氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

NISA拡充と金融所得課税はアメとムチ政策

岸田首相は9月、ニューヨーク証券取引所で講演し、「NISAの恒久化が必須だ」と述べ、「資産所得倍増プラン」にもう一歩踏み込んだ形になりました。

ただ、アメリカの金融政策当局が金利を引き上げ、年内にさらに金利引き上げを宣言しています。金利が上昇すると、国債のような安全性の高い資産の運用力が高まりますから、リスクを負ってまで株式投資する意欲が減退します。

アメリカでは、物価上昇対策として金利引き上げを維持する方針で、その影響もあり世界的に株価が下落基調にあります。

さらに投資マネーを引き上げようと検討している段階と言い換えてもいいでしょう。

 

 

夏祭りで盆踊りが終わった後で日本から首相がやってきた感じです。世界の投資家は祭りから帰ろうとしてるタイミングです。

金融庁は資産所得倍増プランに呼応する形で、8月に財務省へ提出した税制改正要望にNISA制度拡充を盛り込んだばかりですが、金融所得課税をセットで出してくることが予想され、証券業界には警戒感が漂っています。

NISAは株式や投資信託の値上がり益、配当を非課税とする投資優遇制度です。英国のISAの制度をお手本に、2014年1月にスタートしました。

2022年3月末時点で1699万口座(一般NISA、つみたてNISAの合計)が開設され、制度創設からの買付額は27兆699億円にも上ります。

特につみたてNISAは口座総数の3割近くを30代が占めています。

証券会社にとって、これまで縁遠かった若い顧客と長い付き合いを始めるための有力な“入り口”であり、NISA制度の整備は入り口の拡大につながります。

ただ特に一般NISA(2023年12月で購入期間は終了)の使い勝手は決して良くないです。

株式やETF、通常の投資信託を買ってから5年間は利益が非課税になりますが、非課税で保有できる期間が5年というのは短すぎです。

非課税期間5年を経た後に引き続き保有できるロールオーバーの仕組みも複雑です。

低コストな投資信託をコツコツと購入するつみたてNISAは、一般NISAよりシンプルだが、年間非課税枠上限が40万円に制限されます。

つみたてNISAの投資可能期間は2022年1月に開始した人で21年間です。投資信託を買ったあと、非課税で保有できる期間は20年間です。

人生100年時代、20代からつみたてNISAを始めれば、働き盛りの40代で、投資可能期間が打ち切られることになります。

 

 

現状、つみたてNISAの投資可能期間は2042年12月まで、一般NISAの後に始まる予定の新NISAは2028年12月までです。

資産所得倍増プランのNISAに関する制度自体の恒久化とは「投資可能期間がつみたてNISAは2042年まで、新NISAは2028年まで」という“最終締め切り”のようなものをなくしてほしいという意味が最も近いと思われます。

恒久化=非課税で保有できる期間(つみたてNISAは20年、新NISAは5年)を永久に延ばしてほしいという意味ではないようです。

むしろ「非課税期間の延長」の要望のほうが、非課税で保有できる期間を、永久とまでは言わないにせよ延ばしてほしい、という趣旨に近いです。

岸田首相の「制度自体の恒久化」という発言に対し、SNS等で「恒久化宣言が出た、これでずっと利益に税金がかからなくなる!」といった解釈が流れていたため、勘違いしないようにしたほうがよさそうです。  

また、そもそも金融庁などからの税制改正要望の時点で、「もう、正式に決まった」かのような発言をする人がいます。

税制改正要望は各省庁から政府への「お願い」を取りまとめたものにすぎず、必ずしも政策が実現するわけではありません。

NISAにまつわる税制要望も、わかりやすく言えば「頼めることは全部頼んでおこう、実際にどこまで聞いてもらえるかわからないけど」というイメージです。

岸田首相のニューヨーク講演では、NISA制度の恒久化に強い意欲を示しながら、年間非課税枠の引き上げや非課税期間の延長には触れていないのです。

まずは制度の恒久化だけを決めて、年間非課税枠の引き上げなどは先送りにされる可能性が捨てきれません。

すでに口座を持っている人にとって年間投資枠の拡大は朗報で、長い目でみれば、非課税期間の延長が好ましいでしょう。

確かに、すでにNISAを始めている人にとって制度自体の恒久化は、さほど意味がありません。

たとえば2042年で終了予定の投資可能期間が延長されるなら、引き続き投資信託をつみたてることができるので、まだ喜ばしいです。

 

 

一方、NISAの恒久化と引き換えにした「ネガティブシナリオ」もあります。

増税です。

金融所得課税が強化され、株式や投信の値上がりや配当に適用している一律20%の税率を引き上げる可能性があります。  

というのは、株式や投資信託の利益には2003年から10%の軽減税率が適用されていましたが、2014年1月に20%に戻されました。

NISAは、株式や投資信託の軽減税率を20%に戻す際、交換条件で誕生した経緯があります。

岸田首相は金融所得課税について、5月27日の衆院予算委員会で「議論が終わったわけではない」と答弁し、6月13日の参院決算委員会では「論議を続けていきたい」と述べています。

NISA拡充と引き換えの増税リスクが意識されるのも当然でしょう。

税制改正要望をたたき台に、霞が関では9月から各省庁と税当局の熱い戦いが展開されています。

12月の税制改正大綱までに政治判断も加わるため、予断を許しません。

コロナ禍で無駄な税金のバラマキが横行し、国の借金も過去最悪です。この状況で財務省増税を考えない理由はありません。

10月4日、政府税制調査会で、所得額1億円を境に税の負担が低下する「1億円の壁」について取り上げられました。

一部の富裕層だけに課税しても税収はたかが知れており、投資家全員一律の増税になれば株価は下降トレンドに向かっていきます。

2022年初からの米国利上げにともなう株価下落は、引き続き金利を引き上げたいFRBの意向もあり、短期的には上昇局面とは考えづらいでしょう。

せっかくNISAなどの優遇投資枠を活用しても、購入した投資先の評価が日々下がるようでは、投資家死屍累々となる可能性が否定できません。

大規模な相場崩壊を知らない、20代、30代をアテにした長期資産形成を推進するには、お金の世界の潮流をいち早くとらえるような政策を実施できるかがカギになりそうです。

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