【ビッグ6のシーズン展望】22-23シーズンのビッグ6の予想布陣と戦い方を展望

 2022年8月6日、いよいよ22-23シーズンのプレミアリーグが開幕しました。各チームがプレシーズンのトレーニングを通じて新たなシーズンへの準備を整えてきました。22-23シーズンはカタールワールドカップがシーズン途中の11月~12月に行わる変則的なシーズンになります。

 今季のプレミアリーグもビッグ6と呼ばれる、マンチェスター・シティ、リバプール、チェルシー。トッテナム、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッドが中心となって上位争いを繰り広げることが予測されます。ビッグ6の各クラブはそれぞれ補強や放出も進めており、準備を整えています。

 今回の記事では、開幕から数試合の時点でビッグ6各クラブの補強情報と予想布陣、22-23シーズンの戦い方を展望していきます。

マンチェスター・シティの予想布陣と戦い方展望

 21-22シーズンのプレミアリーグを制したのはペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティでした。16-17シーズンにマンチェスター・シティの監督に就任すると、その後の5シーズンで3度のプレミアリーグ制覇を達成しています。22-23シーズンも優勝候補筆頭であることは間違いないでしょう。そんなマンチェスター・シティの今季の布陣は下記の通りです。

 シティの注目は何と言ってもアーリング・ハーランドの加入でしょう。ドルトムントからどのチームへ移籍するか、非常に注目を集めましたが、最終的にシティが獲得しています。昨季、ハリー・ケインの獲得を目指したシティでしたが失敗、本格的なストライカーなしでシーズンを戦い抜きました。そんなシティに待望の大型ストライカーが加入しています。

 また、新加入選手で言うとアルゼンチンのリーベル・プレートで活躍していたフリアン・アルバレスも注目の選手です。22歳のアルゼンチン代表ストライカーで、コミュニティシールドのリバプール戦では早速ゴールも奪っています。

 加えてシティはリーズからイングランド代表MFのカルヴィン・フィリップスも獲得しています。中盤の底やインサイドハーフでプレーすることが予測され、着実に戦力補強を進めています。一方で、昨季にチームを支えた選手を放出しており、ポジションによってはバックアップの不安を残すでしょうか。今夏の主な放出選手は下記の通りです。

マンチェスター・シティ 今夏の主な放出選手 

・スターリング(→チェルシー)
・ガブリエル・ジェズス(→アーセナル)
・ジンチェンコ(→アーセナル)
・フェルナンジーニョ(→アトレティコ・パラナエンセ)

 スタメンを確立していたわけではないものの、チームの屋台骨を支えた選手たちを多く放出しています。彼らの放出により、選手層にやや不安を抱えるポジションもあるところです。しかし、ペップの再現性のあるサッカーと、新たなストライカーの加入もあり、今季も優勝候補筆頭であることは間違いないでしょう。

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リバプールの予想布陣と戦い方展望

 続いて、昨季はマンチェスター・シティと激烈な優勝争いを繰り広げたリバプールです。21-22シーズンは惜しくもシティと勝点1差の2位フィニッシュ、チャンピオンズリーグでも決勝戦でレアル・マドリー相手に苦杯を舐めました。しかし、国内カップ戦の2冠を達成したクロップ率いるチームは、22-23シーズンに向けても準備を整えています。今季のリバプールの布陣は下記の通りです。

 22-23シーズンのリバプールは、新たにダルウィン・ヌニェスを大金をはたいて獲得しました。典型的なストライカーであるヌニェスはこれまでのクロップ・リバプールにはいなかったタイプの選手であり、活躍が期待されます。コミュニティシールドとプレミアリーグの開幕戦では早速ゴールを奪い、早くもファンの期待は高まっています。

 また、右サイドバックのカルヴィン・ラムジーと左ウィングのファビオ・カルバーリョは共に将来性豊かな10代の選手で、着実に将来への投資も積み重ねています。しかし、選手放出の影響が大きそうなのはリバプールもシティ同様です。今夏の主な放出選手は下記の通りです。

