文字数:約3300文字
四大スピリッツの一つであるテキーラ。
メキシコの国民的蒸留酒であり、世界中で人気を博している。
世界で最も売れているテキーラはなんのか。
イギリスのDrinks Internationalのデータをもとに、
テキーラブランドの販売量ランキングと推移をまとめた。
さっそく見てみよう。
関連記事 ↓

●テキーラブランドの販売量ランキング

データは2023年のテキーラブランド販売量ランキングである。
上位3ブランドが下位に差をつけ、僅差でしのぎを削っている。
4位以下も接戦であり、いつ順位が入れ変わってもおかしくない。
単位は百万ケースで、1ケースは9リットル換算。
このデータにエントリーできるのは百万ケースを超えたブランドのみである。
●テキーラブランドの販売量推移

2008年からの販売量推移である。
時間をかけて確実に販売量を増やしてきたブランドもあれば、
近年急激に販売量を増やしたブランドもあることがわかる。
・1位 Don Julio(ドン・フリオ)

初めてドン・フリオが1位に輝いた。
実は2022年のデータが発表された時にはドン・フリオは1位だった。
しかし、その後ドン・フリオの販売量データは修正され、1位は幻となった。
今回のデータがまた修正されるかもしれないが、とりあえず1位である。
肉薄するパトロンとカーサミーゴスが減少するなか、ドン・フリオは上昇した。
ドン・フリオは販売量を2017年から7年連続で増加し続けている。
連続増加がどこまで続くのかにも注目したい。
日本でもおなじみのブランドであるドン・フリオは、
革新的な手法でプレミアムテキーラを造り上げた
伝説の男ドン・フリオ・ゴンザレスによって、生み出された。
現在のオーナーは世界屈指の酒類メーカー ディアジオ社である。
・2位 PATRÓN(パトロン)

4年間首位を守っていたパトロンが遂にドン・フリオに抜かれてしまった。
僅差ではあるが、2023年にパトロンは減少し、ドン・フリオ増加した。
この結果がブランドの今後を左右するかもしれない。
世界中で飲まれているパトロンだが、日本でも人気のブランドである。
独特のボトルデザインと蜂のマークが印象的である。
2018年にオーナーとなったバカルディ社によって、
増加量が一段階上がっていたが、2023年の減少が今後どう影響するのだろうか。
・3位 CASAMIGOS(カーサミーゴス)

2017年から急激な成長を遂げてきたカーサミーゴスが失速した。
この減少が一時的なことなのか、今後が気になる。
しかし、4位とはまだ差があるので、とりあえず順位を落とすことはないだろう。
カーサミーゴスのオーナーはドン・フリオと同じディアジオ社である。
急成長の背景にはディアジオ社の販売戦略がある。
2023年の減少をどのように立て直すのか、注目したい。
・4位 HORNITOS(オルニートス)

サウザのプレミアムブランドであるオルニートスが4位をキープした。
着実に増加を続けており、安定感すら感じられる。
上位との差は大きく、下位からの追い上げも気になるところだ。
オルニートスのオーナーはサントリー・グローバル・スピリッツ社である。
安定、着実な感じに企業らしさが出ている。
・5位 ESPOLÒN(エスポロン)

まだ新しいブランドだが、徐々に存在感が増してきている。
僅差でエル・ヒマドールを抜き、TOP5入りを果たした。
この勢いが続けば4位のオルニートスをとらえる日も近いかもしれない。
どこまで右肩上がりを続けるのか目が離せない。
エスポロンは世界的酒類メーカーであるカンパリ・グループが所有するブランド。
エスポロンの他に、日本でもたまに見かけるCABO WABOがある。
・6位 El Jimador(エル・ヒマドール)

日本でもおなじみのエル・ヒマドールが6位である。
勢いのあるエスポロンに抜かれてしまったが、堅調な販売量を維持している。
下位から勢いのあるブランドが多数迫っており、今後順位をさらに落とすかも。
挽回の策はあるのだろうか。
ちなみに本国メキシコでもっとも飲まれているテキーラだといわれている。
オーナーはブラウン・フォーマン社である。
蹄鉄のデザインで有名なエラドゥーラを所有し、
エル・ヒマドールはエラドゥーラ蒸留所で造られている。
・7位 LUNAZUL(ルナズール)

