かなりブランクがあいてしまいましたが・・・

 

前回の「死の報せ」についての後日談というか

その後のことを、今日はお話しようと思います。

 

お兄ちゃんの生い立ちや死については

「死の報せ」に書いたとおりです。

 

 

 

 

お兄ちゃんの死に方が死に方だったので

今、お兄ちゃんの魂がどんな状態にあるのだろうか・・・と想像すると、

正直、怖くてたまりませんでした。

 

鬱積した重いものを背負っているんじゃないか・・・

俗に言う、不成仏霊のような状態にあるんじゃないか・・・

 

そんな気がしてならなかったからです。

 

もし、想像通りの状態だったとしたら、

これからどうやってお兄ちゃんの魂と向き合い、

どうやって成仏していったらいいだろう。

私が生きている間にお兄ちゃんの魂を救うことなんて出来るんだろうか。

 

そんなふうに、つい、考えてしまい、

それに、お兄ちゃんに救われてほしいと思う一方で、

私は私で、自分の精神状態が同じように憂鬱になって

不安定になってしまわないよう、自己保全に努めなくてはならないので、

お兄ちゃんの魂としっかり向き合うことがためらわれてしまい、

そんなこともあって、

最初のひと月くらいはビクビクと様子を伺うような日々を過ごしました。

 

このように身構えていた状態だったのですが、

なんだか重いものをまったく感じられませんでした。

 

どんなに暗く、鬱々とした気持ちで死を選んだのだろう・・・

そう思っていたのに、

お兄ちゃんの様子を伺ってみても

重々しい気配がまったくと言っていいほどしないのです。

 

私には妹がいるのですが、

私よりも妹の方がお兄ちゃんとは親交があったので、

妹はどう感じているだろう・・・と

落ち込んでいる妹にそれとなく聞いてみたのですが、

妹も「嘘みたいに穏やか」と言っていました。

 

まぁ、「穏やか」というのは、

お兄ちゃんの精神状態が穏やかな状態、というわけではなく、

怨霊化してもおかしくないような心づもりでいたのに

そういう気配はまったくなく、

お兄ちゃんがものすごい形相をしているようなこともなく、

何も知らない人が、もしお兄ちゃんの霊を見かけたとしたら、

まさか自殺した人だなんて思わないんじゃないかというくらい

普通の表情で、普通の状態だったんですよね。

 

そのことに、私も妹も、ひとまずホッとしたのですが・・・

 

ただ、お兄ちゃんのこの状態は

本当に無問題なのかと言うと

少なくとも私は、ちょっと考えてしまうのです。

 

そもそも、なぜ、お兄ちゃんが今、

ドロドロとした状態になく、

私達に恨みつらみのようなものを向けてこないのかと言えば、

お兄ちゃんが、死を選んだことをまったく後悔していない上に、

私達にまったく、なんにも、救いを求めておらず、

言うなれば、微塵も期待していないからです。

 

可愛さ余って憎さ百倍ということわざがありますが、

愛されたい、仲良くしたい、

自分の思う気持ちと同じだけの気持ちを自分に向けて欲しい、

そんなふうに思うからこそ、

それが思うように叶わないと、

やがてその思いが憎悪となっていく・・・なんてことが良くあります。

 

でもそれは、元を正せば、

相手に求める気持ちがあるからこそ起こる現象なわけで、

私達はみんな、お兄ちゃんがそんな精神状態にあるんだと

勝手に想像していたわけです。

 

でも、実際は違いました。

 

もしかして、かつてはそんな気持ちだった頃もあったのかもしれませんが、

少なくとも、もう今は、とっくにそんな気持ちはなくなって、

私達に「わかってもらいたい」なんて思ってもいなくて、

良くも悪くも心の中で割り切ってしまっていたわけです。

 

そして、生きることへの執着もなくなったので、

今のお兄ちゃんは、憂いもなく、後悔もなく、

私達に頼ろうという気持ちもないから、

私達は何も感じない状態なんです。

 

それって、どうなんだろう・・・と思ってしまいます。

 

自分のことだけを思うなら、

何も私達に求めていないのだから、

私達は、なんの負担もなく、楽と言えば楽なのかもしれない。

だけど、お兄ちゃんのこの精神状態って、なんていうか、

誰かと温かい関係を築くことなんて出来ないんだよと

諦めてしまった人の成れの果てなんじゃないか・・・と思うんです。

 

もし、そうなら、

それはそれで、やっぱり悲しいことだな・・・と思います。

 

きっと、これまでのお兄ちゃんの人生において

私達との向き合いを含め

世の中は、お兄ちゃんに冷たかったんでしょうね・・・

 

じゃあ、どうすれば良かったのか。

誰もが、自分の人生を生きることに必死だっただけで

お兄ちゃんに冷たい気持ちだったわけではないので、

当然、悪気もなかったわけで。

 

たとえ、お兄ちゃんが何も求めていなかったのだとしても、

毎日手を合わせ、成仏をお祈りし続けていますが、

愛ある人生を・・・と願う身としては、

私はお兄ちゃんの死を通して、

今一度考えるべきことがあるなぁと思いました。

 

 

もし、お兄ちゃんに来世があるのなら、

今一度、人と関わり、愛を育んでいけるような

そんな人生を送ることが出来たらいいな・・・と

心から願います。