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何も無くなった、アメリカで生きた証

 

 

2021年7月2日

 

 

アメリカからの帰国後、

横浜市での強制隔離期間を終えた我が家は、

自主隔離先の浦安市に移動していた。

 

この浦安で更に2週間の自主隔離を終えさえすれば

晴れて我が家は開放されて、

日本への本帰国が許されるのだ。

 

 

その自主隔離期間中、

米国に対して

済ませなくてはならない手続きがあった。

 

それは、

アメリカ永住権の返却だ。

 

 


我が家が、

2013年にアメリカでの永住を決めた際、

どうしても取得する必要があった憧れの永住権。

 

 

グリーンカード。

 

 

当時、

約1年半を掛けて取得したものだったが、

その取得は容易ではなかった。

 

 

アメリカ人と結婚したり、

イチローの様なスポーツ選手でもない我が家の場合は、

非常に厳しい条件が課せられていた。

 

 

働き先の会社に保証人になってもらったり

既に辞めてしまった雇用先にも

頭を下げて推薦状を発行してもらう必要が有った。

 

大学卒業以上の学歴が要件で、

履修した学科も現在の職業に関連していなくてはならない。

 

血液検査を含む

健康診断をパスして感染症などの病気が無い事も確認された。

 

もちろん交通違反を含めた犯罪履歴も判定材料になる。

 

そして、

十分に納税出来る力が有るのかどうか、

収入や資格、

そして全ての個人資産も開示が要求される。

 

更に、

個人の問題を越えて、

出身国の信頼性も評価の対象になる。

 

幸い日本は信頼度が高い国だったが、

三男坊のインド人の親友家族の場合は、

取得に8年を要したそうだ。

 

もちろん費用も掛かる。

 

我が家は5人家族で、

弁護士費用も含めて

約200万円近くを要した

 

 

これらの厳しい条件をクリアした、

2014年7月、

やっとの事で、

我が家は

永住権を取得出来たのだ。

 

 

ところが、

 

そんな苦労をして取得した永住権も

日本へ本帰国となると

急いで返却しなくてはならない

 

 

実は、

日本へ帰国後、

アメリカの永住権を持ち続ける事は

リスクでしかないのだ。

 

 

アメリカの永住権を持ち続けている限り、

世界中のどこに住んで居ようが税務の責任が継続する。

 

場合に依っては、

自分に何かあった時の資産の相続も没収の対象なのだ。

 

これらのリスクを回避する為にも

帰国後は速やかに返却が必要だった。

 

 

コロナで混乱が続く中、

アメリカの行政機関が、

返却の手続きに適切に応じてくれる保証も無い

 

尚更、

早い手続きが必要だったのだ。

 

 

そして、強制隔離を終えた我が家は、

早々にグリーンカードを返却することになる。

 

その日、

浦安郵便局から、

書留の国際郵便にて

返却がされた。

 

 

 

そして、

数か月後、

 

アメリカの移民局から受領の証書が送られて来る

 

これで、

リスクからは解放されることになった。

 

 

安堵。

 

 

 

しかし、

話はこれで終わりでは無い

 

 

永住権を

返却する年には、

Expatriation Tax

という通常の年には無い、

特別な課税がされる。

 

要は、

アメリカとの

『手切れ金』

の様なものだ。

 

永住権を得るというのは、

或る意味、

アメリカに納税することを約束するようなものである。

 

つまり、

結婚してアメリカを養うような感じ。

 

なので、

永住権を返却するとなると、

もう納税をしないと宣言する事なので、

離婚を宣言するようなものだ。

 

よって、

返却する年には、

アメリカに対しては、

『手切れ金』

を払わなくてはならない。

 

 

その『手切れ金』が、

いったいいくらになるのか?

 

 

数百万円なのか、

数十万円で済むのか?

 

日本での生活レベルに影響を及ぼす程の額

になってしまうのか?

 

 

それは、

翌年春の確定申告を

終えてみないと、

結果は分からないのだ。

 

 

帰国後も落ち着かない数か月を過ごす。

 

 

そして、

今年の4月。

 

 

お抱えの会計事務所を通しての全ての税務処理が終了する。

 

結局、

『手切れ金』は、

数十万円で済んだのだった。

 

 

そして、

本当に安堵の時がやって来た。

 

 

御世話になった

アメリカとは

完全に縁が切れたのだ。

 

 

 

そんな税務上のリスクを回避することに夢中になっていたせいなのか?

 

ふと気が付くと

アメリカで生きて来た証である

グリーンカードを手放す事の寂しさを

全く意識していなかったことに

気が付く。

 

 

寂しい

 

 

当時、

アメリカで永住を決めたのは

障害の有った長男、諒が、

アメリカの充実した福祉制度に支えられながら

生きて行く事を望んでの事だった。

 

何とか永住権を取得しようと、

躍起になっていた頃の心情が蘇る。

 

 

がんばった。

 

 

取得出来たグリーンカードを手にした時の

喜びは言葉では表せない。

 

 

そんな愛おしいいグリーンカードも、

もう手元には無い。

 

 

アメリカで生きて来た証を失ったことを

今更になって実感する。

 

 

しみじみとしていると声が聞こえる。

 

 

 

『親父、そんな事を考えると思ってたよ。』

 

『ほい、グリーンカード』

 

 

『未だ有効期限もあるよ。』

 

『この世に戻ったら、いくらでもアメリカと行き来が出来るよ。』

 

 

またまた諒が笑っている。

 

 

 

亡くなった諒の場合はグリーンカードの返却義務からは免除される。

 

彼のカードだけは現物が我が家に残ったのだ。

 

 

アメリカには返す必要の無い、

これが正に我が家の永住権。

 

アメリカで必死に生きた20年間の証だ。

 

 

 

 

相変わらず、

やるな。

 

 

 

負けるぜ、

諒君。

 

 

 

★★★★

 

世界へ飛んでいけ! 

諒君の想い!

 

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