リバプール 今夏の主な放出選手

・マネ(→バイエルン)
・オリギ(→ACミラン)
・南野(→モナコ)

 長年クロップのチームを支えてきたサディオ・マネの退団はリバプールにとって大きな痛手です。ヌニェスを後釜として獲得したとは言え、マネほどクロップのサッカーに適した選手はなかなか見当たらないでしょう。また、チームに重要なゴールの数々をもたらし、トロフィーを獲得してきたオリギ、昨季のカップ戦で活躍した南野が退団したことにより、前線の選手層は薄くなっています。

 しかし、ここ数年は継続路線を歩むクロップのサッカーに大きな変化はないでしょう。激しいプレッシングを基調として、引いてくる相手に対してはポゼッションを行いながら攻撃的に振る舞うサッカーを追求するはずです。成熟度が増す22-23シーズンのクロップ・リバプールも、シティに対する対抗馬の筆頭になるでしょう。

チェルシーの予想布陣と戦い方展望

 続いて、21-22シーズンを3位で終えたチェルシーです。シーズン序盤はマンチェスター・シティ、リバプールと共に首位争いを繰り広げたものの、シーズン後半には上位2チームに離されてしまいました。

 ロシアによるウクライナ侵攻により、ロシア人オーナーであったアブラモビッチが英国政府の制裁対象になるなど、ピッチ外での話題が多かったことも影響を与えたでしょう。しかし、今夏には無事に新たなオーナーによるクラブの買収も完了し、22-23シーズンは新たな船出となっています。引き続きトーマス・トゥヘルが率いる今季のチェルシーの予想布陣は下記の通りです。

 今夏のチェルシーは選手の入れ替わりが非常に激しくなっています。クラブ首脳陣の入れ替わりもあり、まさに再出発の夏となっていますね。新加入の選手としては、ナポリからカリドゥ・クリバリ、ブライトンからマルク・ククレジャ、マンチェスター・シティからラヒーム・スターリングと実績のある選手を補強しています。

 また、アストン・ヴィラから若手のチュクエメカを補強し、昨季はローン先でインパクトを残したコナー・ギャラガーとブロヤをそれぞれクリスタル・パレス、サウサンプトンからローンバックしています。しかし一方で、下記のように選手の放出も多い夏となっています。

チェルシー 今夏の主な放出選手

・ルカク(→インテル)
・リュディガー(→レアル・マドリー)
・クリステンセン(→バルセロナ)
・サウール(→アトレティコ・マドリー)

 この他にも、サールやヴェルナー、ジヤシュと言った選手にも退団の噂があり、まだまだ選手の入れ替わりはありそうです。選手の獲得についても多くの報道があり、チェルシーにとっては忙しい夏が続きそうです。

 現時点のメンバーを見ても、タレントの質と量は揃っており、ポジションによっては競争はかなり激しいです。その上、新加入の選手もこれらから加わるとなると、トゥヘルにとって、チームマネジメントの難しさは増すでしょう。しかし、そこは戦術化としてだけでなく、選手と良好なコミュニケーションを取ることにも定評のあるトゥヘルが、うまくチームをまとめてくるでしょう。

 3-4-3のシステムをベースにした戦い方も開幕戦を見る限りは変更はなさそうです。チェルシーらしい堅固な守備に加え、トゥヘルは攻撃面での再現性も整備してきました。今季は新たな戦力をどれだけ早くチームに融合し、戦い方を確立できるか、と言う点に注目です。

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トッテナムの予想布陣と戦い方展望

 21-22シーズン途中にアントニオ・コンテが監督に就任し、チャンピオンズリーグ出場権を獲得したトッテナムは22-23シーズンの注目チームです。名将コンテが率いる初めてのフルシーズンを前に、充実した補強も行い準備を整えています。22-23シーズンのトッテナムの予想布陣は下記の通りです。

