響きあう名宝 ー曜変・琳派のかがやきー

静嘉堂文庫美術館

2022年10月15日(土)


 

10月1日、静嘉堂文庫美術館が東京 丸の内の明治生命館に移転、オープンしました。世田谷区の二子玉川に所在していた時は交通の便が悪く、美術館としても古いため、あまり行かなかったので今回の移転、リニューアルを歓迎します。



明治生命の1階を間借りしていて展示スペースは広くないのですが、東洋美術の中心のコレクションは難しいので、このくらいがちょうどいいです。

 

今回の企画展は昨年の夏に行った三菱一号館美術館「三菱の至宝展」と展示内容はかぶっています。ですがあの時と今と私の感じ方がどのように変わっているのか、比べてみるのも楽しみです。

 

今回は国宝を中心に取り上げます。

 

 

6 倭漢朗詠抄 太田切 ◎

和漢朗詠集は先日、東京芸術大学美術館の展覧会でピカピカのものを見た記憶が鮮明に残っているので、色褪せている分、見劣りしているように感じますが、こちらも国宝。名前も違うので調べてみました。こちらは藤原公任撰の和漢朗詠集を書写したもので同時期に作られたもののようです。

 

古くて傷んだ部分は観察力と想像力で補うところです。料紙には金の刷物に金の粉を蒔き、さらに金で絵付した贅沢なもの。そこに達筆で漢詩と和歌が交互に書いてあります。要するに芸大で見たものと同じ仕様ということです。本物と同レベルのレプリカ、いや、絵画ではなく書ですからこれも真作みたいなものでしょう。

 


19 伝 馬遠 風雨山水図 ◎

この絵は過去に何度か見たことがありますが良さが分からなかったので、今日はじっくり観ました。紙が茶色く、墨の濃淡も分かりにくい。木の葉に緑の絵の具を使っているらしいが、色彩も判別できないくらい。それでもじっと見ていると、遠くに切り立った岩山、手前に葉が茂る大きな樹木、その足元には渓流があり右下には船、左の小道では男が前のめりに歩いている。写実性の高い水墨画に見えます。

 

 

21 牧谿 羅漢図

羅漢とは悟りの境地に到達した高僧のこと。座禅をくみ瞑想している僧の目はどこか虚空に視点を合わせていて、髭は伸び放題。そばに蛇がとぐろを巻き、膝の上に乗り口を大きく開き牙を剥いている。命の危険が迫っていても揺らがない姿を描いている。どこまでが衣服で、どこまでが蛇で、どこまでが地面かも判別しにくい状態ですが、静かながらも迫真の場面をとらえた作品です。

 


23 因陀羅筆 楚石梵琦題詩  禅機図断簡 智常禅図  ◎

因陀羅(いんだら)という高僧が描いた禅機図です。禅機図は禅の悟りの場面や内容を絵で表現したもので、高僧智常(ちじょう)禅師が張水部(ちょうすいぶ)に何か話している場面です。その絵に楚石梵琦(そせきぼんき)という禅の高僧が讃を加えています。

 何の公案か内容が分かると感情移入しやすいのですが不明だそうです。少し残念ですね。

 


46 俵屋宗達 源氏物語関屋澪標図屏風 ◎

六曲一双の屏風絵。源氏物語の第十六帖「関屋」、第十四帖「澪標」を描いている。

 俵屋宗達の絵は手の抜き方が凄い。主役と脇役の差の付け方が尋常でない。関屋の背景の山なんかこれで山ってわかるだろ、という雑さ。住吉大社の反橋も人が渡れないくらい反っている。澪標の明石の御方の乗る船の貧相な感じ。砂浜もそれと分かる程度で構図にアクセントをつけるパターンのよう。いわゆる漫画的な記号的表現。伝わることが大事であって、いたずらに技量を誇示しない。

 その分、主役の光源氏の乗る牛車はしっかり描かいて引き立てて見せ、しかし光源氏の姿は描かず観るものの想像に委ねる。仕掛けのうまさが、天才的。

 

66 曜変天目(稲葉天目) ◎

曜変天目は実物を近くで見ると細かい傷がありあまり美しくない。茶器は道具ですから使ってこそ意味があるので傷がつくのは仕方がない。しかし今回は展示ケース、照明が改良されたのか傷が目立たなくなっていた。よりいい状態で、美しさを目の当たりにできるのはありがたいです。




75 趙孟頫  与中峰明本尺牘  ◎

趙孟頫(ちょうもうふ)は中国南宋~元の政治家、文人です。書画にも秀でいて、王羲之の書風に熟達していたそうです。この作品は中国の名僧、中峰明本(ちゅうほうみんぽん)に当てた尺牘(せきとく※手紙)です。しかしいくら名人とはいえ、手紙が国宝になるのは書の世界ならではです。揮毫や寺院奉納するお経、飾るための掛軸など、特別な目的のために気合を入れて書いたものではなく、日常のやり取りの文章ですからね。

 この立派な手紙は岩崎小彌太の書道のお手本に購入したそうで、金持ちで教養のある方はやることが違います。

 

 

76 手搔包永 太刀 銘 包永

  附:菊桐紋糸巻き太刀拵 ◎

刀工の一族はみな名前が変わっていて読みにくいです。手搔包永(てがいかねなが)は大和国(奈良県)の刀工。鎌倉時代(13世紀)の作。細かいことはわからないですが、長く立派な太刀です。しかし私はもう少し武骨でシンプルな太刀の方が好きなようです。

 菊桐紋糸巻き太刀拵(きくきりもんいとまきたちこしらえ)は、その名の通り、菊の御紋と桐の御紋の金の刺繍が交互に入った贅沢な平紐で飾られた金の鞘です。これは見ていて飽きないです。

 

今回はここまで。


漢字が難しく書くのが大変でした。その分、勉強になりましたので、めげることなく東洋美術も見に行き書いていくつもりです。

 

 

↓ランキング参加中!押していただけると嬉しいです!

にほんブログ村 美術ブログへ