寝返りを覚えて、やがて僅かにずり這い始めたあるですが、
ハイハイをしないまま、立ち上がることを覚えました。
あの、ひとりで立ち上がった日から随分間が空き、
今度はしっかりと立ち上がることが出来ました。
立ち上がることを先に覚えてから、
ハイハイが出来るようになったというような流れです。
行動範囲も少しずつ広くなりました。
夜は相変わらず4時間程度を眠ると起きて泣いていましたが、
朝は起きても泣きません。
起きたら、まずはひとりで遊ぶのがあるの朝の過ごし方でした。
目が覚めても泣かないということは、
あるが起きても、私たちが眠っていれば気が付かないということです。
今回は、丁度そんな頃に起こった、
あの恐ろしい事件のことを綴ってみたいと思います。
あの事件があったのは、忘れもしません。
ある日曜日のことでした。
朝、ふと目が覚めると、私たちの近くであるがひとりで遊んでいました。
みーくんはまだ眠っています。
あるは機嫌よくひとりで遊んでおり、目が覚めた私に笑い掛けてくれました。
家族3人、同じ部屋にいます。
でも、何かがおかしいと違和感を感じました。
違和感の正体は、すぐに分かりました。
襖が少しだけ開いていたのです。
丁度、赤ちゃんが通れるくらいの幅に。
私たちは、襖を開けっ放しで寝ることはありません。
この頃は、襖を閉めておけば、あるは部屋から出られない筈だったのです。
それなのに、どうして襖が開いているのでしょうか。
胸騒ぎがして、廊下へ出てみると、そこにはやかんが転がっていました。
やかんで遊んだような形跡も見受けられました。
恐らく、朝、目を覚ましたあるは、ひとりで襖を開けて、
キッチンまで行き、ガス台に置いてあったやかんに手を伸ばし、
どうにか掴むことが出来たのだと思います。
立ち上がっても、まだあるには届かないようにも思えましたが、
どんなことをしていたのかを知っているのは、あるだけです。
幸いにも包丁などの危険なものは、高い場所に置いていましたし、
やかんの中身は空でした。
あるに怪我はありませんでしたが、ゾッとしました。
もしも、簡単に手が届く場所に包丁を置いていたら、
もしも、あるが他のものや場所に興味を持っていたら、
大怪我では済まない可能性も十分にあったのだと思います。
このやかん事件があった日に、どうにか対策をしなければと、
みーくんと話し合い、早速、部屋の中に柵を取り付けることにしました。
赤ちゃんとは、突然に、大きな成長を見せ、
昨日まで出来なかったことが、今日は突然に出来てしまったりもします。
この日のあるは突然に、襖を開けることが出来た日でもありました。
著しい成長に喜びたいところでしたが、この日ばかりは、
喜びよりも、この子を無事に育てなければと、
より一層気を引き締めた日となりました。