽装の私掠免許などが許可されたり、海賊行為が半ば公然と許されていました。

その前の私掠船全盛期が、1500年代。あのフランシス・ドレーク船長の時代。この人、海賊ですが、なぜか海軍提督にまで出世しました。

その後、1700年前後、私掠に解散命令が出され、海賊が大量発生。世は、大海賊時代を迎える……。黒髭とかバーソロミューとかはこの時代の海賊。

という事で、私掠船って中世の海では欠かせない存在なのですが、映画で観ることはかなり少ない

本作は軍目線ですが、私掠船への考え方なども分かるので、海賊好きには必見といえます。海賊好きじゃない人は、別に観なくていいかと(笑)

 

白鯨との闘い

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あらすじ
実力者の航海士チェイスと、未熟な船長のポラード率いる一団は、鯨油を取りに大海原へと航海する。しかし、近海のクジラは既に取り尽くされており、捕鯨できない。
そんな時、ある街で噂話を耳にする。赤道へ4800キロ向かった先に、クジラの大群がいる。しかし、近づいてはいけない。群れを率いるのは、大理石のごとく真っ白な巨大クジラ。やつは容赦なく人の船を破壊する。
その場所へ向かってみると、本当に大量のクジラ、そして白鯨が居た。忠告通りに、船を白鯨に破壊された一同は、小さなボートで海を漂流することとなる。

 

評価 B

 

なぜか(人生で)三度も観てしまった海系。

有名な小説「白鯨(ハーマン・メルヴィル)」の元ネタ、という体の映画です。「白鯨」の脚色ってことでOK。

海系が好きで、映画以外にもドキュメントとかも大量に観るのですが、本作は別の意味で面白いです。

 

ちょっと構成の話をしますが、シナリオというのは前半の目的と、後半の目的で話しの毛色を変えます。

具体的にはミッドポイントというちょうど真ん中付近で大事件を起こし、話を別の方向へと転換します。(再整理ともいえる)

そんなシステムあるの? って思うかもしれませんが、あります。

分かりやすいのが本作。

・まず初めの目標は「捕鯨」です。クジラを取る為に出航したり、船長と航海士がもめ始めたり、その中でもなんとかかんとかクジラを取ります。っていう、漁業の話。

・ミッドポイント(放送時間のちょうど真ん中)で、白鯨に船をぶっ壊されます。

・その後、「漂流」の話に変貌します。

クジラを取るとかいう話ではなくなり、陸から4800キロ離れた太平洋の真ん中で遭難し、どうやって生きながらえるか? という話になります。

すっごく分かりやすい構成なので、参考になります。(尚、頻出かつ王道中の王道構成です)

という事で、クジラとバトル! というより、飢餓との闘い……が本作のメインシナリオです。

なかなか珍しいです。海で彷徨うなかで食料が切れ「誰が食料となるか」という究極の会議があったり、無人島に辿り着くも食べ物が何もなく出航を余儀なくされ、その中で負傷者を無人島置き去りをせざるを得なくなったりと、なかなか珍しいシーンで構成されています。

海上でのカニバリズム(食人)や、無人島置き去りなどは、資料では度々見かけますが(絵画とかも)映像で観るのは珍しいと思うので、個人的には面白かったです。

後半、こうした拷問のような時間が1時間も続くので、「クジラバトル!」と思ってたお子様とかにはキツイかもしれないですね。

という事で、B評価ですが、一回は観ておいても良いかと思いました。