6月はプライド月間で、街はレインボーフラッグの装飾で溢れ各地でプライドのイベントが開かれます。各種イベントはコロナで過去2年間中止されたりヴァーチャルに移行したりしていましたが、今年はライブなプライド月間が戻ってきました。私がアメリカに移住してきた頃は、まだLGBTの祭典、という感じでマーチに参加したり、フェスティバル会場を訪問したりする=LGBT当事者、みたいな感じでしたが、今では、性的嗜好だけでなく、広い意味でさまざまな平等を訴える雰囲気がトレンドになっています。

 

ワシントンDCのプライド・フェスティバル(6月12日)

 

アメリカの活力を見るようで好きなイベントの一つです。私がマンハッタンに越してきた頃は、最高裁で同性婚は合憲かどうかを審議していた時期で、人権運動のようでとても勢いづいていました。そして、全米で同性婚が認められるようになった2015年のプライドの歓喜は最高潮に達したように思います。しかし、それも束の間、2016年の選挙で、基本的な政策としてLGBT排除を掲げる共和党が政権を取ると、リベラル路線のオバマ政権から一転して、LGBTコミュニティーは不安の渦に陥れられます。権利を剥奪されるかもという不安はもちろん権利闘争の原動力になるので、2015年以前のプライドとはまた違ったメッセージが帯びることもありました。

 

NYプライドマーチよりこじんまりとしていますが、参加者は多様

 

アジア系やアフリカ系など各マイノリティーグループも仲良く行進

 

今年は、コロナ禍明けで久しぶりに開催というところが多く、大いに盛り上がっています。先週の週末は、日系人ノーマン・ミネタ氏のメモリアルサービスでワシントンDCを訪問していたのですが、たまたまプライド週末に重なり、天気も良かったのでDCのプライドイベントに参加してきました。ワシントンDCのプライドは、「Capital Pride」と銘打って、NYと同様に長い歴史があります。今年は11日土曜日に、全米でも有数のゲイタウン・デュポンサークル付近でプライドマーチがあり、12日日曜には国会議事堂付近の通りを封鎖してフェスティバルが開かれていました。DCのプライドに来るのはこれが2回目で、個人的にはニューヨークのプライドよりも居心地がいい感じがします。まずこじんまりとしていて、商業主義が行きすぎていないのと、参加者の年齢層が広いように思えます。そしてさすがアメリカの首都なので、フェスティバルには、営利企業はもちろん、さまざまな権利団体、宗教団体、マイノリティーのグループ、業界団体などが参加していて興味深いものがあります。

 

首都警察もブースを出していて白バイとイケてる警官さん達は人気の的でした

 

我々は、数年前のホリデーパーティーで知り合った、ヴァージニア在住の韓国系の友人Rが、自分が経営するLGBT向けの旅行会社のブースを出しているというので激励訪問(←政治家かって感じですが、DCにいたので、なんとなくこの言葉を使ってみたく、、、)してきました。結構人だかりができていて、声をかけるまでに時間がかかってしまいましたが、コロナ明けで、アジア各国が国境を開き始めたので、旅行バブルで忙しいようで何よりです。今年は優しそうなクマさん系の旦那さんも動員して二人でブースを切り盛りしていました。割とアメリカのマイノリティー・ビジネスは、行き当たりばったりなところが多くて、数年で廃業というパターンを繰り返すのですが、彼の場合ニューヨーク大学でツーリズムの修士号持っていて、その知識を有効活用してビジネス戦略をしっかり立てていると思いました。DCとその周辺に住んでいる金持ってるゲイをリピーターにして、韓人コミュニティーだけに頼らないアウトリーチ、そしてイスラエルとか中東とか、アジア以外の旅行商品のポートフォリオ展開を戦略的にしているようでした。プライドフェスティバルでこんな思いがけない発見をするとは思ってもいませんでしたが、とても刺激を受けました。

 

本当は日本もデスティネーションに加えたいけれども、まだまだ日本人と外国人を区別して扱う水際対策が残っていて外国人にはフレンドリーな状況ともいえないし、日本は手続きや認可関係が色々と面倒な国らしいので様子見だそうです。「君が手伝ってくれたら東京もラインアップに加えるよ!」と冗談を言われましたが。

 

もう長いことこのビジネスをしていて、リピーターが多いそうです。下は、彼の会社のリンク。

 

 

さて、もう一つ、各人種マイノリティーが自分たちのLGBTグループを展開していてブースを出してアピールしている点が面白い発見でした。Rの旅行会社のブースを訪問したときに、彼から「日本人と韓国系アメリカ人のゲイカップルが、コリアンコミュニティーKQT DCのブースにいるから行ってみたら」と紹介してくれたので寄ってみました。すでにそのカップルは帰ってしまった後でしたが、米韓ビアンカップルが私が日本人だと知ったら話しかけてきてくれて、二人が東京で出会ったことや、今も第2の故郷みたいに思っている話をしてくれました。みなさん、とても親切で韓国系のLGBTコミュニティーがこういったサポートシステムを作り上げていることに羨ましさを感じました。

 

韓国系以外にも、各国のグループなど様々な人種マイノリティがそれぞれを代表してブースを持っていました。大使館がバックアップしている国もありました。日本人でこちらに根付いているゲイは数が少ないのと、私もそうですが、基本的に在米日本人はゲイ・ストレート限らず、目立たないように生活している人が多い印象。自分たちでグループを立ち上げたり、というのは苦手なのかもしれません。ここDCにも日本人のブースはありませんでした。それと、日本人の場合、ゲイとレズビアンは面白いくらい断絶していて、何か一緒にやる、という機運があまりないので、マイノリティーグループとして勢力になりにくいということも一因かなと思いました。

 

韓国系のLGBT団体。この他、LGBTを子供にもつ親の会などもあり韓国系の結束の強さを感じました

 

そのほかにもいろいろなブースが出店していて、またストリートパフォーマンスも行われていたので、当初は、1時間くらいで切り上げて帰ってくる予定でしたが、結局半日近く過ごしてしまいました。ニューヨークのプライドはと違って、大々的にビールやカクテルなどアルコールを提供する区画もあって楽しい雰囲気でした。また機会があれば来年以降もぜひ訪問してみたいと思いました。

 

さて次の週末はついにニューヨークプライド・ウィークエンド。先ほど、旦那Dの元同僚Aさんから彼が属するグループ「〇〇・ゲイ・ダディーズ」(〇〇はAさんが住む地区の地名)で参加するけど、一緒にマーチする?と誘われています。名前が紛らわしいですが、露出高めで完熟肉体自慢のイケてるマッチョ・ダディーのグループではなく、ゲイで子供を持つ父親たち、という趣旨のグループらしいです。Dも私もどちらの部類にも属しないので、少し引き気味。それでも数年前の我々だったら二つ返事でOKだと思いますが、もうマンハッタンのプライドマーチは何回か参加していてもう卒業したよな〜、、というのが本音。一方でコロナ明けの開放的なプライドの雰囲気も感じたいという気分もあります。まだ決めかねていますが、成り行きはブログでお知らせいたします。

 

気温が上がると半裸軍団が出現するのはお決まりパターン