マンガの翻訳はムズカシイ

2022/09/28

雑記 - 創作関連

 先のアクセスupに、軽く動いてみるで書いたように、私はpixiv(ピクシブ)にイラストや4コママンガをupした。仕上げた4コマを英訳してもみたが、とにかく翻訳が難しい。
 翻訳とはその地域の文化を含めたものなので、バックボーンの文化を知らないと意味が通じない、または理解できない事になる。

 CD以前の昔、洋楽レコードは日本版より輸入版の方が早くリリースされるため(そして価格も少し安い)、私はそれを購入する事もあった。単純に輸入された物だから、当然日本語訳の歌詞カードなど無い。私は英語の授業は嫌いで成績も悪かったが、人間、欲するものに努力はする。英和辞書を片手に必死に歌詞を日本語訳してみたりもした。
 ある時「あなたがいれば、私は街に買い物に行かなくてもいい」というような内容の歌詞があった。直訳するとそうなるわけだが、日本語として意味が理解できない。
 恋と買い物と、何の関係があるんだ?
 数年後、意味が理解できた。あれは「買い物依存症」を指していたのだろう。「あなたがいれば(心が満たされて)買い物なんてしなくていいの」みたいな意味なんだろう。レコードがリリースされた頃、日本では買い物依存症は認知されていなかった。数年後、日本でも欧米のようにその心の病が知られるようになる。
 そういったわけで、文化は翻訳に深く関わっている、と痛感した。

直訳が変なら日本語を変えてみる

 現代ではネット上で多言語自動翻訳は簡単にできる。できるが、それが必ずしも上手く翻訳できるかと言うと、そうでもない。言葉が文語的なのか口語的なのか、言い回しは古臭いのか今風なのか、堅苦しいのかくだけた感じなのか、受け止めるイメージがいくらでも変わってしまう。翻訳の行為はオリジナルから必ず変質してしまうものだが、なるべくそれに近い形にしたいと思うのは当然だ。
 自分の描いたわずか3ページ(のちに1枚追加)の4コママンガであっても、翻訳するのに悩んだ。もちろん私に英語力がほぼ無いのが一番の問題ではあるが、DeepLの助けを借りても、やはり悩むのだ。
 着替え中に異性が部屋に入ってくると言うベタな内容だが、2ページ目で描き文字風に「見られて困るカラダじゃないわ」と入れた。これは自分のボディスタイルに自信のある女性2人が、下着姿くらい見られたって気にしない、急ぎの用なら、その要件の方が重要だと対応する場面。イメージが伝わるように漢字の「体」や「身体」では無く、カタカナの「カラダ」にしてある。彼女たちの自信が溢れる言葉だ。
 しかし、これを英語に直訳すると多分、伝わらない気がした。

DeepLを使ってみる。
日本語:見られても困る体ではない。
英訳:It is not a body that needs to be seen.
他、Not a body that needs to be seen.
 Not a body to be seen.
 I don't have a body to be seen.
なんか、これ、違うな!

 この場合、日本語の方を変えてみる。
日本語:体を見られても問題ない。
英訳:I have no problem with people seeing my body.
他、It doesn't matter if they see your body.
 I have no problem with people seeing my body.

んー、こんな感じかな? と言うわけで、より簡潔になるように、

I have no problem with people seeing my body.」を採用した⋯⋯ハズ。
 あれ? 主語、抜けてるやん。微妙に違うし。おかしいな。手元に資料残ってないや。なんでこれにしたんだっけ? DeepLの訳、その時と現時点とで違う? 私はコピーアンドペーストでしか使ってないんだけど。半分ぼーっとした頭で作業してたから、主語が無いのは自分のミスかもしれない。ごめん。
(後日「Our bodies are not a problem to be seen.」に修正した。やっぱ 複数形だよね。日本語だと主語を省略しちゃうから気にしないけど)

見られて困るカラダじゃないわ

方言は、どうすんの

 描いた4コマ、キャラクターのひとりジタンダは言葉の語尾に特徴がある。この訳し方はどうすんだろ? と思い、たとえば方言みたいなものかと調べる。方言を訳するのは、やはり難しいようだ。方言は無視する、違う地方の言い方を当てはめる、などが答えであったが、私には無理、できない。よほどの英語圏ネイディブじゃないとわからない。そこの所は、放っておいた。ごめんよ、ジタンダ。

大文字は見づらいから小文字も入れた

 英語のマンガは、基本的にセリフは大文字のみ。読みづらい! なぜかと思って調べてみると、過去からの慣例である。セリフを手書きでしていたため、小文字は小さく、欠けやすい等により、判読性を重視して大文字だけになった。
 それが慣例として残り、現在でも大文字で表現されているという。慣れれば問題ない、との事だが、私にはとにかく読みづらい。ので、私は小文字も使った。