 今夏のトッテナムは、各ポジションにコンテのサッカーに適応できる選手をしっかりと補強した印象があります。ディフェンスラインにはバルセロナからラングレ、左ウィングバックのポジションにはインテルからペリシッチと、ビッグクラブでの実績がある選手を補強しています。

 また、ブライトンから獲得したビスマ、エバートンから獲得したリシャルリソンはプレミアリーグでの経験と実績が豊富な選手です。昨冬に加わったベンタンクールとクルゼフスキも初のフルシーズンとなり、戦力は非常に充実しているように見えます。

 加えて、放出面における戦力の整理も進めているところです。現時点で既に放出が決まっている主な選手はベルフワイン(→アヤックス)、ゴッリーニ(→アタランタ)のみですが、昨季からローンで出ていたエンドンベレ、ロ・チェルソ、ブライアン・ヒルあたりも退団が濃厚なようです。

トッテナム 今夏の主な放出選手

・ベルフワイン(→アヤックス)
・ゴッリーニ(→アタランタ)

 21-22シーズンの途中にアントニオ・コンテが監督に就任し、調子を上げ始めたトッテナムは、今季のプレミアリーグでは非常に注目の存在でしょう。5バック気味にもなる固い守備ブロックと、ケイン、ソン・フンミンを中心に繰り出されるカウンターは驚異的です。今季は攻守ともに戦力の拡充を図っており、優勝争いに参加してもおかしくない好チームとなっているでしょう。

アーセナルの予想布陣と戦い方展望

 続いて、21-22シーズンは好調な時期もあったものの、最終的には惜しくもチャンピオンズリーグ出場圏外の5位でフィニッシュしたアーセナルです。引き続きミケル・アルテタ監督の下、22-23シーズンはチャンピオンズリーグへの回帰を狙います。そんなアーセナルの予想布陣は以下の通りです。

 アーセナルの補強のポイントとしては、マンチェスター・シティから獲得した2人が注目でしょうか。アルテタ監督はシティでペップの右腕として活動していた時期もあり、ジンチェンコ、ガブリエル・ジェズス共に良く知る選手であると思われます。

 また、マルセイユへのローンから復帰したウィリアン・サリバ、ポルトから獲得したファビオ・ヴィエイラと言った将来性豊かな若手選手もチームに加えています。21-22シーズンから若手選手を中心としたチーム構成でファンを魅力的なサッカーを展開してきたアルテタ・アーセナルは22-23シーズンも継続路線を歩みそうです。

 そんなアーセナルですが、ラカゼットなど長年の功労者がチームを去っています。ウナイ・エメリが監督を務めていた時代からチームを支えていた選手が退団している印象です。今夏の主な退団選手は下記の通りです。

アーセナル 今夏の主な放出選手

・グゥエンドゥージ(→マルセイユ)
・ルーカス・トレイラ(→ガラタサライ)
・レノ(→フルアム)
・ラカゼット(→リヨン)
・タバレス(→マルセイユ)

 グゥエンドゥージやルーカス・トレイラと言った選手は昨季からローンに出ていた選手でしたが、今夏のタイミングで完全移籍となっています。ベルント・レノやラカゼットも長年チームを支えた選手で、時代の変遷を感じますね。

 昨夏、そして今夏とチームの新陳代謝を図っているアーセナルは、アルテタ監督の下で今季も若手選手中心のチームでポゼッションサッカーに取り組むでしょう。アルテタのサッカー哲学は間違いなくペップの影響を受けており、今季もポジショナルプレー&ハイプレスのサッカーが見られるはずです。昨季は負傷者の影響も受けましたが、今季も十分にチャンピオンズリーグ出場権を狙えるはずです。

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マンチェスター・ユナイテッドの予想布陣と戦い方展望

 最後に、昨季は6位でリーグ戦を終えたマンチェスター・ユナイテッドについてです。21-22シーズンはシーズン途中でスールシャールを解任し、ラングニックが残りのシーズンを率いるなど、ドタバタがありました。しかし、22-23シーズンはラングニックは続投せず、エリック・テン・ハフが監督を務めることになっています。アヤックスでファンを魅了するポゼッションサッカーを作り上げたテン・ハフの下でチームは再スタートを切ります。22-23シーズンのマンチェスター・ユナイテッドの予想布陣は以下の通りです。

