久々に私の職場の大ボスであるベネディクト・サンタバーバラ氏(仮名)の登場です。

 

昨年の11月に彼のオフィスで行われた転職後初の業績評価(パフォーマンス・レビュー)の終わりに、私に新たなプロジェクトをアサインしようと考えていると言われていました。その後、クリスマス休暇を挟んでしばらく彼からは音沙汰がなかったのですが、先週金曜に彼に呼ばれました。以下の記事はここに至るまでの話。

 

サンタバーバラ氏とのからみを紹介した回はアクセス数が上がるので、確実に彼のファンが増えつつあるのではないかと、ここでもう一度サンタバーバラ氏についておさらいします。

  • うちの会社の、たくさんいるシニア・バイス・プレジデントのうちの一人。日本で言うと事業部長。
  • カリフォルニア出身46歳、温和で実直、クセのない性格。
  • スタンフォード大学工学部卒、ハーバードビジネススクールMBA修了。
  • 白人系とアジア系のハーフ。アジア系の血はフィリピンと日本。それぞれの人種のいいとこ取りをしたような容姿。
  • 俳優並みの典型的ハンサム顔、フィットネスモデルのようなカラダ。彼と一緒に歩くと、自分が醜く見えてしまう。
  • 言語は英語、スペイン語、そしてタガログを少々だが、日系のルーツを一番誇りに思っている。
  • アジア系の奥さんと娘2人と、ロングアイランド在住。電車通勤。
  • 欠点は見当たらないけれど、あえて言うなら多忙すぎて、彼とのアポは流動しがち。
  • 私を採用してくれた恩人、彼にはカミングアウト済み
 

彼のイメージ。彼がオフィスにいると、職場の雰囲気が華やぐ

 

仕事の話に戻り、前回彼と会った時には、この1年の業績査定について高評価をもらい、新規プロジェクトへの参画を打診されたのでした。本当は12月中にそのフォローアップミーティングが設定される予定でしたが、多忙な彼の都合でリスケが繰り返されなってやっと先週、面会依頼が来て金曜に会いました。朝一のアポで、この日は、コーロデュロイのズボンに、下の写真のようなコートで登場。オフィスの服装の多様化が進み、カジュアルフライデーなんて言葉はもう死後になりつつあるけれど、コンサバ・トラディショナルな着こなしが似合う彼がこういう服を着ると、古き良き時代のアメリカのオフィス文化の光景が蘇ってくるから不思議です。前回あった時に、服らしい服は10年以上買ってないといっていたので、きっとこの服も、大事に着回しているんでしょう。いい男は何を着ても似合う典型。

 

 

と、また超絶イケメンサンタバーバラ氏の話になってしまいましたが、話の本題、私の経験や実力に合ったプロジェクトをアサインしてくれるという話に戻ります。会話の流れはこんな感じ。

  • サンタバーバラ氏(以下氏):「XYチームのジェニファーって知ってる?」
  • 私:「何度か会議で一緒になったことがあります」
  • 氏:「彼女、来月から産休に入る予定なんです。彼女がやってるプロジェクトはNWさんにぴったりだと思うんだけど、興味ありますか?NWさんの社内でのVisibilityを高めるきっかけもなります。今は、チーム内だけで完結しているけれど、NWには今後社内横断的に活躍してもらいたい。」
  • 私:「そんな機会に私を検討してくださって光栄です。とても興味がありますので、もう少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか」
  • 氏:「もちろん、来週早々にでもジェニファーと一緒の会議を設定します」
とこんな感じで、ものの3分で終わりました。締めは、
 
「This is a very good opprotunity for you to advance, and I believe it will give you very high visibility in the company」(意訳:これはあなたにとってさらに成長する機会であり、会社の中で頭角を現すに助けになることは間違いないでしょう)
 
という殺し文句。アメリカの職場では、定型文ではないかというくらい、上司からよく聞くフレーズです。私の20年にわたるアメリカ職場生活で歴代ボスから聞いてきました。前の会社の胡散臭い上司から言われると、自分の面倒な仕事を押し付けるための体よく使ってるなと思ったものですが、サンタバーバラ氏のような誠実な上司から聞くと、私のキャリア成長を考えてくれてるんだなとモチベーションは上がります。基本的にこういった機会は打診されたら受け入れるのが筋なので、その方向でいますが、飛びつくのは禁物。本当にその任務を遂行できるかどうか見極めは自分の責任なので、ここは承諾は保留して、現担当者であるジェニファーにプロジェクトの詳細を確認する必要があります。
 