描き文字に悩む

 マンガにはオノマトペが描き文字として存在する。擬音語、擬態語ね。日本語は他国に比べてオノマトペが非常に多いらしく、日常的に使われているし、マンガの中においても状況の雰囲気や心情の表現に描き文字として多く使用されている。これがまた、厄介だ。
 ドカッ!
 バン!
 シーン
とか、あるやつね。これをどう訳するのか? 難しすぎる。自分の4コマ、最初は訳さずに、そのままにした。
 10年ほど前に「鋼の錬金術師」の英語版を数冊購入した事がある。これは非常に原作への愛が深くて、描き文字は訳されているし、本編後の4コマもあり、ましてやカバー下のイラストまでちゃんと巻末に掲載があるという代物だ。同時期に「あさきゆめみし」や「ベルサイユのばら」の英語版も見たが、こちらは描き文字は訳されずに日本語のまま。
 オノマトペの描き文字を訳するかどうかは、出版社によるのだろう。
(それらのマンガは、日本版の倍以上の値段の高さだけど。翻訳の手間と、発行部数の少なさを考えれば仕方がないのか)

FULLMETAL ALCHEMIST

 そのままにしたが、やっぱり気になる。描き文字はマンガ表現のひとつとして、重要なのだ。ネットで調べてみると、とてもナイスなページに辿り着く。

the JADED NETWORK
http://thejadednetwork.com/

アニメ・ゲーム・マンガのウェブサイトだが、日本のオノマトペの英訳が大量にある。カタカナのインデックスがあるので探しやすい。もう更新されていなのかな、でも非常にありがたい。オノマトペの英訳は、こちら。
http://thejadednetwork.com/sfx/

 そんなわけで、あとからオノマトペを翻訳して、データを修正しupする。
 pixivの有料会員になると、データの再アップが可能だ。最初の1ヶ月の無料期間があったので、その期間内に解約すれば料金がかからないため、これを利用する。初めて利用する時にだけ可能な事だから、2度と同じ手は使えないけどね。

 その後Twitterで、マンガ英訳についての同人誌がある事を知り、購入。
兼光ダニエル真さんの「マンガ英訳の作法」

マンガ英訳の作法表紙

 職業翻訳家の方なので、指針作りから始まり、表現法、フォーマット作りなど、大変勉強になった。私は単なる趣味であるが、知識が増えるというのは面白いものだ。

コマとフキダシの進み方

 日本語は右から左への縦書きの文章。ゆえに、コマ割りも右から左へ。セリフの順番もそれにならう。英語は左から右への横書きの文章。当然、コマ割りもセリフ順もそうなる。
 自分で描いたのは4コママンガなので、単純に上から下へ読み進めるコマで問題無い。しかしセリフの順番は? と思った時に、気づく。手元の「鋼の錬金術師」英語版は、原本と同じ絵柄、セリフの順番である。本自体も日本語版同様に右綴じだ。つまり英語の内容でありながら、それ以外は日本語のフォーマット通りになっているわけだ。
 マンガは文字を追う視線に合わせてコマ割りやセリフ順があるわけだが、英語版でそれをやろうとすると、
 絵を変えるか、
 セリフ順を変えるか、
に、ならざるを得ない。
 絵を変えるのは単純になら、逆版にすればいい。しかしこれをやると右利きは左利きになり、服の合わせも逆になり、絵としておかしくなる。さりとて、コマ割りをひとつひとつ変えていくのは大変な労力が必要だし、斜めのコマがあったりすれば、それは無理だ。
 セリフ順を変えるにしても、セリフごとにフキダシの形や大きさは内容に合わせてあるので、上手くはいかないだろう。
 原作のテイストを変えたくないと思うのなら、左から右へ読み進める英語であっても、不自然ながら日本語のフォーマットで読んでもらうのがベスト、に落ち着くのだろう。おそらくは慣れとして、日本のマンガは「こう読むもの」という共通認識なんじゃないかな。
 一応、巻末にはマンガの読み方の説明がある。

mangaの読み方

VIZ Media 「FULLMETAL ALCHEMIST」巻末より

 ああ、ありがたいなあ、外国の読者の方々。いや別に私は関係者でもなんでもないけど。マンガ好きとしては、嬉しいよ。
 ちなみに英語のMANGAは「日本のマンガ」を指しているそうな。英語圏製作でのそれはCOMICやCARTOONと区別されているようだ。

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