 現時点でのユナイテッドの補強は、リサンドロ・マルティネス、マラシア、エリクセンの3選手です。マルティネスとマラシアはテン・ハフがオランダから自身のポゼッションサッカーを体現するために引き入れた選手かと思います。

 中盤より前の選手は基本的には昨季の継続路線で、今のところ新たな選手獲得はエリクセンのみとなっています。獲得よりも選手放出に関する噂は多く出ており、特にロナウドの去就については注目を集めています。現時点でのマンチェスター・ユナイテッドの今夏の放出選手は以下の通りです。

マンチェスター・ユナイテッド 今夏の主な放出選手

 

・アンドレアス・ペレイラ(→フルアム)
・リンガード(→ノッティンガム・フォレスト)
・マティッチ(→ローマ)
・ポグバ(→ユベントス)
・ヘンダーソン(→ノッティンガム・フォレスト)
・テレス(→セビージャ)
・カバーニ(→フリー)
・マタ(→フリー)

 今夏のマンチェスター・ユナイテッドは選手の放出についても既にかなり動いていますね。加えてロナウドの去就も話題となっており、まだまだ移籍市場での動きがありそうです。特に、ポグバとマティッチを放出して手薄になっている中盤には何らかの手を加える可能性があるのではないでしょうか。また、ロナウドの去就によってはストライカー獲得の可能性もあるでしょう。

 プレシーズンではポゼッションを主体としたサッカーで内容・結果共に良好だったユナイテッドですが、開幕節ではブライトンにホームで敗れています。今季はチャンピオンズリーグの出場権もなく、ファンからの風向きは厳しくなっていますが、テン・ハフはいかに自分のサッカーを体現できるでしょうか。やや厳しい船出となりましたが、戦力的には上位争いを繰り広げられるポテンシャルもあるでしょう。

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まとめ

 今回の記事では、プレミアリーグにおけるビッグ6の22-23シーズン展望を行ってきました。21-22シーズンに激烈な優勝争いを繰り広げたマンチェスター・シティとリバプールは、それぞれハーランド、ヌニェスと言う若手ストライカーを補強し、今季もプレミアリーグを率いる存在になりそうな予感です。

 また、コンテ2シーズン目のトッテナムが的確な補強を推進しており、コンテの戦術がプレシーズンを通して熟成を見せる今季は不気味な存在です。マンチェスター・シティ、リバプールと共に優勝争いに顔を出しても不思議はないでしょう。

 昨季は3位でシーズンを終えたチェルシーですが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響によるピッチ外の話題にも振り回され、今季は新たな船出となっています。選手の入れ替わりも激しく、トゥヘルが新シーズンにどのようなチームにまとめ上げるかは非常に注目です。チームとしての力は未知数で、シーズンが始まってからの楽しみですが、長いシーズンを戦えるだけの選手の質と量を揃えています。

 昨季はチャンピオンズリーグ出場権を逃す結果となったアーセナルとマンチェスター・ユナイテッドについても、今季は陣容に変更を加えてトップ4を狙います。アーセナルはアルテタ監督による継続路線ですが、ガブリエル・ジェズス、ジンチェンコと良い補強をしたように見えます。プレシーズンから開幕戦についても充実した内容で結果を残せており、競争力は高いでしょう。

 監督変更を行ったマンチェスター・ユナイテッドについては、開幕戦に敗れて逆風が強まりつつあります。しかし、プレシーズンの内容は良く、これからの選手補強も考えられるため、あくまで開幕数試合を終えた上での評価が必要でしょう。ユナイテッドも選手の質は高く、競争力があることは間違いありません。

 22-23シーズンもプレミアリーグの中心にはビッグ6がいることでしょう。それぞれのクラブが新シーズンに向けて準備を整えており、長いシーズンを通してどのような戦いが繰り広げられるのか、非常に楽しみです。