ルナズールは販売量が急増している注目のブランドである。
日本ではあまり見かけることがないが、
アメリカでは手に取りやすい価格帯のブランドとして人気がある。
2022年から2023年にかけての増加率は45%でトップである。
オーナーは米国のヘブンヒル社である。
日本ではバーボンのエライジャクレイグやエヴァン・ウイリアムズが有名。
アメリカではエライジャの樽で熟成されたルナズールも販売されているという。
・8位 OLMECA(オルメカ)

オルメカは緩やかに増加を続けている。
急成長するルナズールに抜かれはしたものの安定感がある。
この販売量にはプレミアムブランドのオルメカ アルトスも含まれる。
日本でもオルメカはよく知られており、ラベルの顔が印象的である。
この顔は古代メキシコのオルメカ文明の象徴である巨大な石像をモチーフにしている。
ボトルやラベルのデザインもオルメカ文明を表現している。
残念ながらアルトスでは石像の顔のデザインはない。
ちなみにALTOSの意味は「高い、上位、高位、最高」などである。
世界の大手酒類メーカーであるペルノ・リカール社がオーナーである。
ペルノ・リカールはアルトスをスペシャリティブランと位置付けている。
テキーラは他にもAVION(アヴィオン)やCÓODIGO 1530(コディゴ)、
プレミアムメスカルのDel Maguey(デルマゲイ)も扱っている。
・9位 CAZADORES(カサドレス)

ルナズールと競り合うように販売量を伸ばしてきたのがカサドレスである。
2022年まではカサドレスのほうが優勢だったが、2023年に逆転される。
2022年から勢いが緩やかになった隙をつかれたかたちである。
日本では2021年に輸入終了となっているが、たまにバーで在庫を見かけることがある。
カサドレスのラベルにはまっすぐにこちらを見つめる鹿が描かれている。
ある日、テキーラの原料であるリュウゼツランの畑を歩き回る雄大な牡鹿に巡り合う。
鹿は知識と知恵と自信の象徴とされており、
鹿に対する者としてハンターを意味するスペイン語の『カサドレス(Cazadores)』と名付けられた。
オーナーはパトロンと同じバカルディ社である。
今後もまだ伸びる余地はありそうだ。
関連記事 ↓

・番外① Jose Cuervo(ホセ・クエルボ)

ホセ・クエルボが一度だけデータ提供したのが2012年である。
この時期はディアジオ社との提携解消のタイミングである。
その後、クエルボはデータ提供をやめてしまったが、
現在でも世界販売量はTOPだといわれている。
推移のグラフからわかる通り、現在1位のドン・フリオでも全然届いていない。
日本でもテキーラの代名詞的存在である。
関連記事 ↓

・番外② Sauza(サウザ)

ホセ・クエルボと並ぶテキーラ界の名門がサウザである。
サウザは非プレミアムテキーラであり、厳しい状況が続いていた。
2022年には百万ケースを割り込み、ランク外となってしまった。
オーナーであるサントリー・グローバル・スピリッツ社は、
プレミアムブランドのオルニートスに注力している。
百万ケースをを切ったとはいえ、サウザブランドはまだまだ健在である。
日本でもよく見かけるし、本国メキシコでも名門サウザを知らない者はいない。
関連記事 ↓

●あとがき
販売量の推移を見てもわかる通りテキーラの変化は激しい。
そしてこの販売量の大半を占めるのが原産国のメキシコと、隣国アメリカである。
アメリカはテキーラ最大の輸出先であり、一国で8割以上を占める。
つまりアメリカでの人気が販売量に直結するのである。
高級指向に一直線かと思いきや、手頃感のあるルナズールが急成長するのも面白い。
世界情勢にも左右されながらどのように変化してゆくのか楽しみである。