それより正直いってしまうと、このジェニファーという同僚、私より年上なので、「え?その歳で赤ちゃん?」と下世話な感想が思い浮かんでしまいました。今まで勤めてきた会社でも、キャリアの中盤に差し掛かって、一息ついた女性が産休に入るケースが結構ありましたが、聞いたところ、彼女は私より1個上。50近くで出産とはかなりの高齢出産ですので、母子ともに健やかな出産を祈ります。
 
そんなことを考えてたら、サンタバーバラ氏から唐突に、「マタハラって知ってる?」と聞かれました。最初、何を言ってるんだろうと思いましたが、MBA時代のクラスメートで今は日本の外資系会社でマネージャーをしている日本人女性からその言葉を聞いたそうです。知的好奇心旺盛なサンタバーバラ氏のことなので、私と産休社員の引き継ぎ計画を話している中で、日本との連想で急に思い出したのでしょう。
 
「マタハラ」とは私も聞いたことはあったものの、日本で働いたのは20年近く前の話。その詳細は不案内でしたので、さっとChatGPTで調べて、サンタバーバラ氏に見せました。
 
 
 
 
日本人の血が入ってるとはいっても、アメリカ人の彼にはマタハラのような現象は不思議に映るようです。出産や育児は祝福されるべきものだし、産休は当然の権利なので、どうして嫌がらせをする素地が生まれるのか。そして興味深かったのが、産休社員に「迷惑」と悪口をいうハラスメントをする側に対して、「自分だったら(産休社員の仕事を)喜んで引き受けて、経験値を増やすけどね。」と言う彼のコメントです。
 
思わず、はっとしてしまいました。確かに、日本の職場だと「誰かが産休などで休む=自分に皺寄せが来て面倒」という傾向になるのかもしれません。一方、アメリカの職場では、誰かが抜けた時こそ、自分を売り込むチャンス、新しい仕事から経験や知識を増やす絶好のチャンス、と捉える人が多いです。と言うことで、私も、ジェニファーの産休を埋めてプロジェクトに参画することで、社内で自分の存在を知らしめ、いい評判を得る大きなメリットと考えています。今後、この会社で管理職を目指すにも、このプロジェクトを通して得られる知識は社内人脈は私を利するものでしかないはずです。あとは、労働時間が長くなり、プライベートを少し犠牲にする覚悟をするかどうかです。
 
それにしても、同僚の出産育児に嫌がらせをする風潮が存在する日本。もちろん、全ての職場がそうではないと思いますが、マタハラなんて言葉が存在する文化。少子化が進むのも当然ですね。アメリカの職場文化に慣れた私は、産休社員のピンチヒッター役への打診が来た時は嬉しかったし、このプロジェクトを経験すれば、後々自分のキャリアの選択肢が広がると信じています。多分、引き受けたからといって給料は上がらないけれど、次の業績評価で加味されて、翌年の昇給と言う形で補償されることになりますので、金銭的なモチベーションもあります。日本では、産休社員の仕事をカバーしたからといって何か金銭的、精神的な補償がないことが多いため職場に残る側に不公平感が発生するのでしょう。
 
と、マンハッタンのオフィスの一室で、上司とこんな議論を展開したのでした。真面目な話ばかりでもなんなので、また超絶イケメン上司にまつわるエピソードを少し。
 
彼のオフィスに飾ってある、二人が若い頃のツーショット(イメージ)
 
この日は微笑ましい発見がありました。サンタバーバラ氏が、奥さんの話を色々してくれたのです。前回の面会の時に、私と彼の奥さんは似てるところがある、と言っていて勝手に親近感を持っていました。なんとなく思っていたのですが、奥さんは日系アメリカ人だそうです。彼のデスクに置いてある写真をチラ見するに、日本のタレントの南沙織や西田ひかるのような健康的な美人。
 
二人はスタンフォード大学の同級生。その後、彼がボストンに移って彼女はそのままベイエリアに就職し、しばらく離れたがその後合流しお互い25歳で結婚。結婚歴20年だそうです。いい物件は早々に(婚活)市場から消えてしまう典型的な例です。二人には娘さんが二人いて、話を聞く限り中、睦ましくも健康そうな家族のようです。
 
話は色々なところに飛んでしまいましたが、最後は、新しい任務の話に戻ります。こう言う新しい仕事を引き受けるのはリスクでもあるのですが、どういう環境でそれを受け入れるかは重要です。私の場合、サンタバーバラ氏のような包容力があり、面倒見のいいボスが近くにいると言うことが、大きな安心感に繋がっています。こうしてプライベートな話もできる関係になっているので、万一ヘルプが必要になった時も、きっとなんとかなるだろいというセイフティーネットがあるかないかは、心理的に大きな違いだと思います。
 
それでは、また、半年後くらいに、新しいプロジェクト始めてどうなっているか、またこちらで報告させていただきます。
 
仕事場で「必要とされている」と言う感覚は大切ですね