ひと昔前までは「死の病」と言われるほど死亡率が高かった“がん”。近年は生存率が高まり、約65%の人が5年以上生きられるようになってきたが、残りの35%は5年もたないのも、厳然とした事実です。
できれば、がんにはなりたくないものです。がんにならないために気をつけるべきことは何なのでしょうか。
ひとつは日々の食事です。がんになるリスクを上げてしまう食材もあれば、逆にリスクを下げてくれる食材もあります。
食べ物によって変わる“がんリスク”。ところが、たとえばがんの予防に役立つ食材を教えてくださいと医師に聞いても、残念ながら多くの医師は答えてくれないのだといいます。
医師は患者の治療や、自分の専門分野の研究で忙しく、それ以外のことについて勉強する余裕がないというのが理由のひとつ。だが、もっと深刻な事情がある。 「医師が『がん予防のためにはこれを食べるといいですよ』とか『あれを食べてはいけません』などと食事に関して何か言うと、そのとたんに、まわりの医師から“やぶ医者”というレッテルを貼られてしまうのです。
なぜなのでしょうか。
ごく一部の医師ではあるが、これを食べればがんが消えますよといった情報を患者に流し、患者のなかには、苦しい抗がん剤治療やリスクのある手術をしなくてもがんが治ると考えて、治療を放棄してしまう人が一定数いるといいます。
特定の食事でがんが消えると断定できるような科学的根拠はこれまで一切証明されていません。がん治療の選択は命に直結することですから、そういう不正確な情報を医師が発信するのは大きな問題だと思います。
がんに関する食事について何か言うと、そういう医師と同一視されて、“あいつは怪しいヤツだ”と仲間から後ろ指をさされるので、多くの医師は食事に関して何も言わないか、「なんでも食べていいですよ」としか言わないのです。
しかし、私たちの身体は私たちが食べたものでできています。日々の食事が私たちの健康に直結するのは当然だし、がんにだって関係ないわけがありません。
「実際、食事が関係していると思われるがんが増えているため、どういう食事をしているとがんになるリスクが何パーセントくらい高まるのかといった科学的なデータが近年集まってきていますし、食事は毎日のことなので気になるのは当然のこと。私もお伝えできる範囲で伝えていきたいと考えています。
そこで、そういった“がんのリスク”に関する科学的なデータのうち、多くの人が気になっているであろう「発がん性の食品添加物」について、食品添加物にもさまざまな種類がありますが、発がんリスクがもっとも指摘されている添加物について紹介します。
それはハムやソーセージなどの加工肉や、いくらやたらこといった魚卵製品の発色剤として使用が認められている亜硝酸塩や硝酸塩です。
代表的なのは亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムの3つ。フランスの10万人以上の成人を対象とした研究で興味深いことがわかりました。
24時間、食べ物の調査を行い、すべての食品の亜硝酸塩や硝酸塩の含有量を計算し、それらの摂取量とがんの発症率との関係を調べたところ、添加物としての硝酸塩(とくに硝酸カリウム)をもっとも多く摂取していたグループでは、もっとも少ないグループに比べて、乳がんのリスクが24%増えていました。
さらに、添加物としての亜硝酸塩(とくに亜硝酸ナトリウム)をもっとも多く摂取していたグループでは、もっとも少ないグループに比べて、前立腺がんのリスクが58%増えていたといいます。
一方、亜硝酸塩や硝酸塩は水や土壌などにも自然に存在していて、野菜などにも含まれていることがわかっていますが、天然由来の亜硝酸塩などの摂取量とがんの発症リスクには相関が認められませんでした。
人工的に食品に添加した場合に、がんのリスクが上がるというわけです。
発色剤などの添加物が多く使われている食品は『超加工食品』と呼ばれますが、超加工食品もがんリスクを上げるという大規模な研究データがあります。
添加物が加えられている加工品は保存ができるなど便利ではありますが、やはり、摂取量を減らすことは、がん予防につながると考えられます。
もちろん、少量をときどき食べるくらいなら問題ないだろうが、たとえば毎朝のようにハムやベーコンを食べていたり、明太子やたらこに目がなくて毎晩のように食べています、といった人は要注意です。
明太子やたらこ、いくらや筋子といった魚卵の加工品は塩分も強いので、食べすぎれば間違いなく胃がんのリスクも上がります。
また、子どものおやつやお酒のおつまみに、高タンパクで身体によさそうなイメージの魚肉ソーセージをよく食べているという人もいるでしょう。
商品によっては亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムといった発色剤が使われいてるものもあるので、よく食べる人は一度、原材料表記を確認してみてはどうでしょう。
食べ物の選び方次第でがんのリスクは変わります。食事は365日、毎日のことなので、リスクを上げる食べ物とは上手につきあっていきたいものです。