「なあ、お前はなんでこんなことをしているの?」
「なにがだ?」
「何がだってさぁ・・・お前、検非違使だろう?
それなのに俺達と行動を共にしているなんておかしいだろう?」
「確かにそうだな、だがその前に人でありたいものだな」
焚火の前に2人の男が座っていた。
1人は野党同然の姿をしていて、目つきが鋭く、周囲を警戒するかのようだった。
もう1人の男は腰に刀を帯び、立派な装いをしていたが隣にいる男に負け時劣らずの尋常ではない眼の鋭さだった。
それぞれに焚火を見ながら、ぼんやりと座りながら手を動かしていた。
「なあ、お前はなんでこんなことをしているの?」
「なにがだ?」
「何がだってさぁ・・・お前、検非違使だろう?
それなのに俺達と行動を共にしているなんておかしいだろう?」
「確かにそうだな、だがその前に人でありたいものだな」
手に持っていたものは小刀と、そのあたりに転がっている木だった。
会話をしながら木を削って何かを作っていた。
「なんだ、お前は人ではいなと言いたいのか?」
「・・・それがどうかしたのか?
貴族からすれば俺のような奴隷など人ではないと言えるだろう、だから俺は人でありたいものだ」
「・・・そうか、お前、奴隷あがりだったのか」
「だったらどうした?」
苛立ったかのように鋭い目で相手を見た。
「検非違使なのになんで俺たちのような者といるのかって不思議だったのさ、使い捨ての道具なら納得だよなぁ・・・」
「・・・だからどうした?」
氷よりも冷たい目で相手に言い返した。
「おお、やるのおぅ、いいぜ、その首獲ってやるよ」
「・・・・仕方のない奴だ」
それぞれに刀に手をかけると、殺意が交差しなかった。
「なにやっているのよ、あんた達は!!」
「・・・静美奈」
「あ、いや、なんでもないって!」
2人の背後から突然、女性が飛び掛かってきた。
「嘘おっしゃい!とんでもない殺意だったわよ、お陰でみんな飛び起きたわ!!」
その声に合わせるかのように、周囲にいた者達が批難と共に迷惑そうな目で2人をみていた。
「あ、いや、すっ、すまない!!」
「・・・・起こすな」
地獄の底から響いてきたような、迫力のある声だった。
「風切・・・・す、すまぬ!」
「なに謝っているんだよ、聞いてくれよ風切、元はと言えばこいつが・・・」
「お前達・・・・五月蝿いと言っているのがわからないのか?」
なんでもない時間が安らぎの時間になることを、この時は誰も知らなかった。