11月ももう半ば。12月のホリデーシーズンの週末の予定をどう調整しようか色々悩む時期です。ニューヨークに長年住んでそれなりに知り合いが増えてくるので、夕食会やホームパーティー、チャリティーイベントに誘われたり、友人が属する管弦楽団や合唱団のホリデーコンサートに招待されたりと、どのイベントを優先しようか迷います。またお気に入りエンタメグループのパフォーマンスなどなど、色々なイベントが12月の週末に集中します。Dと私が例年楽しみにしているのはニューヨークシティー・ゲイ・メンズ・コーラス(New York City Gay Men's Chorus)のホリデーコンサートです。コロナで中止になっていましたが、今年はついに戻ってきました。

 

例年演目は、人気のクリスマスソングからポピュラーソングのコーラスアレンジ、そしてミュージカル仕立ての演出コーナーとバラエティーに富んでいます。主な観客層であるLGBTQコミュニティーの権利擁護のメッセージから、お色気要素まで、観る者を飽きせせない真のエンターテイメントで、まさに笑いあり涙あり。クリスマスの時期の暖かな時間を過ごすにはとてもいいコンサートです。一応アマチュアの合唱団ということになっていますが、200人近いメンバー構成で、当然全員暗譜、ビジュアル的にも声量も圧巻そのものです。実際にはブロードウェイやオペラ方面で活躍を夢見るスターの金の卵のような若い歌い手のメンバーも結構いて演奏レベルはプロと言ってもいいでしょう。ステージ中、少数精鋭のメンバーだけで構成するユニットの演奏もあったりします。いい席は100ドルくらいしますが、それでもほぼ満席の観客で埋まります。

 

200人近い男がステージの乗る様は圧巻

 

ブロードウェイの演目みたいに、広告もあちこちに登場

 

今やメインストリーム化していてメディアにも多数出演

 

 
私が一番記憶に残っているのは5−6年前のコンサート、メンバーの思い入れのあるクリスマスソングを歌うステージです。その年は、MC(司会者)ではなく、メンバーが変わるがわる、演奏する歌にまつわるエピソードを紹介しました。大体みな、今の恋人と初めてのデートでかかっていたのがこの曲だったとか、長年ゲイであることを受け入れてくれなかった母親がついに理解してくれた時のことを思い出すとか、ハッピーなエピソードを披露していました。その中で、30年間連れ立ったパートナーを亡くしたメンバーが二人の思い出の曲を紹介した時のシーンが今でも忘れられません。(以下、邦訳。一部記憶違いの箇所があるかもしれませんが)
 
僕とFがあったのは大学生の時。もう30年も前のこと。

僕らは、何事も計画をたてて、夢を一歩一歩実現して、幸せに一緒に生きてきました。

 
大学を卒業したら、計画通り、マンハッタンで仕事を見つけて一緒に暮らし始めました。

数年して貯金して、計画通り、マンハッタンに二人で初めての家を購入しました。

2000年の春には、計画通り、初めてのワンコを迎え入れました。

2010年の夏には、計画通り、ずっと憧れだった夜景の綺麗なタワマンへ引っ越しました。

2014年の秋には、計画通り、正式に結婚して、二人の両親を招待してお気にりのレストランで披露宴。

2016年の冬には、計画通り、Fは仕事をリタイアし二人で欧州一周旅行に出かけました。
 
だけど、いつもは、何でもきちんと計画するFが、昨年何の計画もなしに逝ってしまいました。
 
会場がシーンと静まりかえって、ところどころからすすり泣く声も聞こえてきました。私も、自分と旦那のことを思い、ゲイ友が隣にいるのに涙を堪えきれなくなりました。

こうして文字にしてしまうと伝わりづらいかもしれませんが、このエピソードを紹介したメンバーと自分の境遇と重ね合わせたり、結局最後は一人になるのかも、という漠然としたゲイ特有の孤独感を感じたり、と感情を揺さぶられました。
 
この時期、市内に出張公演も多数
 
あたたかな気分に包まれること間違いなしです
 

今年も、どんな演奏が展開されるのか今からとても期待しています。また、華やかな会場に行くこと自体楽しみです。たまにニューヨーク在住のセレブも来場したりして社交の場の一面もありますが、会場は、旧知の友人たちと親交を深めて、ホリデー気分を味わう温かさな雰囲気で包まれています。しばらく連絡をとっていなかったような友達と遭遇し近況報告で盛り上がったり、結婚したことを伝える機会がなかった友人にはDを紹介したりと、今年は誰に再会できるかも今からワクワクしています。

 

Twinkly Lightsと題して、NYUキャンパスにあるSkirball Center for the Performing Arts12月16日〜17日にかけて合計3回の公演があります。17日は昼の部の公演もあるので、夜に予定がある方でも都合がつけばぜひ検討してみてはいかがでしょう。ゲイ男性の合唱団演奏会というと、敷居が高いのではとか、怖いのではと、ひるむ方もおられますが、ストレートの男女もお客さんとしてたくさんきています。また、ゲイメンズコーラスのコンサートの鑑賞に行ったからといって、誰も貴方をゲイだとは思いません。普通のコンサートと違うのは、ゲイ男性達の素顔に触れることができるのと、ゲイ好みのルックスをしている男の人は、熱い視線を浴びるかも、くらいの違いです。