電子帳簿保存法改正に伴う、電子取引の保存方法をわかりやすく解説

電子帳簿保存法の改正に伴い、2022年1月1日より義務づけられた、電子取引にかかる保存についてわかりやすく解説します。
この保存方法のうち、とくに個人や中小企業におすすめの費用のかからない方法を深掘りして説明します。

概要について

電子帳簿保存法の改正に伴い、2022年1月1日以降、｢電子取引｣を行った場合には、税務上その｢取引情報｣を書面での保存が認められなくなり、電磁的記録により保存することが義務づけられました。
この改正は、法人だけではなく、個人事業主も対象になります。
※2021年12月に決定された｢令和4年度税制改正大綱｣において、やむを得ない理由があると認められるときは、電磁的記録による保存義務が2023年12月31日まで猶予されることとなりました。

電子取引と取引情報

電子取引とは、以下のものです。
●EDI取引
●インターネットによる取引
(自社もしくは他社のHPより、受発注する取引)
●電子メールにより取引情報を送受信する取引
●インターネット上のサイトを通じて取引情報を授受する取引
(専用のサイトより、請求書などを受け取る取引)

取引情報とは、契約書・注文書・注文請書・見積書・請求書などです。

保存方法

保存方法は、以下の方法のいずれかになります。
●タイムスタンプがされた電磁的記録を保存
●訂正削除の記録が残る、もしくは訂正削除ができないシステムを利用して保存
●｢訂正削除の防止に関する事務処理規程｣を備え付ける方法

中小企業や個人事業主におすすめの保存方法

ここでは、先に記載した保存方法のうち、他の二つと異なり費用がかからない｢訂正削除の防止に関する事務処理規程｣を備え付ける方法について説明します。

｢訂正削除の防止に関する事務処理規程｣

規程の案は、国税庁HPにありますので、｢国税庁　電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程｣で検索してください。
規程は、法人用と個人事業主用の両方あります。
法人用の第5条で保存期間を定めますが、以下のうち最長となるものとします。
●税務上の保存年数⇒7年間
●繰越欠損金があるとき⇒10年間
●会社で文書保管規程等を定めているとき⇒規程記載の年数

保存の流れ(例)

●月初に各従業員(部門の事務をまとめて処理されるときなどは営業事務担当など)が、デスクトップ等にフォルダを作成。
※デスクトップ等に作成するのは、他人が誤って削除・変更をしないようにするため
↓
●電子取引の都度、電磁的記録に名称(ファイル名)を付けて、上記の作成したフォルダ内に保存。
※詳細は下記③にて
↓
●月末に、電磁的記録を保存したフォルダを、管理部門に送る。
↓
●管理部門にて、受け取った電磁的記録の名称に証憑番号等を追記し、仕訳の摘要欄等にその証憑番号等を記載する。
※証憑番号等を記載する理由は、電磁的記録の保存を行うときの要件の一つに“検索機能の確保”が求められているためです。
“検索機能の確保”とは、税務調査の際などに、税務職員の要望に応じ速やかにファイルが抽出できるようにすることです。

電磁的記録

取引種類により、以下の通り電磁的記録を保存する。
●EDI取引
⇒電磁的記録のダウンロードが可能なときはダウンロードデータを、ダウンロードできないときはスクリーンショットを保存。
●インターネットによる取引
⇒上記EDI取引のとき同様、ダウンロードデータもしくはスクリーンショットを保存。
●電子メールにより取引情報を送受信する取引
⇒メール自体が取引情報となっているときはメール自体を保存、メールの添付ファイルが取引情報となっているときは添付ファイルを保存。
●インターネット上のサイトを通じて取引情報を授受する取引
⇒上記EDI取引のとき同様、ダウンロードデータもしくはスクリーンショットを保存。

電磁的記録の名称(ファイル名)の付け方(例)

国税庁｢電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】｣の問12に準じ、以下のようにします。
　｢証憑番号等｣+｢年月日(8ケタ)｣+｢取引先名｣+｢取引金額｣+｢取引情報名称｣
※各項目との間には｢_(アンダーバー)｣を入れます。
※｢証憑番号等｣は、上記②の通り管理部門で追記します。
※｢年月日｣は作成日とした方がシンプルです。
※｢取引情報名称｣は、契約書・請求書など記載されている名称のままとします。

e.g.海山商事からの、1月納品分2022年2月1日発行380,600円の一括請求書を、管理部門で証憑番号f104と付したとき
⇒f104_20220201_海山商事_380600_一括請求書