今年最後の読了はこの本。
本書、何となく手にとって、最初のページをぺらっとめくったら、この言葉が飛び込んできて。。。
「あなたに」という、たった一言が妙に頭に引っかかり、どうしても無視できなくて購入してしまったのですが、期待を遥かに超えてよかったです。
最初は、なぜ ’For You’ なのか、読み終えた時ほんとに'For Me'だったと納得いく作品なのか、かなり訝りながら読み始めたものの、すぐにトニ・モリスンの圧倒的筆力に恐れ入り、なんか語録が貧しくて恥ずかしいですけど、一段も二段も上をいく真の作家とはこういう人のことをいうんだよなと、格の違いを思い知らされました。
取り上げられている題材は人種差別や児童虐待、トラウマなど、非常に重いものですが、根底にあるのは大概の人が避けては通れない複雑な共通問題、人間関係。
私自身は日常的に人種差別や虐待を受けた経験はありません(いや、正確にはありますが、この本ほどのものではない)が、だからといってただただ幸せな人生を歩んできたかといえば、もちろんそんなことはなく、他者に振り回された忌々しい思い出とか悔やんでも悔やみきれない後悔とか、負の記憶がいくつもいくつもあります。
この本の主人公も、容姿は端麗、そのうえ仕事では成功をおさめ、誰もが羨む存在でありながら、やはり拭い去れない過去にとらわれているひとり。
そんな彼女が、様々な人々との関わりの中で失いかけた自分自身を取り戻し再生していくんですけど、なんでしょう、、、トニ・モリスンの文章は、読んでるこちらの秘めた苦痛まで和らげてくれる力があり、読後はこの本ほんとに'For Me'な1冊だったと、あの時買ってよかったと、救済のような作品でした。
"You don't have to love me but you damn well have to respect me."
これは、主人公Brideが元カレBooker(突然彼女をすてて姿を消した)の居所をつきとめ、激しい口論となった時にぶちまけたセリフ。
別に愛する必要なんてないけど、アタシのことちゃんとリスペクトする義務があると。
トニ、かっこいいなあ。。。
私はトニ・モリスンがこの本のなかで使った言葉の数々にすっかり魅了されてしまいました。
このセリフ、'love'を'like'に変えたら更に使いやすくなるような気がする。
マネできる機会があったら是非とも活用したいです。
そうそう、かっこいいといえば、トニ・モリスンは靴のセンスも抜群なんですよ。
私にとっては、登場人物たちがどんなものを好んで身に着けているかも読書の際の楽しみなんですけど、本作では主人公Brideの履いてる靴がいつもかっこいいのです。
'shoes with their high lethal heels and dangerously pointed toes'とか'boots of brushed rabbit fur the color of the moon'とか、こういうディテールからイメージが膨らみ、登場人物への愛着も増すような気がします。
トニ様、ヒールの様子だのつま先の様子だの、靴好きがこだわりを持つポイントを心得てるんだよなあ。
彼女自身はどんな靴を好んで履いていたんだろうと彼女の画像をあれこれチェックしてみましたが、大体バストアップで、残念ながらその辺は確認できませんでした。
なにはともあれ、来年は彼女の作品をもっと読まねばと強く心を動かされた今年最後の読了でした。
皆さまの今年最後の読了はいかがでしたでしょうか。
2024年は、たまの更新にもかかわらず読者になっていただいたり、たくさんの星をいただいたり、感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました!
時の経つのが早すぎてまったく実感ないですが、次回お会いする時はもう2025年。
皆さまのご多幸を心よりお祈り申し上げます!
■ 神よ、あの子を守りたまえ(日本語版)
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