《After the Echo》

2024年4月7日(日)

ICC 4階 シアター



NTTインターコミュニケーションセンターで、3月28日から4月21日まで、坂本龍一のパフォーマンス記録映像を特別上映しています。作品は3本。


  • 《LIFE–WELL》(再編集版) 2013

   野村萬斎+坂本龍一+高谷史郎


  • 《After the Echo》 2017

   カミーユ・ノーメント,坂本龍一


  • 「坂本龍一 with 高谷史郎|設置音楽2 IS YOUR TIME」 コンサート 2017

   坂本龍一


1本500円です。4階にあるミニシアターで上映しています。座席数は30席程度。





今回はこのうちのひとつ、《After the Echo》を取り上げます。


この作品は札幌国際芸術祭2017おいて、毛利悠子が出品したインスタレーション作品「そよぎ またはエコー」を用いて行なった即興のパフォーマンスを映像作品として仕上げたものです。


パフォーマーは、カミーユ・ノーメント、坂本龍一の二人。

 

まず、毛利悠子の「そよぎ  またはエコー」から。この作品は札幌市立大学内の空中歩廊「スカイウェイ」に作られました。札幌市立大学デザイン学部の芸術の森キャンパスに建てられた建築の一部で、2つの校舎を接続する全長140メートルの空中通路です。





毛利悠子は北海道の各地を旅しながら、音の出るものを集めてきました。といっても、使わなくなった街灯、変電所にあった碍子など、本来音を出すものではないものばかり。これらに音を出す仕掛けを施し通路に並べて展示、スカイウェイを歩くと様々な音が聞こえてくるサウンドアートです。


このスカイウェイの一番端には、自動演奏する仕掛けをしたグランドピアノが設置され、不定期に音を奏でます。坂本龍一は自動演奏される楽曲のひとつを提供しています。

 


そよぎ またはエコー(部分展示 坂本龍一トリビュート展 ICC)



このインスタレーションを使い即興のパフォーマンスを行いました。坂本龍一の楽器はグランドピアノ、カミーユ・ノーメントはグラスアルモニカ。


グラスアルモニカは、グラスハープを用いた古典楽器です。グラスが横向きに繋がり回転する構造で濡れた指先をあてると、不思議な音をだします。たまたま落ちているようなものではないですから、カミーユ・ノーメントが持ち込んだものでしょう。


現代アートのパフォーマンスですので、一般的な音楽のジャムセッションではありません。坂本龍一は響板を開けて弦を弾いたり、側板を叩いたりし、カミーユ・ノーメントも曲を弾くのではなく効果音のような音を出して、環境音楽のようでした。映像には北海道の自然の風景や屋外に展示された芸術祭の出品作品がインサートされ、ゆったりとした心地よさがあり少し寝ましたが、後半には坂本龍一もピアノの鍵盤を弾いて音を出し、聴きやすくなってきところで、どういうタイミングで終わるのか決めていたのかわかりませんが、終わった感があり、観客から拍手で終了。


現場で見ていないので想像で述べるしかないですが、毛利悠子のインスタレーションは北海道の旅の音のスケッチをまとめたアルバムのようなもので、この即興パフォーマンスはそこにインスピレーションを得て行ったものと思います。


パフォーマンス映像のあと、毛利悠子が北海道を旅しながら音の素材を集め、スカイウェイでインスタレーションを制作する映像もあり、全体としては、パフォーマンスを含めた、作品全体のドキュメントとなっていました。


坂本龍一はコンポーザーでありながら、演奏家でもあり、しかも他のジャンル、現代アートのアーティストと共演もできるというマルチな才能の持ち主ということがあらためてわかる興味深い作品でした。



 

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