遺書(ブログ)

逆に、近藤が残った理由を考えよう

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昨日は年に一度の父の墓参りついでに「サウナしきじ」に行ってきた。4年連続4度目。今年も最高だった。これぞサウナの聖地だ。

外観からして普通。内装は見た目ただの銭湯だ。何ならちょっとダサい。そんな「サウナしきじ」が、なぜ「サウナの聖地」と呼ばれるのか。誰もが認める聖地たる理由を挙げれば数え切れない。

サウナ室の湿度と温度のバランスが神がかっている。水風呂の水質が唯一無二。蒸し風呂が……、サウナめしが……、などなどとキリがないが、そんなことはどうでもいい。

近藤健介である。

おれははるばる200km東から3時間半運転して「サウナしきじ」まで来たのに、近藤のことばかり考えていた。

近藤は1週間前にFA宣言をして、現在パ・リーグ5球団から熱烈なラブコールを受け絶賛「悩み中」だ。

近藤は移籍してしまうのか。残ってくれるのか。
他球団からどんな話を聞いたのか。ファイターズはどんな話で引き留めようとしているのか。
それを聞いて近藤は今何を考えているのか。
ファンはこの不安な気持ちをいつまで保ち続けなければならないのか。

情報はまったくない。各スポーツ紙も苦労しているらしく「~が有力」「~とみられる」「~億提示か」などと、根拠のない情報を脳内にいる”関係者”に語らせているのが実情だ。

それでも、それぞれの情報に明かせない何らかの根拠があると信じて考える。

「6年30億提示のソフトバンク」「2連覇中で優勝に一番近いオリックス」「地元の千葉ロッテ」。ここへきて「半地元で仲のいい選手が多い(?)」西武も「6年24億提示」という噂が飛んできた。それぞれ近藤にとってメリットがありそうだ。

ファイターズの残留交渉情報はまるで聞こえてこないが、5球団の中ではダントツで思い入れが強いのは間違いなく、この中では「愛着のファイターズ」と位置付けて異論はないだろう。

他球団が持つ多彩な「メリット」に「愛着」は勝てるのか。そういう構図である。

いや……「ファイターズ愛」があるのは当たり前で、それを超えた別の”何か”を求めたからFA宣言したんじゃないか。

という身も蓋もない正論にたどり着いたところで、この方向性で考えるのをやめた。

妄想F-PARK

室温100度超えながらまったく辛くない「サウナしきじ」の神セッティングの中。それなのに、どんどんネガティブな考えに陥っていくのを感じた。これではいけない。

情報がない今の状況では、ネガティブ妄想などいくらでも思いつく。こんなのつまらない。だからアプローチを変えることにした。どうせ妄想するなら、ポジティブ方向に妄想すべきだ。妄想の中だけでもなんとか「愛着」を勝たせたい。そうだ。

「逆に、近藤が残った理由を考えよう」。

「残る理由」ではなく「残った理由」だ。近藤が残留した(過去形)としたらどういう気持ちだったかを想像する。

例えばだ。
この後1週間後か1ヶ月後かはわからないが、近藤が奇跡的に宣言残留をしたと仮定する。いや、仮定するんだよ。で、残留を決断した際のインタビューで語る内容を想像するのだ。

想像するんだよ。

どうせならとことん具体的に。YouTube動画だ。インタビュアーは建山コーチが想像しやすい。あれだ。「F-PARK」だ。あれをオカズにさせてもらおう。

スーツの建山。胸元にはマイク。向かいの席にはファイターズのブルゾンを着た近藤がいる。建山が第一問目を問いかける。

建山「まず、なぜファイターズに残留することにしたんですか?」

近藤は「4球団の関係者の方には本当にご迷惑をおかけした……」などと、まず謝罪の言葉を前置きながら

近藤「本当に深く悩んだんですけど、この球団で優勝するのが一番気持ちいいな、というところまで戻ってきたんです」

建山「宣言することで、本当の意味で実感できたと」

近藤「迷惑な話かもしれませんが、そういうことですね」

建山「ただ、他球団にも魅力はあったんじゃない? ソフトバンクなんか、すごい提示をしてきたでしょ」

近藤「そうですね。言えないですけど(笑)。『お金じゃない』とは綺麗事では言えますけど、正直かなり動かされました。僕にこれだけの評価をしていただけてるんだと。年棒っていうのはやっぱり野球選手としての価値ですからね。野球選手になったからには、そこを目指すものだと思います。ただ、それよりも優先したいことがあったということですかね」

