このブログは、宅建、行政書士、公務員試験など各種試験に役立つ「民法」の情報を、わかりやすく、詳しく解説したブログです。これらの記事を参考に学んでいただければ、必ず「受験民法」の力がつくものと思います。要点整理や暗記(記憶)にもご活用下さい。
それでは、今回は、「制限行為能力者」について見ていきましょう。
1、原則 当事者間で締結した契約などの法律行為は、原則としてお互いに守らなければなりません。
しかし、世の中には、未成年者や精神病者のように、通常の判断能力が乏しい人がいます。こういう人たちがした契約の効力をそのまま認めては、これら弱い立場の人が不利になり気の毒です。そこで、こういう人を守るために民法が定めたのが、制限行為能力者の制度です。
その守り方の基本は、行為した後で取消す権利を与えるというやり方です。契約が不利なら、取り消せばよいからです。
2、制限行為能力者とは
では、制限行為能力者について具体的に見ていきましょう。
制限行為能力者とは、自分の行為の判断能力がないか、または不十分なため、単独では完全な法律行為(契約など)を行うことができないと定められた者です。つまり、行為能力が制限される者をいいます。
ここで「行為能力」という言葉が出てきましたが、
「行為能力」とは、単独で完全に有効な法律行為をすることができる能力です。
「制限行為能力者」とは、この行為能力が制限される者という意味です。
ここで、ついでに「行為能力」と関連して、「権利能力」「意思能力」についても見ておきましょう。
権利能力
権利を持ち、義務を負うことのできる能力(地位)。
権利能力を有する者は→自然人(生きている人間)と法人(会社など)。
例外的に、胎児は、相続、遺贈、損害賠償請求については権利能力がある。
意思能力
自分の行為の結果を判断できる能力。
意思能力を欠いた法律行為は無効。
例)精神喪失、酩酊状態などでした行為は無効。
制限行為能力者の種類
① 未成年者
② 成年被後見人
③ 被保佐人
④ 被補助人
今回の記事では、未成年者だけ見ておきます。
3、未成年者
未成年者・・・18歳未満の人をいいます。(2022年4月1日から)
但し、18歳未満でも婚姻すると成年者とみなされます。(→所帯持って生活しているのに、契約を取り消せるのはおかしいから)
◆未成年者が単独で契約などの法律行為をするには、
原則 法定代理人(親権者(親)か未成年後見人)の同意が必要。
→ 法定代理人の同意なしに単独でやった行為は取り消せる。(→未成年者を保護するため)
例外1 権利を得るだけ、義務を免れるだけの行為は、同意なしに単独でできる。(→未成年者に有利なだけだから)
・権利を得る行為・・・ただでモノをもらうなど
・義務を免れる行為・・・借金の免除を受けるなど→取り消せない
例外2 法定代理人から処分を許された財産 (小遣いなど) →取り消せない
例外3 法定代理人から営業を行うことを許可された場合のその営業に関する行為→取り消せない
◆未成年者の保護者→法定代理人がなる。
法定代理人には、親権者(親がいれば親がなる)と未成年後見人(親がいないとき)がある。
◆法定代理人の4つの権限
取消権 未成年者が単独で不利な行為をした場合、法定代理人は取り消すことができる。この場合、本人からも取り消せる。
同意権 未成年者が行為する(契約を締結するなど)に同意を与えることができる。 同意を与えた契約は取り消すことができなくなる。
追認権 未成年者が法定代理人の同意を得ずに行なった行為でも、法定代理人が追認すると有効になる。「追認」とは、行為した後で承認すること。
※有効になるのは、追認した時ではなく、行為(契約など)の時に遡って有効になる。
代理権 法定代理人は未成年者に代わって(代理して)行為することができる。幼児など親が代わって行為しないとムリ。
[注] 無効と取消しの違い
「取消し」が出てきたので、ここで、無効と取り消しの違いを確認しておきましょう。
無効 →はじめから、行為の効力が生じない。つまり、何も行為しなかったことになる。
取消し →取消しまでは一応有効だが、取消しされると行為の時にさかのぼって無効になる。
以上、「制限行為能力者」の制度は、判断能力がないか、または不十分な人を保護するための制度です。今回は「未成年者」について見ました。
(参考)宅建合格への勉強法:3種
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