氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

暗号資産恐慌の幕開け

暗号資産が急落しています。11月初旬、大まかに1ビットコイン300万円ほどで推移していた相場が8日から急落、10日朝の時点では230万円台まで約25%も下がってしまいました。

仮想通貨の両雄というべきイーサリアムも同様で、1イーサリアム24万円ほどでの推移が16万円台を切りかけ、33%の暴落です。

暴落という表現は物騒ですが、今回の急落はそれに相当するといっても過言ではなさそうです。

今回急落の原因は米仮想通貨交換業大手、FTXの経営危機にあります。

ここ数日の推移はドラマでもなかなかお目にかかれない、手に汗を握るものがありました。

 

 

11月6日、FTXと競合するバイナンス・ホールディングスの趙長鵬CEOは手元に残っているFTXのネイティブ・トークン「FTT」の全売却を発表しました。

これをきっかけに、雪崩のようにFTTが売り込まれ、25ドル台だったFTTはいまや2ドル台で推移しています。

ここで11月8日、業界関係者をあっと驚かせる情報がもたらされます。 最大のライバル、バイナンスがFTX買収の基本合意に到達したと報じられたのです。

しかし、FTXの直面する状況は厳しいものでした。トップ、サム・バンクマンフリードCEOは、同社が最大80億ドル(約1.1兆円)の資金不足に見舞われており、調達できなければ破産法の適用を免れないことを警告せざるを得なくなりました。

翌11月9日、バイナンスは手のひらを返し、FTXの事業買収方針を撤回すると発表、「資産を精査した結果、われわれの手に負えないものだと判明したととの声明を出します。

このままFTXが倒産すれば、暗号資産・仮想通貨市場最大規模の破綻となり、連鎖的に多大な影響が懸念されます。

暗号資産はいまだ投機的要素が強く、このような大規模破綻のリスクを免れません。

グローバルな規制の強化によって、どこまで安全な市場が成立するかを見極める必要があるでしょう。

今回のFTX破綻、きっかけは同社の関連企業アメラダ・リサーチの資産が水増しされていたことが米コインデスクからリークされたことでした。

そこで一挙に恐慌が起きました。 アメラダ・リサーチは数千種類のデジタル商品を扱い、その資産は6月時点で146億ドル、負債は80億ドルとされていました。

しかし、資産のうち60億ドルはFTTならびに担保FTTで構成されており、その他の資産は流動性の低い仮想通貨資産が33.7億ドル、株式が20億ドルで、現金は1億3400万ドルしか保有していないことが明らかになったのです。

2022年初頭からの暴落で仮想通貨全体が冬の時代、アメラダとFTXは破綻した暗号資産企業の救済に積極的に取り組み、高く評価されてきましたが、信用供与枠の資金源が自社トークンという水増しの状況にあったわけです。

 

 

見かけ上の資産が146億といっても、キャッシュは1%にも満たない1億3400万ドルしかないと分かってしまえば、投資家は当然、資金の引き上げを考えます。

今起きていることは、非常に古典的な「取りつけ騒ぎ」であって、暗号資産市場が原理的に抱える本質的な脆弱性が顔を現したと考えるべきでしょう。

信用の脆弱な仮想通貨を複雑に組み合わせてリスクをヘッジしたつもりになっても、リーマン破綻時の「サブプライム・ローン」商品と似たような話であって、その場しのぎ以上の対策にはなりません。

我が国の暗号資産市場を考えるとき、こうした破綻はコインの価値がどこに発するか、その構造を検討すれば、実は原理的に明らかです。

2022年5月に大暴落したテラについて、韓国を中心に活動を開始したテラの発行するLUNA、4月には1LUNAが1万4000円を超えていたものが、現在は0.025円程度で、紙屑にもなりません。

このLUNAは法定貨幣に紐づけられた「ステーブルコイン」の仲間のように言われますが、実際にはそうはなっていませんでした。

テラ・プロジェクトはドルやユーロに紐づけられたUST(テラUSダラー)、EUT(テラEU)などの「ステーブルコイン」と、そこから派生する2次トークンLUNAの2段構えになっています。

USTとかEUTというのはテラというゲームセンターに入った際、ドルやユーロで購入するメダルのようなものと思えばよく、良くも悪しくも価値は安定しており投機性はありません。

ただ、通常の「ステーブルコイン」では、メダル換金カウンターの奥にドルでもユーロでも円貨でも、いざというとき払い戻しに応じられるだけのキャッシュが準備されている。

その昔のヤクザの賭場だって、その程度のことはしていたのではないでしょうか。

しかし「アルゴリズム型」はそうではなく、原資を蓄積することなく、ゲーム理論を応用するという触れ込みのアルゴリズムでドルやユーロの価値と連動しているから価値安定だという、いわば「子供銀行券」の1万円札を流通させていたわけです。

 

 

そんな「子供銀行券」をもとに作り出した2次トークンLUNAは価値の変動が大きく、投機的な商品として市場で乱高下します。

なにもないところから作り出した「おかね」をもとに投機商品に市場でブームの火をつけて売り抜けるとしたら、ポンジ・スキーム同様の「出資詐欺」システムとしかいいようがありません。

経産省金融庁など当局としては規律を強化し、粉飾的な資産の水増しやそこから発生する破綻を防止する法制度を綿密に検討する必要があります。

そして、原理的に明らかな破綻を破綻する形で、テラという「つわものどものゆめ」は敗れて終わりました。

一時的なブームによる価格の高騰、そこに大言壮語的な出資PRが喧伝され、冷静な経営的観点を欠いた投資の加熱が、一夜の暴落によって無に帰してしまいました。

そもそも価値など何もないLUNAに投資された、約600億ドル(7.7兆円)が文字通り「蒸発」しました。

このとき、ビットコインは約8パーセントの急落を見せています。

しかし、今回のFTX破綻ではすでに25%の暴落。この先どのような波及効果が派生するか、被害の全貌はいまだ見渡すことができません。

「常識の源流探訪」の原点に戻れば、ここでケインズに立ち戻る「金本位制」の議論など展開するところですが、今回は紙幅が尽きました。

暗号資産には、膠着した社会経済を動かす潜在的な起爆力を有する面もあると思います。

しかし、証券同様の法的規制を厳密に整えなければ、出資詐欺まがいの具として機能してしまい、暴落は恐慌といって過言でない負の影響を生み出しかねません。

サステナブルな金融規律を模索し、着実に制度化を進める必要があります。

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