建山「関東の球団は? 地元に戻りたかったんじゃないですか?」

近藤「たしかに。千葉は地元で友達もいっぱいいますし、何より両親が住んでいるのは大きいです。子供も大きくなってきましたし、気軽に孫に会わせてあげられる。親孝行もしたいって気持ちもあります」

建山「わかる。お金じゃ換算できない部分ですよね。家族や生活のことを考えると、関東がベターだと?」

近藤「ただ、そこはそうとも言えません。福岡や大阪ならまた別の話になりますけど、札幌だって暮らしやすいし、現に妻は札幌の人間なので。関東に行けば個人的にメリットがいくつかあるというだけで、報道されているように『地元だから行きたい』っていうのは、あまり優先したい要素ではなかったです」

建山「それよりもチームかな。オリックスは? リーグ連覇中で今年は日本一にもなった。春先にビッグボスが『優勝なんか目指さない』とコメントしても、近藤選手が『勝ちたい』とおっしゃってたのが印象的ですが、オリックスは優勝に一番近いチームといえるんじゃない?」

近藤「もちろん、そこが一番重要視したところです。やっぱり勝ちたいし、優勝したいですから。そういう意味でオリックスは魅力的ですよね」

建山「年棒、環境もさることながら、第一に『優勝できるチーム』というのが大前提だったってことですよね」

近藤「そうですね。ただ『優勝できるチーム』に入りたいかというとちょっとニュアンスが違って、少し僭越ですが『自分が加わってしっかり働けば優勝できるチーム』って感じです。もっと欲張った言い方をすれば『自分が入って優勝させたい』。2016年に日本一は経験してますが、あの年は個人的に不甲斐ない成績だったので、『優勝させてもらった』側でした。今度こそ本当の意味で優勝チームのメンバーになりたいんです」

建山「わかりました。で、悩んだ挙句にファイターズに決断したということは、ファイターズは優勝できると」

近藤「ファイターズは若手も確実に育ってきてるし、オフの補強もうまくいってますよね。GMや監督に来季の構想を聞きましたけど、本当に優勝を目指しているんだってことがはっきりと理解できました。これが構想通りに動いて、僕がしっかり働けば十分チャンスはあると思います。ただ、それはどの球団も同じです。で、悩んで悩んで悩みぬいた挙句、『どの球団に一番優勝してもらいたいか』という根本の部分に行きついちゃったんですよ」

建山「そこでファイターズが一番上に来てしまったと」

近藤「迷惑な話、そうなんですよね(笑)。やっぱり上沢とか剛とか、入団から一緒に泥をかぶってきたメンバーと一緒に喜びたいし、勝てなくても腐らず頑張ってきた後輩たちにも優勝を経験させてあげたい。ずっと応援してくれた札幌のファンにも借りがある。なら最初からFAするなって話だけど、宣言したことで気づけたことは多かった。結局ファイターズにお世話になりますが、あらためて新入団みたいな気持ちで頑張れます」

建山「球場もエスコンに変わりますしね」

近藤「楽しみです」

建山「今日はありがとうございました。ふつう答えられないようなこともずいぶんと答えてくれましたね」

近藤「はい。これはマッキーの妄想ですから」

いい年こいて馬鹿馬鹿しい

・・・ということで、サウナの聖地でととのいながら、おれが考えた妄想のすべてでした。こうなったら最高だよねえ。という話。「ファイターズ愛」がすべての理由を凌駕した世界線。

「いい年こいて馬鹿馬鹿しい」とお思いの方もいらっしゃるに違いない。「期待して裏切られたときが辛いから」と、今から覚悟を決めておく、というのも防御策として正しいと思う。

ただ個人的には、期待しようが覚悟していようが、近藤が移籍した際のショックも、残留したときの喜びも、計り知れないと考える。だったら、球団から公式アナウンスが出るその瞬間まで、おれはポジティブに期待していたい。これもおれなりの自分の守り方だ。

近藤がFA宣言してから、その先が決まるまでの限られた期間。ことあるごとにスポーツ記事やSNSで「近藤健介」を検索しては、安堵とも焦燥ともつかない微妙な気持ちになる毎日だ。こんな日々がいつまで続くのか。今この瞬間の気持ちを書き記しておこうと思い立って、照れながらもこれを書いた。

数年後に読んだとき、「あの時期は不安だったなあ」「こんな気持ちだったなあ」なんて懐かしめたらいい。

その時のおれは、背番号8の近藤ユニホームを着ているのかな。

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