一方的な批判・非難ばかりのSNS、いじめについて考える読書ブログ

少しでも心のモヤモヤが晴れて、心が優しく、強く感じられるように。

誰のための「おもてなし」なのか【「おもてなし」という残酷社会】

0.はじめに

「おもてなし」ということばが注目されたのは、

2013年の東京オリンピック誘致の為のプレゼンテーションで

優雅で魅力的だったので、覚えていらっしゃる方も多いかと思います。

その年の流行語大賞ともなり、海外でも知られることばとなりました。

ホスピタリティということばも一般化されたと感じます。

 

ただ、そのころから、「感情労働」ということばも

見受けられるようになってきました。

海外では2000年代初頭から使われ始めたことばの様ですが、

日本では、2010年代に入って使われる様になったといわれています。

 

感情労働とは、

感情が労働内容の不可欠な要素であり、

かつ適切・不適切な感情がルール化されている労働のこと

という意味で用いられ、一般的な頭脳労働に比べてストレスが多い

とされています。

サービス提供の労働に多いと言われていて、

相手の対応に関わらず、感情を含めたサービスを提供することが求められるためです。

対価が明確にならないデメリットもあります。

かつては、マクドナルドでは、メニューに「スマイル¥0」という

サービスがありましたが、結構前から無くなってますね。

 

また、感情労働は過剰労働と関連性が高いことも問題視されています。

顧客満足を成果とするため、成果に対する労働が定量化しにくい難しさも

ありますが、何をもって成果とするのかもわかりにくい為、

過剰労働の温床と呼ばれ、「やりがい搾取」ということばも生まれ、

大きな問題になっています。

 

今回は、そんな過剰労働と感情労働についての書籍を紹介させていただきます。

 

今回の目次です。

 

1.紹介する本

「「おもてなし」という残酷社会 過剰・感情労働とどう向き合うか」

平凡社新書

著者:榎本 博明さん

著者の榎本さんは、心理学の専門の方で、社会心理に関する著書があることが

この著書内の経歴で紹介されています。

 

2.内容まとめ

序盤では、おもてなしをはじめとした感情労働がなぜ日本で広まっていったのか、

その原因と、間違ってしまったポイントを解説しています。

もともと相手への配慮を教育され、空気を読む文化性を備えた日本人と社会に、

個人主義の強い、海外のサービス指標を無理やり取り込んだところに

起因していると論じています。

 

中盤では、感情のコントロールがあらゆる職種で求められていること、

上司の理不尽な対応への気遣い、また新入社員に対してもお客様のように

対応しなければいけない会社など、

顧客以外にも過度に感情のコントロールを強いられる現実が紹介されます。

もちろん、介護職員の方、駅員さん・車掌さん、コールセンターなど、

感情労働の最前線と言える方々の努力や対応なども紹介されています。

さらに、心理学の専門として、表面の感情と、深層の感情が異なることでの

心理的な負担についてもふれられます。

 

終盤では、ストレス対処の方法を、自分一人でもできる方法、

他の方の協力をもらう方法が、専門的な心理作用の流れの解説も含めて、

双方で具体的に紹介されています。

 

3.感想とまとめ

感情労働の適性さを知る為にも、一読の価値ある一冊です。

自分が働いている環境が、他の労働環境に比べてどうなのか、

というのは、実はあまり知らないことが多いのではないでしょうか。

 

あまり、色々な会社に転々とするにも限界がありますし、

一定の期間働いて、知らないうちに染まってしまっていることもあるかもしれません。

この本で極端な事例として紹介されてしまっている内容が、

実は自身の会社では、当たり前のことになっていた事実を

目の当たりにする、なんてこともあるかもしれません。

 

感情のコントロールが強く必要な労働は、

労働時間以上の疲労・ストレスを強いられることが、

この書籍の中では繰り返し紹介されています。

自身の働き方と向かい合う上でも有益な書籍だと思います。

 

欧米のサービス基準と、日本の教育、文化性との比較の部分に

原因を求める部分は、非常に興味深く、ストンと落ちやすく、

個人的には興味深いポイントでした。

 

関連記事

hanasakutarou.hatenablog.com

hanasakutarou.hatenablog.com

hanasakutarou.hatenablog.com